深センの日本人学校児童襲撃事件以来、日本にある中華学校への脅迫が続いているらしい。
こういうのは、尖閣問題などの時でもあったので、日中関係が悪化した際の定例のイベントとなっているわけで、私も今回、ツイッターで中華学校への偏見に満ちた書き込みを何度か見かけた。
その際に気付いたのは、中華学校に対して偏見を持っている人は、中華学校の実態をよく知らないのではないか…ということだった。
そうした偏見の中にはわざわざ「中国人学校」と呼び替えているものもあり、悪質なので、こちらでカンタンに解説をしておきます。
【目次】
いわゆる「中華学校」には2系統ある
単純にいえば、中華人民共和国系と、中華民国系の2種類がある。
たとえば、「横浜山手中華学校」「神戸中華同文学校」は中華人民共和国系、「東京中華学校」「大阪中華学校」は中華民国(台湾)系である。
深センの事件以後、大阪中華学校に脅迫が届いたとの情報があり、東京中華学校でも警戒しているそうだが、そのそもこの2校は中華民国(台湾)系の学校なので、深センの事件に怒った人が嫌がらせをするのは筋違いであろう。たとえて言えば、中国への文句を中国大使館に言わずに、台北駐日経済文化代表処(いわゆる台湾の大使館にあたる)に電凸するようなバカげた話である。
中華学校に通っているのは中国人だけではない
▲こちらの記事に詳細が解説されているが、最近は中華学校に子供を通わせる日本人がいるのである。つまり国籍が日本人なのだ。
120年の歴史を持つ横浜市の学校法人「横浜山手中華学園」は小・中学部の生徒計600人のうち、約5%が日本国籍の生徒だ(日本に帰化した生徒などを除く)。日本人の入学希望者が増え始めたのは、10年以上前。背景には日本のゆとり教育に抵抗感を持つ保護者たちの想いがあったという。(上掲記事より引用)
そして、今回脅迫が届いたとされる大阪中華学校だが、
…と解説されており、華僑と台湾人、日本人もいる。中国人もいるわけだが、次の情報を見て欲しい。
ウィキペディアによれば、東京中華学校は、小学部全校生徒の国籍割合を掲載しているが、日本人が67%を占めており、中国籍は7%に過ぎない。
大阪中華学校は国籍割合を公開していないが、いずれにせよ中国籍が大多数を閉めることはないと思われる。
そのため、中国系であれ、台湾系であれ、中華学校にいるのは中国籍の子供だけではない。その他の華僑や台湾籍も多数含まれ、日本人も少なくないのだ。そんな中華学校を脅迫して、安心して学校に通えず、まともな教育ができないように追い込んで、一体何の意味があるのだろうか。
帰化した私の友人の子供の教育事情
私の友人に来日してから日本人と結婚し、日本に帰化した元中国人がいるけど、子供が2人いる。
上の子は日本の公立学校に通ったが、尖閣諸島中国漁船衝突事件(2010)の際に凄まじい嫌がらせ・イジメを受けた。ただ、この子は日本で生まれ育って、日本語しか話せず、国籍も日本であり、中国にはたまの休みに親と一緒に帰るだけで中国に住んだこともない。それでも、「中国人扱い」で血が出るまで殴られて、すっかり中国嫌いになった。「中国には行きたくない!中国語なんか勉強したくない!ボクは日本で生まれ育って、日本人なんだ!」と泣き叫んでいるのを私も見たことがある。それでもイジメは終わらなかったが。
だから、下の子が学校に上がる際、友人は中華学校に入れた。国籍的には日本人だし、下の子も日本で生まれ育ったわけだが、上の子のようにいじめられて、中国に対して屈折した気持ちを持って、中国語もできない…となれば、家族関係もギクシャクするし、大陸側の親類との意思疎通も全然できないため、下の子は中華学校に通わせた方が良かろう…ということになったのである。
上の子も、下の子も、共に日本生まれの日本育ちの日本国籍なのだが。
そんな彼らを普通に、平穏に育てられる環境が日本には中華学校以外にないのだからしょうがない。
いま中華学校を憎悪している皆さんは、ただ、「中華学校」という名称だけで、実態をよく知らずに「中国人学校」だと思いこみ、中国系・台湾系の違いもわからずに脅迫をするのが、どれだけバカげたことか、よく考えた方が良いだろう。
そして、「割合に関係なく、中国人がいれば中国人学校なんだ!」という暴論を主張する者がいるとすれば、今の日本だと公立・私立の学校にも、中国籍の生徒はいるので、それらも「中国人学校」ということになる。
もしこの日本に100%中国籍の子供しか通わない中国系の中華学校というものがあったとしても、脅迫して良いわけがない。深センの事件について抗議がしたければ、中国大使館か領事館にすれば良いだろう。