最近は、時間があると上掲のシリーズ記事の下調べをしている。1960年の開高健訪中の記録である。
これ自体は全90頁程度の短い文章だけど、内容を詳細に解読するにあたって、訪中団の他の参加者の記録にも目を通している。他の参加者の記録を読むことで、開高健の見聞を多角的に検証できる…と思ったからだ。
そうすると、まず第一に目を通すのは、日本文学代表団の7名が共同執筆した『写真中国の顔ー文学者の見た新しい国』という本になる。
現在、アマゾンやヤフオクで古書が手に入る。
これを読むと、1960年時点で、7人の日本人がどのように中国を見たのかがわかる。そして、この7人の視点を通じて、訪中記を読んだ当時の日本人が、中国をどのような国だと認識したのか、時代の空気が読めてくるのではないか。
7人の記録の一字一句を、鵜の目鷹の目で揚げ足を取るようなことは不本意である。所詮過去のことだし、今よりはるかに情報が制限されていた当時の中国の訪問記を、現在の我々が間違い探しをして、嘲笑するのも卑劣な気がする。
しかし、現在も存命中で、日本社会に大きな影響力を持つ大江健三郎が、当時の中国をどのように見たのか…これを共有するのは、現在の大江健三郎と、彼が日本に及ぼした影響を考える上でも有益ではないか。
そして、大江健三郎が日本の保守的な人たちから嫌われているのが、私にはイマイチ理由がわからずにいる。そもそも、彼が嫌われるようになったキッカケはなんだったのか。
そこで、上掲の書籍より、幾つか抜粋して、大江健三郎の中国観を考えてみようと思ったのである。
続きを読む