黒色中国BLOG

中国について学び・考え・行動するのが私のライフワークです

【新型コロナウイルス肺炎】(10)武漢の新規感染者が「ゼロ」になるヒミツ

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ツイッターをやっていると、何らかのツイートがバズって、たくさんのリプライが寄せられることがあります。

この数日、「中国の新規感染者はゼロじゃなかったのか!」という怒りのリプライが幾つか寄せられていましたが、何の話をしているのかよくわかっていませんでした。

中国の出す情報や数字について、何かと「フェイクだ!」と噛み付く人たちがいます。私はそれを否定しないものの、私は「フェイク」ではなく、「メイク」と認識しています。別に中国に限らず、政府の出す情報というのは、なんらかの政治的アピールが込められ、「メイク」されたものですから。

そもそも、政府の出す情報みたいなものはそんなもの…中国であればなおさらのことだろう…と思っている。「フェイクだ!」と叫んで噛み付くのではなく、「何がメイクされてこうなったのか?」を見極めるのが、政府の公式情報の読み方というものではないでしょうか。

だから、そもそも中国の出してくる数字なんか、まともに信じてもいなかったけれど、最近特に「新規感染者はゼロじゃなかったのか!」という怒りのリプライが送られてくるので(なぜ私に怒るんだ?w)、ちょっと気になりました。その内の一人に聞いてみると、ゼロになったのは武漢の新規感染者とのこと。

では、一体どんな「メイク」が行われているのか…と思い調べてみると、その手法の1つについて「カラクリ」がわかりました。

【目次】

政府発表と食い違う社区の公告

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▲こちらは3月28日に武漢の盛世花園社区居民委員会で出した「疫情公告」。

2人の感染者が出ました…という告知の文書です。

中国の事情がわからない人のためにザックリと説明すると、

  • 盛世花園社区はたくさん集合住宅が並んでいる地域の名前
  • その中にあるマンションの名前が、「紫林花園」だったり、「鉄機(机)馨苑」だったりする。
  • 社区は住民に警告するため、社区内で感染者が出た場合に公告を出す。

http://www.nhc.gov.cn/xcs/yqtb/202003/8721a8bc007b448db32489ea74b321fc.shtml

▲こちらは3月28日の中国国家衛生健康委員会(日本の厚生省にあたる)の発表。

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▲湖北の新規感染者は「0」になっている。武漢も「0」。

念のため確認しましたが、27日と29日の発表も同じく「0」。

なぜ国家衛生保健委員会の発表では「0」なのに、武漢の盛世花園社区の公告では2人の感染者が出ているのか?

この件は中国でも問題になったようで、翌日に盛世花園社区が次のような文書を出しました。

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▲こちらは3月29日に盛世花園社区が出した「3月28日の公告に関する情況説明」という文書。

ザックリと要訳すると…

  • 書き方がハッキリしていなかったため、誤解させてしまいました
  • 公告中の2名は、既に入院していた新コロ患者であったため、新規の感染者ではございません。
  • 紫林花園の患者は、2月11日に湖北省中医院光谷院区に入院、3月11日に湖北省婦幼保健院光谷分院に転院、3月26日に退院後、武漢駅城市便捷酒店に隔離されておりました。
  • 鉄機馨苑の患者は、2月14日に武漢市中医院漢陽院区に入院、3月10日に泰康同済医院に転院しておりました。
  • 居民の皆様に不安を与えたことを、深くお詫び致します。

2名は以前から入院していたので、これは「新規」じゃありません…というわけ。確かにそう言えばそうだが、なんだかスッキリしない。

退院・回復の基準は?

▲先日、公開された『新型コロナウイルス感染症対策ハンドブック日本語版』の中に、「退院基準」の項目があったので確認してみました。

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▲たぶん、紫林花園の患者は(1)の基準を満たしていたが、(3)の「家の隔離条件」に合致しなかったため、臨時の隔離施設になっているホテルで2週間の隔離に入っている間に、ウイルス核酸検査(PCR)で陽性が出たのでしょう。

では、鉄機馨苑の患者は、なぜ退院してないのに、公告に掲載されたのか…

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▲ハンドブック42頁の下の方にリハビリテーションに関する項目があります。鉄機馨苑の患者は、新コロは治ってPCRで陰性が出ても、呼吸機能や身体運動機能、認知機能などに障害があり、そのリハビリテーション中に、また陽性反応が出たのではないか。

このように細かく考察すると、確かにこの2名を「新規感染者」とカウントするのは不適切な気もする。ただ、この事例でわかるのは、一旦治ったようでも、隔離中に再発、リハビリ中に再発するのだから、新コロは非常にシツコイ病気だ…ということです。それと、隔離中やリハビリ中に再感染した…ということはないのかな?とも思ったりする。

そして、2週間の隔離を経て、退院できても、「フォローアップ」の期間が非常に長いのです。さきほどの「退院基準」(45頁)の後、次のように続きます…

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▲つまり、

  • 退院の1週間後、2週間後、1ヶ月後に外来フォローアップ。患者の状態に合わせてさまざまな検査。
  • 退院の3ヶ月後、6ヶ月後に電話でフォローアップ。

そこまでやって完治したと言えるのだろうし、この6ヶ月内に再発すれば、それもまた「新規」にはカウントされない…のかな。とにかく、いろいろな定義やら基準を駆使して、一度感染した人を、「新規感染者」にカウントしないようになっているのは確かなようです。

このようにして見ていると、退院=完治ではなくて、退院=「入院を必要としない患者」ぐらいで受け取る方が良いのかも知れません。

なぜ社区は公告を出したのか?

これは確認しようがないのですが、この2名の患者は、隔離・リハビリに入った時点で、「回復した」数にカウントされていたのではないでしょうか。

中国の医療機関では、検査で陽性反応が出て、新コロの感染者と認識した時点で、患者の居住地に「そちらの住民から感染者が出ましたので、注意してくださいね」という連絡が入るようになっているのでは?

だからこそ盛世花園社区は医療機関から連絡を受け、3月28日の公告を出したのではないでしょうか。つまり、中国の医療機関の内部の処理としては、隔離かリハビリに入った時点で、その人は一旦「感染者」から外されている可能性があり、その場合に検査で陽性が出たら、「新規感染者」として処理し、患者居住地の社区に連絡しているのでは?(ただしこの場合は、衛生健康委員会に新規感染者として報告しない?)

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▲【参考】こちらは別の社区で出された「疫情通報」。近隣住民に警告するために、このような公告が張り出されます。

今回の件は、中国の発表の「メイク」の1つに過ぎないわけですが、他にも無症状感染者は新規感染者じゃないという「メイク」もあったりするわけで、中国の発表する情報は注意深く見る必要があります。

ただ、こういう検証を毎回やってると、時間がいくらあっても足りないので、私はたまにしかやりません。いちいち「フェイクだ!」と私に怒鳴り込んでこないでください。私も中国の発表は全然信じてませんのでw

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