黒色中国BLOG

中国について学び・考え・行動するのが私のライフワークです

武漢の「原因不明の肺炎」について

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▲昨年の大晦日に報道があった武漢の「原因不明の肺炎」。ずっと連投で進捗をお伝えしていますが、情報量がかなり多くなってきましたので、ブログの方で情報をまとめ直しつつ、細部を検証することにしました。

※この記事は随時更新です。

※基本、ツイッターでの連投で最新情報を追加しているので、この冒頭にあるツイートをクリックすれば、今までの経緯と最新の情報が見られます。

※新しい情報があり次第、追記をしていますが、この後にある「目次」でクリックをすれば、任意の項目へ飛ぶことができます。

【目次】

(1)武漢の華南海鮮城から感染が始まった(1月4日)

武漢市衛生健康委員会の第一報

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▲こちらは武漢市衛生健康委員会の公式ウェブサイトが発表した「原因不明の肺炎」に関する第一報。こちらによれば、

  • 原因不明の肺炎の感染には、武漢市内にある「華南海鮮城」が関係ありそう?らしい。
  • 現在発症しているのは27名。その内、7名が重篤で、2名は近い内に退院の見通し。
  • 華南海鮮城に対し、衛生学調査と、環境衛生処置を現在行っている。

…とのことでした。

武漢には世界第二位のウィルス研究所がある

ここで覚えておいてほしいのは、上掲の「第一報」の第二段落。

  • 武漢市組織同済医院
  • 省疾控中心(湖北省疾病予防コントロールセンター)
  • 中科院病毒所(中国科学院ウィルス研究所)
  • 武漢市伝染病医院
  • 武漢市疾病予防コントロールセンター

…の専門家が診断、調査、分析にあたっており、これは武漢市の感染病関連の医療機関が総掛かりで出てきた状況です。ここで注目しておきたいのは、武漢の中国科学院ウィルス研究所は世界第二位らしいのです(何を基準にしての世界第二かは知りません。中国のネットにそう書いてました)

▲こちらご参考まで。

それだけの医療機関が束になってかかっても、まだ今回の病原体が特定できていない…それはなぜなのか。全くの新型なのか、情報公開できない事情があるのか…というのが、今回の気になるポイントです。

最初の感染者は1週間前、華南海鮮城の東ブロックから

▲武漢の「原因不明の肺炎」の詳細を伝えるニュースとして、こちらの澎湃新聞の記事は、非常に秀逸でした。武漢市衛生健康委員会の発表が12月31日の13時38分でしたが、澎湃新聞の記者は31日の昼には既に華南海鮮城に取材していたのです。この記事からいくつか抜粋すると…

  • 公開資料によれば、華南海鮮城は武漢市江漢区にある卸売市場である、東ブロック、西ブロックの2つの区画からなる。合計650ほどの店舗があり、約1500人が働いている。
  • 市場は新華路の両側に分布している。東ブロックには羊や牛などの生肉製品を扱う業者が入っている。
  • ある店主の情報によれば、東ブロックで1週間ほど前に発熱やせきなどの症状がある患者が出て、病院へ送られ、隔離された。具体的な病院はわからない。西ブロックの幾つかの店舗で肺炎の症状を訴える人がいた。大部分は貝や乾物を売る店の者だった。具体的な病因はわからないが、病院へ送られた。

▲こちらを見るに、「原因不明の肺炎」は肉類を扱う東ブロックで12月24日頃に最初の感染者が出て、次に西ブロックの乾物業者に感染者が出た…という状況のようです。

後日、続報にてわかったのですが、この東ブロックでは羊や牛以外に、犬やウサギ、野生動物なども扱っていたそうです。

そして上掲の記事でも、この華南海鮮城が非常に不衛生だったことが強調されており、野生動物の扱いなどもズサンだったのでは…と考えられます。

【参考】中国の野生動物市場

▲こちらは香港の掲示板で掲載された、中国の野生動物市場の写真。武漢の華南海鮮城ではないのですが、似たような状況だったと考えれます。私も以前ちょっとのぞいたことありますけど、まぁ大体こんな感じでした。

▲こちらに武漢の華南海鮮城で犬猫の他に野味(野生動物)が売られていた…との報道があります。蛇、スッポン、野鳥、マーモット、ハナジカ、猿などが販売されていたようです。

(2)SARS説は「デマ」なのか?(1月4日)

「デマ」を流した人は処罰されたが…

武漢で「原因不明の肺炎」の感染者が出た…という第一報とほぼ同時に「SARSではないか」という噂があり、中国では「デマ」として、情報を流した人を処罰したとか、そういう情報も伝わっています。

ただ、どんなデマだったのか、処罰されたのがどういう人だったのかは公開されていない。そこで、「デマ」を探し出してみることにしました。

医療関係者のグループチャットのスクショが流出?

ネットで情報を漁ってみたところ、4つの画像が見つかりました。以下、解説しますと…

武漢大学人民医院のグループチャット…李文亮氏は実在する

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▲たぶんこれはWechat(中国のSNS)のグループチャットの画面のスクショと思われます。「武漢大学臨床04級」というグループで、「146」は参加人数。かなり大規模です。もしかしたら、これは大学病院に勤務する人々同士で情報共有のため使用されているグループチャットかも知れません。

最初のメッセージは切れてますが、次のメッセージは「華南水果海鮮市場確診了7例SARS」(華南海鮮市場(からの来院者の内)7名のSARS感染が確定された)となります。これは、冒頭に紹介した武漢市衛生健康委員会の発表内容と同じであり、日本の報道でも「7人が重体」という情報があったため、それと合致します。

ただ、1つ気になるのは、このメッセージを発信しているのは、「李文亮」という眼科勤務の人物。検索してみると…

▲「臨床眼科雑誌」に掲載された論文の中に彼の名前がありました。

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▲「李文亮」氏は、実在の人物のようです。

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▲同じく、李文亮氏が投稿していた検査結果。

  • 「MAPMI」とはマイクロRNAの解析のことらしい。ようするにウィルスのゲノムを解析した…ということか。
  • 1の検出の項目に陽性指標として「SARS冠状病毒」(SARSコロナウイルス)との文字が見えます。
  • 下の注釈に検出されたSARSウィルスについての説明があり、文字が判別できないため、正確なことは言えませんが、「单股正链RNA病毒」という言葉が見えます。私はウィルスについての正確な知識がないので、正しい判断はできませんが、

    ▲ウィキペディアでSARSの項目を見ると、
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    ▲との説明があり、「单股正链RNA病毒」は「1本鎖RNAウィルス」のことと考えられます。

  • 李文亮氏はその後に何らかの動画を投稿してますが、これは肺のCTスキャンと考えられます。

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    ▲ちなみに、グーグルで「肺 CT」を画像検索すると、このように李文亮氏の投稿と似た画像が出てきます。

たぶん、李文亮氏は自分の担当ではないけど、病院内のシステムにアクセスして、華南海鮮市場の「患者」の情報を引き出し、Wechatのグループチャットに掲載したのではないか…と思われます。

ただ、疑問点として

  • 李文亮氏の専門は眼科でも、伝染病関連の患者の情報にアクセスできるのか?
  • 李文亮氏は眼科の専門だが、伝染病についての正しい判断ができるのか?
  • MAPMI検査のレポートは日付も氏名も病院名も書いておらず、これが今回の武漢の患者のものであると裏が取れない。そしてこのレポートは印刷したものを撮影したものであり、その後のCT画像は病院の端末(と思われる)の画面を撮影したもの。レポートだけ画面で表示して撮影するのではなく、一旦印刷したのはなぜなのか?

…ということがあります。だから、これだけを見て、「SARS説はデマじゃない!」と断言できないものの、李文亮氏が実在の人物で、武漢大学人民医院に勤務しているのは確からしいので(少なくとも2011年には在籍していた)、「SARS説」が根も葉もないところから、突然湧いて出た誰かの妄想ではなく、「根」ぐらいはちょっとあるのがわかったわけです。

協和紅会とは?そして、「デマ」として否定されたのは?

もう1つ見つかったWechatのグループチャットの内容を確認してみます。

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▲「協和紅会」とは、「武漢協和紅十字会医院」のことと考えられます。「神内」とは「神経内科」のことではないでしょうか?このグループチャットの参加人数は25名です。

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▲検索してみたらありました。武漢協和紅十字会医院に神経内科は存在します。

スクショのトップに投稿されている文書は字が細かすぎて内容が確認できません。ただ、この投稿の後、

鄭涛看護師長(郑涛护士长)が「谢谢」(ありがとう)と礼を述べてから、劉文(刘文)氏が「二院后湖院区确诊一例冠状病毒感染性肺炎,也许华南周边会隔离。洗手!口罩!手套!」と書き込んでいます。

「二院后湖院区」について調べてみましたが、これは「武漢市第二医院後湖院区」の略でした。そこで、1名のコロナウィルス感染性肺炎が患者が1名確認されており、「華南」(華南海鮮城)周辺は隔離されるかも知れない…手を洗え!マスクをしろ!手袋をしろ!SARSであることは既に確定した!外に出るんじゃないぞ!…と呼びかけているわけです。

この件は既に中国のメディアで「確認」されており、

▲この件はデマ(谣言)であるとされています。ただ、この記事を読んでも、何がどうデマなのか解説されていません。ただ一言、「目前并无疑似或确诊的患者」(現在、疑わしいor確定された患者はいない)と否定されているだけです。

ここで気をつける必要があるのは、「今回の肺炎の原因はSARSではない」…と否定しているのでなく、「現在未確定である…だからネットで広まっている『確定した』というのはデマだ」と言っていることです。

つまり、ネットで広まっている「武漢の肺炎はSARS」という説は、私が発見したスクショを調べる限り、実在の病院の実在の医師が実名にて、「証拠」を挙げながらグループチャットで発言したものであり、巧妙に作られたフェイクである可能性は皆無と言えないとしても、その点は当局も全く触れてない。そして、グループチャットで挙げられている「証拠」そのものが間違っているからデマだ…と言っているのではなく、「まだ医療機関の発表としては未確定なのだから、確定したというのはデマだ」と言っているだけなのです。

「MAPMI検測結果」の検査元を特定する

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▲先程紹介したこちらの流出画像。よく見ると、ヘッダー部分の文字がなんとなく見えますね。

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北●●●医学検験所」と思われます。この●●●が判別できれば、検査機関を特定できるのですが、画数の多い漢字のようで、いくら拡大しても判別できません。

ただ、横を見ると、「QR-D.SY003-03-BABJ A/0」というコードがあります。これはこの検査機関が出した文書番号でしょう。この後ろの方にある「BABJ」の「BJ」は「北京」(BeiJing)のことではないのか。そうすると、「北京●●医学検験所」であり、「BA」は「●●」の発音の頭文字を取ったものと考えられます。そこで、それに相当する北京の医学医学検験所を探してみたら…

▲ありました!「博奥」(BoAo)の略だったようです。

百度での解説を見ると、遺伝子関連の検査が並び、「感染性疾病分子検測」もできると書いていますので、たぶんあの文書の発行元は北京博奥医学検験所と見て間違いないでしょう。

文書番号に「03」とあるので、もしかしてこれは2003年のSARSの時の文書ではないか…とも疑いましたが、北京博奥医学検験所は2012年の設立なので、文書番号の「03」は検査の年を意味しないようです。

ただ、どちらにしろこの文書には「武漢」とは一切書いておらず、今回の「原因不明の肺炎」との結びつきを示す情報は全く見当たりません。とりあえず発行元がわかっただけです。

第4の「流出画像」を解読する

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▲こちらもネット上で「流出」しているWechatのスクショと思われる画像。グループ名が削除されていたり、発言者の氏名や所属機関もわからない。アイコンもモザイクをかけられているので、信ぴょう性は落ちますが、内容から見て、武漢市の医療機関に勤務する人物が発信した内容と考えられます。

以下、気になる箇所を要訳すると…

  • ZF还没有下决心公布」…「ZF」とは「政府」(zhengfu)の隠語。中国のネットで敏感な話題を書く時に当局の検閲で引っかかりにくいようにするためこのように表記します。つまり、「政府はまだ公布する決心をしていない」ということ。何を「公布」してないのか?文脈的に見て、武漢の「原因不明の肺炎」の正体と思われます。
  • 同济查了病原体,是SARS冠状病毒,华大基因公司不敢报告」…ここで出てくる「同済」は武漢にある「同済医院」のことと思われます。
    ■華中科技大学同済医学院附属同済医院

    https://www.tjh.com.cn/
    ▲つまり、「同済医院で病原体を調べた。これはSARSコロナウイルスだ。華大基因公司は敢えて報告してない」ということ。「華大基因公司」とは…

    北京基因組研究所(華大基因)のことでしょう。こちらは深センのデザイナーベイビーの一件でもチラッと名前が出た組織。1999年に、ヒトゲノムプロジェクトに遺伝学研究センターとして参加するために設立。動物、植物、微生物のゲノムも解析できるそうです。つまり、華大基因にも病原体のサンプルを送り、ゲノム解析でウィルスの特定を依頼していた…すでに検査結果は出ているのだろうけど、敢えて報告していない…ということを示す発言と考えられます。

  • 上周五我科是第一个上报市CDC,他们还不情不愿的来查一下甲流,乙流」…(先週の金曜日、私たちの科は、市のCDCに第一回の報告をした、彼らはまだ渋々A型インフル、B型インフルの検査をした)
    「CDC」とは「Centers for Disease Control」の略。つまり武漢市の疾病予防コントロールセンター(この記事の冒頭…武漢市衛生健康委員会の第一報にも出てきた)と思われます。つまり、この発言者は武漢市のCDCに報告義務のある医療機関に勤務する人物。状況から考えて、2018年12月24日前後に華南海鮮城の東ブロックから最初の感染者が出た後、12月27日(金)にCDCへ報告し、CDCの担当者がインフルエンザの検査に来た。担当者には事前に連絡が行ってたけど、原因不明の肺炎の発症者が出たことに乗り気ではなく、検査に来た時も見るからに「まだ渋々」とした様子で、とりあえずA型、B型のインフルの検査をやった…ということを書いているものと思われます。つまり、このチャットは12月の30日か31日頃の発言と考えられます。
  • 第4の流出画像の出処はどこなのか…「同済医院で病原体を調べた」と書いてあるから、まず同済医院ではないけど、同済医院と関係のある医療機関ではないか…と考えられます。「市のCDC」に報告するということは、武漢市の医療機関である可能性が高い。「我们说不是流感,病原不明」(私達はインフルエンザじゃないと言った。病原はわからない)と発言していることから、インフルエンザぐらいはわかるけど、未知の病原体については検査能力がない。でも一応、「華大基因」の名前が上がってくるところから考えて、遺伝子とも関係がある医療機関じゃないのかな…とも考えられる。そういえば…

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    ▲前出の「武漢協和紅十字会医院」の説明を見ると、中国遺伝学会の遺伝諮詢分会なんとかかんとか…という説明があり、同済医学院付属の…と書いてある。このグループチャットは武漢協和紅十字会医院のどこかのセクションから流出したんじゃないかな…とも思われます。確定できませんけど。

一応、シツコク念押ししておきますが、流出画像はフェイクの可能性があり、そうでなかったとしても、これが必ず正しい情報とは断定できません。ただ、流出画像の内容を検証すると、どれも医療機関に勤務する関係者の発言で、素人がデタラメを書いた荒唐無稽なデマとも思えない。公式に発表されている情報と照らしても、合致する部分が少なくない。そして当局は「デマ」と言うものの、その内容について否定しているものではない…ということだけは事実なのです。

コメントを戴きました\(^o^)/

医療関係者と思われる人からコメントをいただきました。このブログの下の方にぶらさがっていますが、こちらにもコピペを置いておきます。

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▲たぶん、医療関係者なのかな。非常に参考になりました。情報ありがとうございました(^^)

(3)「武漢」という場所について(1月5日)

中国で武漢と言いますと、中国の中心であるとか、交通網の中心であるとよく言われます。ただ、大半の日本人には正確な位置を想像できないと思いますので、ここで武漢が中国のどういうところにあるのかを解説してみます。

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▲こうやって見ると、武漢は、中国の代表的な大都市のちょうど中間に存在します。各都市との距離を書き出しますと…

  • 武漢から北京までは1047km
  • 武漢から広州までは837km
  • 武漢から上海までは694km
  • 武漢から重慶までは716km
  • 武漢から成都までは974km

直線距離で考えると、これらの大都市のちょうど中間点に位置するのがわかります。

今年の中国の春節(旧正月)は1月25日。このブログ記事を書いているのは1月5日なので、残り3週間を切っております。中国では春節の時に勤務地や出稼ぎ先から故郷へ戻ったり、旅行に行ったりしますので、これから億単位での大移動が始まります。武漢はちょうど中国の大都市の中間にあり、ここを通過する人も多い。武漢そのものの人口は約1108万(2018年のデータ)。春節で移動の多い時に武漢で感染病が流行すると、中国の各地に感染拡大する可能性がある。たぶん、中国政府の中の人も、この点を非常に警戒しているものと思われます。

今までは中国のネット上に出てきた医療関係者と思われる人々の「流出情報」を中心に検証してきましたが、ここからは日本と中国、その他の国や地域のニュースを広い集めながら、「原因不明の肺炎」が現在どのようになっているのかを見極めていこうと思います。

(4)武漢市衛生健康委員会の発表(1月5日)

1月5日20時33分(中国時間)、武漢市衛生健康委員会から「原因不明の肺炎」について、新たな発表がありました。

http://wjw.wuhan.gov.cn/front/web/showDetail/2020010509020

▲こちらが直リンクににありますが、アクセスが集中してなかなか読み込めないことが多いので、スクショを取って、重要箇所にアンダーラインを引いてみました。

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▲こちらの重要箇所を要訳しますと、

  • 2020年1月5日8時の時点で、報告を受けている「原因不明の肺炎」の患者の合計は59名。その内7名が重篤。
  • 死亡例はなし。
  • 59名の患者の内、最初の発症は2019年12月12日、最も新しい発症は12月29日。
  • 現在163名の濃厚接触者を観察中。

他の部分は、今までの報告とほぼ同じなのですが、第三段落の「武漢市は国家と湖北省の支持の下、以下のような取り組みをおこなっております…」として7つの措置が挙げられておりますが、その最後に私は注目しました。

  • 七是配合国家和省开展病原鉴定」(7つ目の措置として、国家と省協力し、病原の鑑定を展開している)

ようするに、まだ今回の肺炎は「原因不明」のままであり、特定されてない。新型かもしれない…そういう状況のようです。

(5)「原因不明の肺炎=ペスト説」について(1月6日)

ツイッターで、原因不明の肺炎がペストであるとの噂を見ました。けっこう広まっているようです。

ただ、私は12月31日からこの件に関する情報を大量に見ているのに、それらしきものを見たことがありません。

そこで、この噂の真相をさぐってみようと思ったのですが…

そもそも、中国語でペストのことを「瘟疫」(wenyi)と書きます。ただし、「伝染病」を意味する言葉でもありまして、たぶんそれが誤解を招いているのではないか…と考えました。

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▲このように「瘟疫」には「ペスト」の意味もありますが…

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▲単に「疫病」を意味することもあり…

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▲マラリア性の熱病を意味することもあるそうで。

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▲たとえば、こちらの微博の書き込みは、「肺炎」を伝える動画を添付しながら、「武漢から離れろ!瘟疫があるぞ!」と書いている。これはどう見ても、「伝染病があるぞ!」という意味でしょう。

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▲こちらの微博の書き込みを見ると、

「昨日友達が俺に、武漢は瘟疫があるから気をつけろって言うから、大丈夫だよ!って返事してスマホみたら、武漢の華南海鮮市場で瘟疫が暴発…っていうニュースが…」

…とありますが、ここの「瘟疫」を「ペスト」と読むと変なんですよね。単に「伝染病」と読む方がスッキリする

だから、「正体不明の肺炎=ペスト」説は、誤解じゃないかと考えております。ただし…

 ▲去年11月に中国でペストの発症者がおりました。こちらのニュースを見ると

肺ペストはせきやくしゃみを通じて人から人へ感染することがあるのに対し、腺ペストはノミにさされたり、感染した動物の組織を扱ったりすることによって感染する。

(中略)

ただ、内モンゴルでは今年5月にも、現地で療法食とされるマーモットの腎臓を生で食べたモンゴル人の夫婦が腺ペストのため死亡している。

…あります。

武漢で原因不明の肺炎が始まった華南海鮮城の東ブロックにはマーモットを扱う店があった…との情報もあります。

 ただ、華南海鮮城のマーモットが原因でペストになるなら、腺ペストになるはずで、肺ペストではないはず。そして、ペストならすぐに検査でわかるはずだし、去年11月の北京の事例を見ても、中国当局はペストを隠蔽していない。これはやっぱりただの「噂」に過ぎないのでは…と思います。

(6)台湾経由で「流出」する肺炎の情報(1月7日)

この件はすでに、ツイッターでは触れておりましたが、興味深かったので、こちらに再収録しておきます。

1月3日付のRFAの記事で、注目すべき情報がありました。

另外,台湾卫生福利部疾病管制署副署长庄人祥星期五说,接到中国有关武汉不明原因病毒性肺炎的回覆,病原鉴定已排除流感丶禽流感丶腺病毒感染等常见呼吸道疾病。但无法排除可能是新型冠状病毒。

台湾衛生福利部の疾病管制署の副所長さんが金曜日(星期五)に発表したところによると…という情報ですが、ここで言う「金曜日」とは、1月3日のことです。中国側から武漢の原因不明のウィルス性肺炎についての回答を受け取った…とあります。ようするに、台湾側から問い合わせたら返事がありました…という意味かと。

この部分、ちょっと説明しますと、台湾は2003年のSARSの時に、346人の感染者と73人の死者を出しています。その後、中共の圧力で台湾はWHOに加入できてないから情報不足で、被害が拡大した…という話に発展し、台湾をWHOに参加させよう…という動きが出てきて、それは今にも続いています。

▲こんな具合です。

中国側の見解は、台湾は中国の一部だから、WHOに単独で参加する必要はない。伝染病などがあれば、中国から情報を提供してもらえばいい…というものだったと私は記憶しています。

そこで、先程のRFAの記事に戻るのですが、

病原鉴定已排除流感丶禽流感丶腺病毒感染等常见呼吸道疾病。但无法排除可能是新型冠状病毒。

病原体の鑑定では、既にインフルエンザ、鳥インフルエンザ、アデノウィルスなどの呼吸器系疾患は排除されているが、新型コロナウイルスの可能性は排除されていない。

という「回答」を中国側から受け取っていた…という情報でした。

既に4日経ってしまいましたけど、1月4日の時点で、この情報が台湾側にリークされていた…というのはかなり早いです。4日にこの「返答」があるということは、3日には既にこれらの「鑑定」は目処がついていた…ということですから。

何を言いたいのかと言うと、SARSの時にかなりモメたし、結果的にそれが台湾の独立志向を高めたと言ってもいい。ここで台湾からの問い合わせを無視したり、出し渋ったりすると、それをネタに大騒ぎを始めて、「やっぱり中国は情報をくれない!WHOに参加するしかない!」となって、余計に独立志向を高めてしまう。だから、かなり早い内に中国側でわかっている情報を台湾へリークしてくれたのではないか…。

だから今後、武漢肺炎の最新情報については、台湾側から漏れてくる情報が見逃せない…と思ったのでした。

(7)武漢肺炎は「人から人」へ伝染る?(1月7日)

▲こちら1月6日付けのRFAの記事になりますが、気になる内容がテンコ盛りでした。以下、要訳すると…

  • 武漢の予防対策が香港に比べてユルイという内容。武漢ではマスク着用など励行されておらず、生徒に発症者が出た後も、学校ではいつも通り授業が続けられている(学級閉鎖、学校閉鎖になってない)
  • 香港大学感染・伝染病センターの何柏良総監が先週各メディアの取材を受けた際に、武漢で発生した原因不明の肺炎は、「新型ウィルス」であり、たぶん人から人へ伝染るであろう…と発言したそうです。
  • 香港中文大学医学院の許樹昌教授は、「ウィルスが人から人へ伝染るかは観察を待ちたいが、その可能性は排除できるものではない」と述べたそうです。
  • 最後、香港大学感染病センターの関係者が人から人へ伝染る可能性を示唆しています

ただ、RFAは「反中メディア」なので、この手の情報はかなり眉に唾をつけて読む必要があります。

▲何柏良総監は、警察の暴力に抗議の座り込みをしている人ですから、反中共の立場ではないかと思われます。彼の発言はそのあたりを考慮して、かなり割り引いて受け取る必要があるでしょう。ただ、「人から人」に伝染らないものなら、どうしてこんなに拡大するのか…説明がつかないのも事実なのです。

* * * * *

ここまで書いた後、私は深センのイミグレ閉鎖直前の香港へ行き、そこから広東省にも行ってきました。

▲続きはこちらをご覧下さい。

「SARS予防」緊急現場報告

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SARSは何を警告しているのか (岩波ブックレット)

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