昔、久しぶりに会った複数の友人・知人から、
「広島へ帰ったんじゃないんですか?」
と聞かれたことがあった。
広島?帰る?
何のことかよくわからないので聞いてみると、私が中国女子との間に子供が出来たため、結婚して実家のある広島へ帰った…というのである。
「へぇ…そんなことになっていたのですか」と、自分のことながら感心して聞き入ってしまったがw、私は中国女子と結婚してないし、子供もいないし、そもそも私の実家は広島ではないのだ。
根も葉もないデマが信じられてしまう
広島には昔、旅行で2回行ったことがある。1度目は高校生の時に原爆ドームを見に行った。2度目は旅行の途中で、バスだか鉄道の乗り継ぎで数時間いただけだ。
友人・知人にその旨を伝えると、「そんなことはない」と言い出した。
私のことをよく知っている某氏が、そのように私の近況を伝えた…というのだ。
某氏の名前を聞いてみると、全く覚えがなく、初めて聞いた名前だった。
私はそれ以上、某氏に興味を持たなかったので、詳しくは聞かなかったが、何らかの「信用」がある人物らしく、どこかの名の通った会社の社員だったか。「あの人はウソをつくような人ではない」と友人・知人は口を揃えて言うのである。
友人・知人からすると、「できちゃった婚」というのは、言い出しにくいことだろうから、私が隠しているのだろう…と考えたようだ。すぐに信用してもらえなかった。
ただ、私の実家が広島以外なのは思い出してもらえたので、「そういえば変だよね。実家が広島とか初めて聞いたから…」と考え直してくれた。
「でも、あの人と本当に面識ないの?」
「ない。初めて聞いた名前だ」
「でも、あの人は、『彼のことをよく知ってます…』って言ってたよ」
「ない。全然面識ない」
「じゃあ、どうしてウソをついたんだろう?」
「わからない。別の人と勘違いしたのでは?」
「いや、あなたの名前をしっかり繰り返し言ってた。別人と勘違いしてるようではなかったよ」
某氏は何者なのか…非常に気になったので、会ってみようかとも考えたが、日程が全く合わず、どう考えても不気味なので、結局会わないまま、月日が流れ今に至る。その時の、友人・知人とも今は疎遠になって、十年以上会ってないので、某氏について一切確認していない。
デマを否定するのは、デマを流すよりも多くの労力を伴う
私がその経験から理解したのは、
- 全く根拠のないデマを流し、平気で嘘をつく人は実在する。
- 私みたいに、有名人でも金持ちでもない人間でも、そうしたデマの対象になる。
- リアルでちゃんと付き合いのある友人・知人でも、全く根拠のないデマを簡単に信じてしまう。
- 何らかの有名な会社?に在籍していたり、地位のある人物の言うことなら、すぐ信じてしまう。
- 本人がデマを否定しても、すぐに信じてもらえない。
- デマの内容が本人にとって不都合なことであれば(多くの場合そうだが)、デマを否定するのは隠蔽目的と疑われる。
…ということだった。
最終的に、私の友人・知人は、「デキ婚広島帰郷説」が全部ウソだとわかってくれたけれど、これは彼らが正直に私に話してくれたからデマが露見したわけで、私が彼らに会いに行かなければ、会っても彼らがデマの件を黙っていたら、今でも「あの人は中国女子と結婚して実家の広島で育児をしているんだな」と信じ続けているのだろう。
もしかしたら、某氏は他にも私のデマを流しているかも知れない。だから、私が知らないだけで、長年会っていない他の友人・知人たちは、今でも、「デキ婚広島帰郷説」を信じているのかも知れない。
こういう奇妙なことは、私みたいな無名の人間にも起こってしまうのだから、長く生きていれば、どんな人にも起こり得ることなのだろう。全ての人に、自分の状況が正しく伝わっていると思わない方がいいのだ。そして、意図せずともこういうデマを流す側になったり、真偽不明の他人の噂に首を突っ込まないように…と自戒したのであった。