中国の料理といえば、日本では、豚や鶏の肉を使ったものを想像されることが多いと思われるが、中国にもちゃんと魚料理はあって、その一番のものは「清蒸」(チンジョン)という1匹まるごと蒸したものであろう。清蒸に使う魚は色々あるのだけれど、その中でも最上のものをあげるとすれば、ケツギョではないかと思う。
ケツギョは矢口高雄氏の釣行記『釣りキチ三平中国を行く』の最初の章、「江南に幻の桂魚を追う」でも出てくる。「桂」(gui4)と「鱖」(gui4)は同音のため、当て字にされているのか。別名「桂花魚」と呼ばれたりもする。矢口氏は「幻の」と書いているから、希少な魚なのだろう…と思っていたのだが、最近は養殖が進んでいるとかで、市場でもレストランでも見かける魚である。
これは、上海の市場で売られていたもの。たしか手前のが20cm台ぐらいの大きさで、30元ぐらいだったか。4年前に深センで30cm後半のものを食べた時は調理込みで35元くらいだったから、上海は高めなのか、物価が上がったのか。上海だと同じくらいの大きさのフナが3匹で5元だったから、やはりお高い魚である。
『釣りキチ三平中国を行く』で、矢口高雄氏がケツギョを釣りに行くのは「新安江水庫」という場所である。「水庫」とはダムのことだが、中国には無数のダムがある。一体どこのダムなんだろうか…と思っていたのだが、改めて調べてみると、「千島湖」であった。千島湖は上海辺りでは有名なところで、大きな人工湖に1078の島があり、魚が豊富で、よく釣れるらしい…と、去年上海で知り合った釣友が教えてくれた。
ケツギョは、きめ細かな肉質で、全身にしっとりと上品な脂がのっている。この食感を中国語では「嫩」(ネン)と言う。中国人が美食を褒める時の最上の言葉の1つだ。ケツギョの身はどの部位を食べても美味しいが、私は特にこの頬の肉をつまむのが好きだ。それほど臭みがある魚とも思わないが、清蒸にする時は、葱と生姜をたくさんのせる。いつかは自分で釣り上げた野生のケツギョを清蒸にして、釣友たちと共に飲むのが私の夢である。
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