黒色中国BLOG

中国について学び・考え・行動するのが私のライフワークです

石平さんの『新中国史』/なぜ中国は民主化しないのか

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毎週、YOUTUBEで石平さんのニュース解説を見ているのだが、その番組の冒頭で彼の新刊、『新中国史』を紹介していた。今年還暦を迎えた彼が、今までコツコツと中国の歴史を学んできた「集大成」であると言う。

「歴史書」というよりも、新しい歴史の見方による「中国論」の本

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本書のテーマは、既存の中国式マルクス主義史観でもなければ、日本史の時代区分を中国に当てはめたものでもなく、「王」の時代(紀元前1600年頃の殷王朝から紀元前221年の秦の始皇帝まで)と「皇帝」の時代(秦の始皇帝から清王朝まで)に区分して、中国の歴史を見直し、現在の中国を理解する…というもの。「歴史書」というよりも、従来とは異なる「歴史の見方」によって、中国政治の本質に触れる「中国論」の本である。

…と、わかったようなことを書いてみたが、今日の午前中に届いたばかりで、まだ中身は読んでおりませんw

本書の構成

全313頁の大著ですが、大きなフォントサイズに、シンプルな構成で読みやすい本と思いました。

以下の「五章」から成り立っております。

【序章】中国史の「王の時代」と「皇帝の時代」…本書がどんなコンセプトで書かれたか…「2つの時代区分」の解説。

【第1章】天下為公、古き良き「王の時代」…「王の時代」の特徴について

【第2章】暗黒の2200年ー抑圧・殺戮・革命の時代…「皇帝の時代」の特徴について

【第3章】「新皇帝」を生み出す中国史のシステム…辛亥革命で「皇帝」は消えたが、中国の近現代において「皇帝政治」はなくならなかったことを解説する。

【終章】習近平という怪物を封じ込めよ…本書の結論。習近平が現代に本格的な皇帝政治を復活させようとしているという警告。

なぜ中国は民主化しないのか

私自身が中国と長い付き合いをして、日々感じていることなのですが、改革開放が軌道に乗って、経済発展著しい時代…北京五輪(2008年)と上海万博(2010年)あたりまでは、私の中国の友人・知人が、「もう中国共産党は要らない」という話をするのが珍しくなかった。自分たちでいくらでも稼げる、海外にも行ける、ネットもつながっている…これから中国は変わる。共産党が指導しなくても、自分たちでちゃんと経済を発展させ、社会を変えられる。いつかは民主化する…と言う話を何度も聞いた。

ただ、それが習近平の台頭でガラリと変わった。最初の数年は「習近平なんか、何の実績もない」「彼がいなくても構わない」とバカにする者もいたけど、次第にそういう声をあげにくくなり、いつの間にか礼賛の声が多くなっていた。それには、激しい腐敗闘争と、厳しい監視と弾圧で、「批判の声」をあげにくくなった…のもあるし、「礼賛の声」の全てが本心とも言い切れないのだが、何やら習近平が手に入れようとしている「絶対権力」を肯定するような雰囲気がある。

中国に危機が迫りつつあるのだから、強い権力を持つ強いリーダーが中国をしっかり指導してくれなくてはいけないのだ…と言わんばかりで、いつか中国も民主化する…と言っていた人も、2019年の香港での弾圧には、喝采を送っていたり、香港での民主化要求へあからさまな嫌悪感を示すように変化していた。

私は、こういう中国人の変化の基礎に、始皇帝以後長らく続いた「皇帝政治」への憧れがあり、強い権力を持つ強いリーダーがしっかりと政治を行うことこそが、民衆のためになる…それこそが西洋の受け売りではない、中国の特色ある「民主」なのだ…と考えているのではないか…と思っていた。

だから、中国人が従来の「皇帝」や「皇帝政治」をどのように見ているのか、そこから現在の習近平に何を待望しているのか、または「皇帝の復活」を待望するよう人民に「仕込む」側の考え方を解析してみたいと思っていたところに本書が出てきました。

しばらく、コロナと花粉症で外出もままなりませんので、その間に本書をしっかり読んで勉強しようと思います。