ツイッターに近代食文化研究会というアカウントがあり、いつも楽しみにツイートを読んでいる。
三角サンドウィッチ文化圏ってイギリスにはじまって日本に伝わったけど、台湾は日本経由かな?
— 近代食文化研究会 (@ksk18681912) December 15, 2018
シンガポールも三角だけど、香港はどうなんだろう。 https://t.co/MdpvhNRdc6
先日、このようなツイートがあった。香港のサンドイッチには「思い出」があったのでしっかり覚えている。
朝食は、オートミールにサンドイッチとカフェオレ。ハッピーバレーで朝飯とは、ちょっとセレブな気分であるw pic.twitter.com/aMpb3s3FMT
— 黒色中国 (@bci_) May 14, 2014
▲こちらは香港のハッピーバレーの茶餐庁の朝食に出たサンドイッチ。三角形である。
ただ、「思い出のサンドイッチ」はコレとは別で、
香港のサンドイッチは、普通に三角だったな。朝早い仕事の時に何度か買ったけど、パサパサのパンにチーズだけ、ハムだけを挟みました…みたいな殺風景なサンドイッチ…よくコンビニとかで売っているんだけど、食道楽の香港人も、アノ手の軽食はずいぶん大胆に割り切るのだなぁ…と驚いたことがある。
— 黒色中国 (@bci_) 2018年12月16日
▲こちらなのだが、残念ながら、この「殺風景なサンドイッチ」の写真はない。去年にも1度食べる機会があったのだが、あまりの不味さにうんざりして、途中で食べるのをやめて捨ててしまった。モッタイナイとは私も思うものの、アレを食べるのは1つの苦行というのか、拷問のようなサンドイッチであった。
香港のサンドイッチ
食道楽の香港において、あんな不味いサンドイッチが存在するのは何故なんだろうか。その答えを中川コージさんが教えてくれた。
イギリスあるあるですね~。
— 中川コージ/ Dr.NAKAGAWA (@kozijp) 2018年12月16日
大英帝国サンドイッチで、パンは「台座」程度にしか考えてないし、薄ければ薄いほど「気品ある伝統的スタイル」なんですよね。
あのサンドイッチは、本来の香港の食文化とは、別の体系の食文化からやってきたものなのだろう。香港は英国の食文化の影響を受けているけれど、あのサンドイッチだけは現地化せずに、英国植民地支配の遺物として原型のまま継承されているのではないか。
「炭水化物とタンパク質があればいいんだろ?」という割り切り感。「食事」というよりも、「補給」というのか。ああいう英国文化の遺物みたいなサンドイッチが香港に残り続けているというのは、まだ香港は完全に「回帰」してないのだなぁ…とも思ったりするわけです。
— 黒色中国 (@bci_) 2018年12月16日
香港のサンドイッチは全て不味い…というわけでもないのだが、なぜかコンビニやパン屋に、チーズだけ、ハムだけを1枚、不味いパンに挟んだだけのサンドイッチが置いてある。私は英国へ行ったことがないので、詳細は知らないが、彼の国では食事を「栄養分の補給」として割り切って、過剰な味覚の向上を戒める文化が存在するのではないか…と思うのである。
香港のホットドッグ
サンドイッチがヒドイので、香港のパンは全部不味いのかといえば、そうでもない。美味しいパンはいくらでもある。昔、香港で住んでいた家がパン屋の向かいだったので、毎朝そこで作りたてのホットドッグを買って食べていた。
▲こちらはその「向かいのパン屋」とは別なのだが、家から少し離れた場所にあったホットドッグ専門店で、休日の朝はここによく通った。
私は外国といえば、香港と中国とマカオと台湾にしか行ったことがないので、「世界」のことは知らないけれど、香港のこの店のホットドッグは充分に「世界」の最上位に入るレベルだったのではないか…と思う。ホットドッグ1つで40HKDぐらいはしたので、決して安いものでもなかったのだが。
香港には「ホットドッグ専門店」というのが、あって、私が香港で何度か引っ越しした先には必ず1つはあった。どの店もとびきり美味しく、香港には高度なホットドッグ文化が定着していたのだ。
でも、昔通った店は、この10年ぐらいで全てなくなってしまった。店の賃料が高騰したり、物価の上昇で、ああいう小さい商いが続けにくくなったのだろう。
香港のホットドッグ文化は消滅したのだろうか…としばらく落ち込んでいたのだが、去年偶然みかけたのがこれ
▲いきなり写真を見せられても何のことかわからないだろうが、これは香港のパン屋さんで売られているホットドッグで、焼き立てのパンに、プリプリした太くて大きいソーセージを挟み、それをちょうどすっぽり収まる紙箱に入れて、その上から2種類のチーズを熱して溶かしたのを流し込んで、粗挽き黒胡椒をふりかけたもの。
日本はこの数十年、「ダイエット」に取り憑かれて、猫も杓子も低カロリーで、食べ物がおしなべてつまらなくなったが、香港ではまだヘルシー志向なんぞクソ食らえな食べ物が普通にあって、このチーズホットドッグはその最たるものだと思う。
朝に1つ食べたら、夕方まで全くお腹が空かなかったw
香港では、貧相なサンドイッチがある一方で、なぜホットドッグだけがここまで進化を遂げたのか。
その理由はいまだによくわからないのだが、次に香港へ行く機会があったら、その謎について調べてみようと思う。
香港のフレンチトースト
▲香港のパン食文化にはもう一つ、「西多士」(フレンチトースト)なる精髄があってこれもすばらしい。できあがりにバターを「塗る」のではなく、ドカッとカタマリをのせて、「シロップの海に沈める」ぐらいにたっぷりとシロップをぶっかけて食べる。
▲香港のフレンチトースト。「焼く」というより油で揚げてある。「軽食」ではなく「重食」である。バターが不十分だが、店がこれだけしか出さないのだからしょうがない。
▲香港のフレンチトーストには太古のシロップ!店員が血相変えて「そんなにかけるのはやめろ!」と飛んでくるぐらいにドバドバかけて食べます(^^)
こんなに美味しいパン料理があるのに、なぜあの英国渡来と噂される「不味いサンドイッチ」は何の進化も遂げずに今も香港に残っているのか。結局、そういうのも含めて「食文化」なのであって、香港が中国に返還されてから既に21年が過ぎたわけだけど、文化というのはそうたやすく清算されるものではない。政治や思想ともなればなおさらだろう…と思うのである。