昨日公開したこの記事は、予想外に大きな反響を呼び、多くの人々に見ていただけました。
単に、1合の米を炊くだけの内容ですが、やはり日本人にとって米を炊くというのは非常に関心が高いことなのでしょうか。
ツイッターでたくさんのリプライを戴きましたが、それらは主に「熱源」に関することでした。そういえば、私は上掲の記事の最後にこんなことを書いています。
現在の中国の公共交通機関では、「熱源」となる燃料の持ち込みに色々と厳しい規制がありまして、それらの規制にひっかからない方法を考えないといけません。
この「規制」については、今後ゆっくりと説明しようと思っていたのですが、せっかくたくさんのリプライを戴きましたので、先にこの説明をしておこうと思います。
【目次】
中国の公共交通機関は検査が厳しい
▲こちらは上海南駅の入場口の様子。荷物はX線に通し、乗客は金属探知のゲートを通ってから、「お立ち台」の上に乗って、更に金属探知の検査を受けます。空港並みですね。
▲こちらは深セン地下鉄の様子。たくさんの人が並んで、荷物をX線にかけるのを待っています。あまり近づいて撮影すると怒られそうなので、離れて撮影しています。
公共交通機関に持ち込み禁止の対象物品は年々厳しくなるばかりです。前世紀90年代だと、腰に大きなナイフをつけたウイグル人が普通に鉄道に乗っておりましたが…。
ナイフで言いますと、私は中国で釣り旅行の時にこの2つのナイフを持っていくのですが、写真下のレザーマンは昔、鉄道でも地下鉄でも、全然問題ありませんでしたが、今は腰につけてなくて、バッグにしまっていてもNGでした(上海地下鉄の場合)。ただ、検査員によっては別に大丈夫という人もいます。
かと思えば写真上のレザーマンスタイルPS(ナイフレスモデル)でもダメという人がいたり…レザーマンスタイルPSについている刃物といえば小さなハサミだけなんですけどね…どうやら検査員によって「NG」の基準が違うようです。
持ち込み禁止物品の内容:北京地下鉄の場合
▲こちらに、2015年5月1日に発表された、北京地下鉄の『北京市軌道交通禁止携帯物品目録』という持ち込み禁止物品のリストがあります。あんまり長いので、アウトドアクッキングに関係あるところだけを抜き出し、関係ありそうなところだけを訳してみると…
易燃易爆品类
- 压缩气体和液化气体:氢气、甲烷、乙烷、丁烷(ブタン)、天然气、乙烯、丙烯、乙炔(溶于介质的)、一氧化碳、液化石油气(液化石油ガス;LPG、LPガス)、氟利昂、氧气(供病人吸氧的袋装医用氧气除外)、水煤气等及其专用容器。
ブタンやLPガスといえば、カセットコンロのガスに使われています。
▲アマゾンの説明を見ると、「素材・材質:使用ガス/LPG(液化ブタン)」とあります。
▲その他のガスカートリッジにも「ブタン」が使用されています。
- 易燃液体:汽油(ガソリン)、煤油(ケロシン)、柴油(軽油)、苯、乙醇(酒精;エタノール)、丙酮、乙醚、油漆、稀料、松香油及含易燃溶剂的制品等及其专用容器。
トランギア・アルコールバーナーには燃料アルコールを使用しますが、手元にある2種類の燃料アルコールを調べてみたところ…
- メタノール(甲醇)とエタノール(乙醇)を含むもの
- メタノール(甲醇)とイソプロパノール(异丙醇)を含むもの
…がありました。エタノールはNGですから上のはNG。メタノールとイソプロパノールは禁止物品リストに掲載されていませんが、検査員はどのように判断するか…ちなみに日本では両方共に危険物第四類アルコールとなっています。
- 易燃固体:红磷、闪光粉(マグネシウム粉)、固体酒精(固形燃料)、赛璐珞、发泡剂H等。
マグネシウム粉はNG…ということはファイアスターター(メタルマッチ;火打ち石)はどうなるのか?
素材がマグネシウムでも、粉状でなければOKなのか…
それと、固形燃料はNG…ということで、エスビットもダメみたいです。
- 自燃物品:黄磷、白磷、硝化纤维(含胶片)、油纸(油紙)及其制品等。
油紙は濡れても火起こしに使えるので、期待していたのですが、こちらもNG。
中国全土の各公共交通機関によって、禁止物品は微妙に違うかも知れませんが、最終的には検査員の判断になってしまいますし、旅であちこち動いていると、いろんな公共交通機関を利用するので、全くひっかからずに旅を続けるのは難しいような気がします。
中国の公共交通機関の検査員は液体に厳しい?
それと、最近の中国の地下鉄で言うと、「液体」に対して厳しいように思います(※個人の感想です)。
以前、友人へのプレゼントで日本の焼酎を用意して、上海の地下鉄に乗ったら、X線でこれがひっかかり、検査員が見ても、彼等は日本語で書かれたラベルがイマイチわからない。割れないようにプチプチで何重にも巻いていたので余計に怪しい(笑)。最終的には友人へのプレゼント…というのを信じてもらえましたが。
それと、最近は地下鉄でも、液体検査用の装置が導入されているので、 よほど警戒しているのでしょう。
「でも、ライターとかマッチはどうなってんだ?度数の高い酒なら火もつくだろう」という疑問を持つ人がいるかも知れませんが、それらもちゃんと規制対象になっています。以下、上掲の『北京市軌道交通禁止携帯物品目録』より。
- 2000毫升(含)以上白酒
(2リットル以上の白酒)- 5个(含)以上打火机
(5個以上のライター)- 10盒或200根(含)以上火柴
(10箱または200本以上のマッチ)
しかし、加熱器具の持ち込みを禁じる規則はない
中国人はどうやってアウトドアやっているんだろうか?と思ったんですけど、あちらはクルマの移動で遊びに行く人が多いので、これらの規制は問題にならないのかも知れません。
中国で公共交通機関を乗り継いで、僻地へ、奥地へ行って自前で用意した調理器具で自炊することを考えた場合、まず、「加熱器具」そのものは禁止対象にならないので…たとえば、アルコールバーナーやエスビットのポケットストーブそのものは単なる金属製品ですから…公共交通機関を利用する際は、燃料を持たなければよいわけです。
そこから、次のように考えました。
- 入手が簡単な燃料を使用する器具を用意する
たとえば、燃料アルコールや固形燃料はどこでもありそうです。カセットガスやガスカートリッジは、チベット高原や新疆の僻地では入手が難しそう。上海の郊外でも無さそうです。 - 複数の種類の器具を用意する
燃料アルコールが入手できなくても、固形燃料で…もしくはその逆…という対応が出来れば良いわけです。
エスビットだけしか持って来なかったけど、行った先ではアルコールしか手に入らなかった…というトホホな状況を回避できます。 - 代用品を使用する
燃料アルコールが手に入らなくても、中国なら白酒はどこでも売ってそうです。ただ、白酒がアルコールバーナーの燃料に使えるのかは不明。 - こっそり持っていく(不推奨)
燃料アルコールを白酒の瓶に入れておけばバレないかも知れない。固形燃料でも、エスビットならお菓子と一緒にしておけばバレないかも知れない。 - 行った先にある物で焚き火をする
これは研究の余地ありです。ただし、中国には色んなところがありまして、木も草も生えない荒野とか、海抜何千メートルの高原ではどうするのか。
高原の場合、何が問題なのかと言うと、高山病で動き回るのが大変なんです。チベット高原で薪集めやったことありますけど。
ブッシュクラフトとかも検討しましたが、大きいナイフや刃先の尖ったナイフは、公共交通機関の規制に引っかかるので、これも要注意となります。先にも書きましたが検査員によっては、レザーマンでもNGです。
中国で公共交通機関を利用したバックパック旅行をする時に、アウトドアで自炊しようとすると、これらの規制をクリアした上で、条件に適合する燃料、器具を使うことを前提とした技術と経験を身につけなくてはいけないわけです。
ただ、私の場合、ずっと山の中にこもるとか、砂漠を歩き続けるとか、そういう旅ではなくて、たまに釣りのために市街地を離れて、不便なところに行ってしまう…という状況ですから、長くても数日しのげる食事が作れたらそれでいい。豪華でなくてもいいし、凝ったものを作る必要もない。ちょっとご飯が炊けて、お湯がわかせたら、あとは缶詰でもオカズにすれば良い。
中国の規制に抵触せず、小さく、軽量で、かさばらず、低コストの器具で、短時間に作れる最善の料理
…というのを目指しています。しばらくこのネタは続きます。