黒色中国BLOG

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「望月衣塑子に会った」人に会って、彼女が実際どんな人なのか聞いてみた

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先に書いておくと、私は本来、望月衣塑子さんに全く興味がなかった。

私は中国以外のことに一切興味を持たない人間である。日本の政治にも興味がない。日本のニュースをほぼ見ない。毎日ツイッターで中国のニュースをツイートしているけど、他の時事問題にはほぼ何の関心もない人間なのだ。

ただ、そんな私でも「望月衣塑子」という名前だけは知っていた。

ツイッターをやっていれば、彼女をフォローしなくても、最低でも週に1回は必ず見かける名前だ。

でも、私にとっては、「お騒がせな人物で、いつも記者会見でシツコク質問を繰り返す人…」というほどの印象しかなかった。

ただ、1つ…彼女に対する疑問があった。

「なぜ彼女はこんなに強力な発信力を持っているんだろうか?」

ツイッターというものを15年もやっていると、発信の上手い人と下手な人がいて、その理由がなんなのか…どこでその差がついてしまったのか…というのは、やっぱり気になってしまう。

私は現在フォロワー9万。とはいえ、15年かけて49万ツイートもつぶやいた結果で、それぐらいシツコクやれば、フォロワー9万ぐらいは誰だって出来るだろう。極めて非効率的で、「情報発信の才能」を考えると、私はどう考えても得意とは言えない方の人間である。

望月衣塑子さんは現在フォロワー数31万を越えている。

新聞記者で、こんなにフォロワー数を抱え込んでいる人も珍しい。

私が知る限り、新聞記者というのは情報収集が上手くても、情報発信は下手な人がほとんどだ。

そんな中で、なぜ彼女だけ飛び抜けて優れているのか。

そんな疑問をボンヤリと考えていた時期があった。

そんな時に、たまたま偶然、「望月衣塑子さんに会ったことがあります」という人たちと出会い、彼女がどんな人なのか、細かく話を伺うことができた。

今日は、そのことについて書きたい。

自分が望月衣塑子になったつもりでシツコク聞いてみた

ここまで長い前置きでモッタイつけながら、私が会ったのが、どこの誰なのかは書けない。

私と彼らの身バレを防ぐためである。

伺った話のディティールも書けない。具体的なエピソードも書けない。

ある人は「望月衣塑子」に対し、非常に好意的だった。

別の人は「望月衣塑子」に対し、あまり好意的ではなかった。

私が会ったそれぞれの人は、別々に会った人で、それぞれが何の接点もない人たちである。

ただ、全員に共通していたのは、「望月衣塑子は非常に真面目で勤勉である」…という評価だった。

ある人物は、私の質問に対して、「世間では色々言われているけど、実際の彼女はごく普通の人なんです。いつもあんな感じ(記者会見の時のような)じゃないんです。あえて他の記者と違うところをあげれば、非常に真面目というのか…真面目ですね。真面目で、普通の人なんです」と苦笑しながら答えた。

私は、自分が望月衣塑子になったつもりで、シツコクシツコク食い下がって、更問いに更問いを重ねたが、彼女については「真面目」「普通」という言葉以外に、何も言い表す言葉がない…と言いたげだった。それは、彼女を擁護してるとか、全く赤の他人で面識もさほど深くない私に、個人的なことを詳細に伝えるのを嫌がっているのではなく、本当の本当に、「真面目で普通の人なのだ」としか言えない人なので、それ以上の説明を求められると正直困ってしまうようだったのだ。

「望月衣塑子」に対しあまり好意的でない人もいたが、彼女の真面目さや、一生懸命なところ…勤勉さだけは、認めざるを得ない…という感じだった。

それぞれの「望月衣塑子」評を合わせて考えてみると、「望月衣塑子の真実は、ごく普通の人だけど、真面目で一生懸命に仕事をする人なので、他の記者から抜きん出た結果を出すようになった」…という何ら面白みのない「答え」が浮かび上がってきたのだった。

* * * * *

私も、彼女には及ばないものの、とりあえずツイッターでフォロワー9万まで伸ばした経験があるので、「普通の人だけど、真面目に一生懸命続けていたら、他の人より強い発信力を持つようになりました」という話を聞くと、「まぁ、そうかな。そんなものなんだろうな」と思ってしまう。毎日コツコツ積み上げる他、発信力を身につける方法はない…と言えば、確かにそうだ。

ただ、冒頭で述べたように、私は彼女にそれほど興味を持っているわけではないので、それ以上、「望月衣塑子の発信力の秘密」を解き明かそうとは思わなかった。

そして、「望月衣塑子に会った」人たちに会ったことも忘れて、多忙な日々の中で、彼女の発信力への疑問すら忘れてしまったのであった。

『i-新聞記者ドキュメント-』という映画を見たら…

それから月日が過ぎたある日のこと。私は夜に目が覚めて眠れず、アマゾンプライムビデオで映画を見ようとしていた。いつも外国の劇映画ばかり見ているので、たまには邦画…日本のドキュメンタリー映画でも見ようか…と思い、探しているとたまたま『i-新聞記者ドキュメント-』という映画を見つけた。

ようするに、「望月衣塑子という記者はどんな人なのか」を描いた映画である。

この映画を見つけた瞬間に、以前「望月衣塑子に会った人に会った」ことを思い出して、彼らの話が本当だったのか確かめてやろう…と思った。

1時間54分の作品で、短くはないが長くもない。ほぼずぅーっと望月衣塑子さんが出ている。一通り映画を見て、翌日もう1回見た。彼女の何気ない所作とか、仕事中の表情とか、言葉遣いとか、全てを細かく注視して、彼女の性格について考えた。

その上で思ったのは、確かにちょっと奇抜なところがないわけでもないが、ずっとそばにいて、彼女の全人格を見て知っている人なら、「望月衣塑子さんは普通で真面目な人です」と言い出すのはわかるような気がした。

『i-新聞記者ドキュメント-』の中で、森達也監督が隠しカメラ付きのメガネをかけて、裁判の傍聴席に入る計画を伝えたところ、望月衣塑子さんが全力でキッパリと、辞めるように怒るシーンがあった。

私はてっきり、「彼女は取材のためなら手段を選ばず何でもやるタイプだから、森達也氏の申し出に対して、バレないように上手くやれ…ぐらいのことを言うのではないか」と予想していたのだが、全く違ったのである。それは、バレると自分の迷惑だからヤメロ…という「利己的な怒り」ではなくて、ルールを破って不正を行うことに対する率直な不快感を伴った「怒り」なのであった。

このシーンを見た瞬間に、「彼女は普通で真面目な人なんです」と繰り返していた人物の言葉が、脳裏に浮かんだ。そうだ、あの人が言っていたのは本当だったのだ。

たぶん…なのだが、「望月衣塑子」という人は極めて生真面目な人間で、「不正」というものが許せない。政治家や官僚などの権力を持った人たちが「不正」をやろうものなら、絶対に許せない。不正を行おうとした森達也監督に彼女が見せた激しい「怒り」は、不正を行う政治家や官僚を追求する際に見せる「怒り」と同一なのだ。

こういうことを書くと、「望月衣塑子はそんなに潔癖な人ではない」「彼女自身、不正をやっているのではないか」という人が出てくるだろう。冒頭で述べたように私は彼女にさほど興味はなく、今までの彼女の全ての言行を知り尽くしているわけではない。私は彼女に会った人に聞いた話と映画を見た感想を書いているだけだ。だから、彼女の不正を指摘する事実が出てきたとしても、それに否定・反論しようとは思わないし、私が見聞きして感じたことが間違っているとも思わない。

実際に彼女に会った人たちから聞いた「望月衣塑子」像と、彼女を題材にしたドキュメンタリー映画で浮かび上がってくる「望月衣塑子」像の共通点を考えるに、彼女が記者という仕事を情熱的に続ける「動機」は、「不正が許せない」という彼女の生真面目さに由来しており、「生真面目さ」は動機であると同時に、彼女の性格でもあり、真面目を通り越して不器用なまでに周囲の空気を読まず、「不正許すまじ!」と怒り、更問いを繰り返している…そういう彼女の性格を知る人たちが、「非常に真面目というのか…真面目ですね。真面目で、普通の人なんです」…と異口同音に評価している。

細かいことを持ち出せば、異論はいくらでも出てくるだろうが、大筋において「望月衣塑子」という人はそういう人なのだろうな…と腑に落ちたのであった。

▲一応、劇映画の「新聞記者」も見てはいるのですが、この本は同じタイトルで映画の「原案」となっているものの、フィクションではなくて、望月衣塑子さんが小学生時代に遡って生い立ちを語る自伝的内容なのですね。こちらの著書を精読した上で後日、「望月衣塑子論」を書いてみようと思います。