黒色中国BLOG

中国について学び・考え・行動するのが私のライフワークです

「中華人民生活百貨遊覧」の思い出

SPONSORED LINK

毎年ゴールデンウィークのツイッターは荒れるのが相場なので、最低限のニュースだけツイートして、書庫の整理をしているのですが、そこで見つけたのが…

f:id:blackchinainfo:20210504164030j:plain

『中華人民生活百貨遊覧』!

1984年に発行された古い本ですけど、これがキッカケで私は中国語を学んで留学することになった。当時としては、非常に衝撃的な本なのでした。

【目次】

異色の中国写真集

ネットが発達する以前、外国の様子を知るには、テレビや映画を見る以外は、基本的に雑誌や写真集しかないわけで、でも、そういうのは政治目線のものがほとんどで、あまり中国の庶民の生活とかは写さないし、量も少なかった。

そういう中で、島尾伸三さんと潮田登久子さんの「中華人民生活百貨遊覧」が出てきた。政治抜きで、庶民の生活ばっかり、細かいところまで大量の写真を使って解説した。前世紀に中国語を学んだ人で、この本の影響を受けた人は少なくないのでは。私の友人たちは大体持ってました。

f:id:blackchinainfo:20210504163923j:plain

▲こんな感じで、写真たっぷり。確かに昔の中国は、「修理屋さん」がやたらと多かった。

f:id:blackchinainfo:20210504163941j:plain

▲そして市場。私が香港や中国にいると、やたらと市場に行って、ツイッターで写真をアップするのはこの本の影響ですw

f:id:blackchinainfo:20210504163950j:plain

▲この本でハクビシンとか犬、亀を売る様子を見て、私も「中国の市場に行くぞ!」と思ったのでした。

f:id:blackchinainfo:20210504164000j:plain

▲こういう風に、「モノ」を中心に、人民の生活を紹介するのですが、タバコ、マッチ、メガネ、服、帽子、カバン、靴…と37の分野をとりあげています。

f:id:blackchinainfo:20210504163932j:plain

▲キャプションは短いながら、当時の中国を知る貴重な情報なのでした。

「中華人民生活百貨遊覧」のその後

前世紀後半の日本では、中国雑貨ブームがあって、大中みたいな中国雑貨店も出てきたわけですが、『中華人民生活百貨遊覧』は、そのブームにかなり影響を与えているのでは…と思います。

というのも、私がこの本を最初に見つけたのは、郷里にあった中国雑貨の店だったからです。古本で500円だったかな。私の手元にあるのが12刷だから、この手の写真集としては「空前のベストセラー」だったはず。

▲最近ちょっと値上がりしてますけど、数が多いから、古書の流通量も多く、価格もかなりこなれてます。 

島尾伸三さんと潮田登久子さんは、その後も似たような本をたくさん出したのですが、「百貨遊覧」の続編と言うべきものとして

f:id:blackchinainfo:20210504164011j:plain

▲「中国庶民生活図引」というのがあって、こちらは「癒」「遊」「食」の3部作となってます。ただ、「百貨遊覧」ほど写真も多くなく、カラーページも少なく、「百貨遊覧」ほどの「熱量」を感じません。

f:id:blackchinainfo:20210504164022j:plain

▲「中国製造」は、島尾伸三さんと潮田登久子さんが、収集した中国・香港・マカオの雑貨を掲載した写真集。全351ページで分厚いです。こちらには細かい解説はなく、シンプルなキャプションだけ。昔、東方書店のワゴンセールで500円で買ったかな。

昔は、この本をずっと食卓の上に置いて、お茶を飲む時などに眺めたものでした。

中国製造 CHINA PRODUCTS

中国製造 CHINA PRODUCTS

 

豊かだった頃の日本人の好奇心の記録

今世紀に入ってから、「中国製品」というと、粗製乱造の三流品で、安かろう悪かろうで、人体に有害とか、毒が入っているとか、そういうネガティブなイメージで語られるようになった。

2010年代に入ってから、iPhoneなんかも中国で作ってたりで、中国製品には「三流品」と「最先端」のイメージが同居するようになった。

それが、トランプ政権成立あたりから、情報機器は「中国政府にデータが送られている」とか、中国のアプリはヤバい、新疆で作られた綿花製品やトマトはウイグル人の強制労働云々…ということになって今に至る。

ただ、前世紀の80年代から90年代の日本では、実用性を全く意に介さず、政治も抜きにして、中国製品の持つ独特の色合い、デザイン、質感を楽しみ、隣国の庶民の生活に興味を持つ「心の余裕」があった。

「中華人民生活百貨遊覧」は、かつて豊かだった頃の日本人の、旺盛な好奇心を記録した本でもあると思うのです。