黒色中国BLOG

中国について学び・考え・行動するのが私のライフワークです

モルディブで中国人観光客がホテルから差別的対応?を受けた原因をさぐってみました

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▲モルディブの首都マレ

この数日、ツイッターで次のニュースが話題になっている。

モルディブ、中国人客差別を否定

http://j.people.com.cn/94475/8164476.html

「モルディブ共和国のリゾートホテルでの中国人への差別」に関する投稿が、中国のネットユーザーの間で話題になっている。環球時報が報じた。

モルディブのニュースサイトの10日の報道によると、現地の5つ星リゾートホテルの元中国人従業員が、「中国人客がレストランを利用せず、持ち込んだカップラーメンばかり客室で食べていることから、ホテル側は、中国人客が宿泊する全ての客室から湯沸かしポットを回収した」という内容をネット上に投稿した。この中国人従業員は、ホテルの内情を告発したことでホテル側から解雇され、言動を監視された上、携帯電話を没収されたため、仕方なく中国大使館に助けを求めたという。この告発に対し、ホテル側は、「中国人に対する差別」を全面的に否定した。モルディブのAhmed Adeeb Abdul Ghafoor観光相は、「政府は、中国側から正式な抗議を受けたわけではないが、このような事件には厳しい態度で対処する。中国はモルディブにとって最大の顧客源国であり、モルディブの観光業は、中国人に対していかなる差別・偏見も持ち合わせていない」と語った(以下略)

中国人が海外へ観光に出かけるようになって、色々とトラブルを起こしているのは、数年前からのことで、今更驚くようなことでもない。ああ、またやらかしたのか…と思ったのだが、ちょっと気になっていることがあった。どうしてモルディブまで出かけて、カップラーメンばかり食べていたのだろうか。そもそもリゾートホテルに泊まるような人なら、よっぽどの金持ちだろうに…と思っていた。不思議ではあると思っていたが、そもそも私はモルディブがどういうところなのか、全く知らなかったのである(笑)

【目次】

1)モルディブとはどんなところか

モルディブ(ウィキペディア)

モルディブ共和国(モルディブきょうわこく)、通称モルディブは、インド洋にある島国。インドとスリランカの南西に位置する。イギリス連邦加盟国。
イスラム教のスンナ派が国教。住民のほぼ100%(推計値、正確な数値は不明)がイスラム教徒である。

ググってみると、華僑もいるようだが、少ないらしい。住民のほぼ100%がイスラム教徒ということだから、華僑の数は人口39万人の内の1%にも満たないのであろう。

続いて、中国側の情報もチェックしておく

马尔代夫(百度百科)

马尔代夫是穆斯林国家,禁食猪肉。但是这里是海岛国家,盛产鱼虾蟹。这对于来自中国的老饕们来说可是个大好消息。一般来讲,度假酒店提供的价格通常分为两种:一种是价格包括早餐,午餐或晚餐(午,晚餐任选其一),还一种是价格包括每日三餐。
酒店自来水不宜饮用,需购买矿泉水,每瓶(1.5L)约为美元3-4元。客人不能自带饮品进入餐厅,否则可能被收取若干费用。不过每日的自助餐都有免费的矿泉水提供(不限量)。
中午,晚上的自助餐除了各色的冷菜,热菜,甜品外,每天还会增加一些各国的美食,像意大利的PIZZA,法式牛排,日式生鱼片等等。中式的餐食很少,主要由于中国的客人不多。

要約すると…■イスラム教国だから豚肉はない。■島国だから魚介類は豊富。■リゾートホテルの食事のタイプは2種類あって、朝食と昼食もしくは夕食を選ぶ1日2食提供タイプと、三食提供のタイプである。前者の方はたぶん泳ぎに行ったりすると、ホテルまで食事のために帰ってくるのが面倒なので、どちらかを選ぶことになるのではないか。ただ、こうやって食事を極力ホテルで取るような料金プランになっているところをみると、モルディブはもしかしたら外国人が外食できる場所が少ないのかも知れない。

ホテルの水道から出る水は飲用に適さないので、ミネラルウォーターを買う必要がある。1.5リットルのボトルで3~4米ドル。日本人感覚ではまぁ、普通かな…と思うかも知れないが、中国の相場で考えると高すぎるように思う。しかし、中国ではレストランで水がタダで出るのは珍しいので、水は金を出して買うもの…という意識は日本人よりも中国人の方が高い。ホテルのレストランに持込は出来ない。すれば費用をとられる。ただしバイキングスタイルの食事の場合は、水はタダで量的な制限なく提供されるそうだ。

そして、料理は、各国の美食が用意されており、ピザもフランス式ステーキも日本の刺身もあるけれど、中国料理が提供されるレストランは少ない…とのこと。そもそも中国人客が少ないため、その必要がない…と判断されているようだ。

2)中国人は何でも食べられるわけではない

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▲NASAによるモルディブのサテライトイメージ

以下、自分のツイートから引用する。

…というわけで、中国人というのは何でも食べられるように思われているものの、意外に中国料理がない環境に送り込まれると困ってしまう人達が多いようなのだ。世界のどこにでも進出できるのは、彼らが自分で中国料理を作れるからであって、中国料理を作る材料や調味料がないとか、調理そのものができない状況だと困窮する人が出てくるわけだ。人口の100%がイスラム教徒の小さな島で、ホテルに中国料理がない…というのは、中国人的にはかなり苦しい状況だったのではないか…と想像するわけである。

3)知られざるモルディブ旅行の真相

▲モルディブ料理

…というようなツイートをしていると、らきのすさん(@luckynosu)が、モルディブ旅行の体験談をしてくれた。以下、引用すると…

…らきのすさんからのツイートを読みながら、「うむむ…」と唸ってしまった。たぶん私もモルディブへ旅行したら、毎日ホテルでカップラーメンを食べていたのではないか(笑)。1日の食費が3万~5万というのはかなりキツイ。そもそもそういうのが普通の大金持ちが行くようなところなのかも知れない。町中に行けば安い店もあるのだろうけど、イスラム教徒用のレストランで、しかも言葉は通じにくい(モルディブは英語も通じやすいそうだが、基本的に公用語はディベヒ語である)。

ちなみに、ググってみるとこんな情報があった。以下、要約すると…

モルディブの物価(All About)
モルディブの滞在スタイルは1島1リゾート、ひとつの島が丸ごとリゾートになっています。つまり、リゾートの外に気軽には出られないのです。食事はリゾート内のレストランしか、選択肢がありません。そういった事情から、モルディブでの滞在費を大きく左右するのは、食費にかかっているのではないでしょうか。  
三食ビュッフェのリゾートはリーズナブル
一方、近年のハネムーナー向けのラグジュアリーなリゾートはツアー料金に含まれるのが朝食のみで、ランチやディナーはアラカルトのケースが多いようです。この場合、食費の予算は日本の高級レストラン並みと思った方がいいでしょう。ランチで2000円、ディナーなら1万~1万5000円(アルコールを含まず)。ツアー料金だけで20~30万円かかるようなリゾートで、さらに食費もかかるとなるとかなりの金額になります。でも、一生モノのハネムーンなど特別な旅には、清水の舞台から飛び降りて贅沢を味わうのもアリかもしれません。

たぶん、問題の中国人観光客は、「ラグジュアリー」な方へ行ってしまったのであろう。そこには中国料理が無い上に、リゾートの外に出られない状況になったのではないだろうか。

4)日本のホテルの場合

日本にも多くの中国人観光客が訪れているわけだが、日本のホテルの中でも、同様のトラブルというのはあるのだろうか。私が以前、日本のホテルについて伝聞した話を思い返してみると…

  • 中国料理でないと食べない…ということは無いが、日本料理への関心が高いので、中国人向けのセットメニューなどは用意している。
  • 基本的に刺身や寿司以外で冷たいものは食べない(たとえばザルソバとか)ので、それは除外する。
  • うどんに関心が高い。食べごたえがあるものが好まれるので味噌汁代わりにうどんをつけたりする。
  • 茶碗蒸しは非常に受けがいい。
  • 骨がついた焼き魚などは食べにくいので好まれない。焼き魚ならシャケや銀ムツなどが良い。
  • 豚肉が好まれるのかと思いきや、鶏肉を使った料理の方が好まれる傾向が高い。これは彼ら自身が高度な豚肉食文化を持っているため、好みが別れてしまうらしい。日本食の肉料理としては鶏肉を使ったものの方に高い関心を示す。たとえば親子丼など。
  • 一回の食費が100人民元(約1500円)を超えると高いと思うが、それぐらいまでなら出してもいいと思っている。

…というような話を聞いた記憶がある。
これらのことは、経験だけによって得られたものではなく、ホテルの中の人が、中国に視察旅行へ行ったり、中国の旅行代理店と情報交換をしたりするなかで、見識を深めて、中国人の日本食に対する興味と関心を調べあげて、メニューを試行錯誤し、値段設定なども考えたらしい。

外で買ってきて部屋に食べ物を持ち込みをしたりする人はいないのですか?と聞いてみたら、そういう客はいるけれど、それは黙認している…との回答だった。

結局のところ、どんなにホテルががんばってみても、客の要望の全てに応じることはできない。外国を旅行中に、街を歩いていて偶然見つけた食べ物とか、コンビニで気になったお菓子とか、たまには自分の国の食べ物を食べたくなることはある。お客はせっかくの旅行を楽しんでいらっしゃるのだから、それをいちいち咎め立てるのはホテルのサービスに反する。なるべくお客の自由にさせてあげたい…ということであった。結論として、この日本のホテルでは、上記のように行き届いた「おもてなし」を行なっているため、目立ったトラブルはない…ということであった。

問題のモルディブの中国人旅行客は、単に食費を浮かせたかったのか、口に合う料理がなかったのか…その真相はわからないものの、選択の余地が少ないとか、客にあった食べ物がないというのは、観光地としてどうなのか…という気がする。今は尖閣などの政治的要因で、日本を訪れる中国人観光客が少ないのであるけれど、日本が中国人に観光旅行先として選ばれる背景には、日本のホテルの「おもてなしの心」と呼ばれるような、地道な努力と客に対する配慮があるからなのだろう…とモルディブの件を調べながら考えさせられた。真相に迫る内に、こともあろうか中国人を擁護するようなオチになってしまったので、つぎこそはちゃんと反中的なブログ記事を書こうと思います(笑)

日本人は知らない中国セレブ消費 日経プレミアシリーズ