【米国大使館が謝罪、留学希望の中国人学生を「家の外に出たがる犬」に例える】
— 黒色中国 (@bci_) 2021年5月9日
「春暖かくなり、花が咲きました。あなたはこの犬のように、遊びに出かけるのが待ち切れないのでしょうか。米国駐中国大使館は、留学ビザの申請受付業務を段階的に回復していますよ。」https://t.co/fjNaqXYmmO pic.twitter.com/RsZ8PF5ULf
この件、米国大使館の書き込みに悪意があるかないか、という話が出たので、こちらでも記録しておくと、そもそものツイートが中国語で書かれていることから、筆者は中国語のできる人と思われる。
であれば、常識の範囲で他者を…特に中国人を犬に例えるのは、冗談で済まないのは知っているはずだろう。
手先、密偵、スパイ…
▲こちらで中国語の犬(狗)の意味を見ればすぐわかるが、中国語の中で「犬」はあまりいい印象がない。「走狗」という言葉もあるように、飼い主の言いなりになって悪事を助ける動物であり、「狗腿」といえば、主人の足にすり寄る犬=ごますり、おべっかを使う…という意味になる。
私は犬が好きなので、中国語世界における「犬」の印象があまり良くないのが気になっていたのだが、実際に中国に住んでみると、中国にいる犬(西洋渡来の種類やチャウチャウとかは別にして)は、警察犬とか軍用犬でもない限り、ヒョロっとして頼りなくて、いつも人目を気にして、コソコソ移動して、主人以外になつかず、見知らぬ他人に怯え、距離を取って吠える卑怯な印象がある。堂々としてないし、愛嬌もない。ハッキリ言ってウザい。
それと、中国ではなぜか「犬は不浄な動物」という印象が強い。
中国で私が犬を可愛がろうと撫でてやったりすると、一緒にいる中国人が「汚いから触っちゃだめ!」と怒ることが何度もあった。詳細は別の記事でまとめて書こうと思っているが、狂犬病の恐れなどとは別で、「犬は汚い」という印象があるのだろう。
一応、犬を愛玩目的で飼う人もいるのだが、少し昔の中国だと、狂犬病防止のために飼うのが禁じられていたりした。田舎の農村や、郊外の廃品処理業者(得てして不法の可能性がある)がたくさん犬を飼うのを見たことがある。これは愛玩用ではなく、外来の者を警戒するための番犬だろう。
「犬と中国人は立ち入るべからず」
あと、1つ覚えて置かねばならないのはこの件だろう。
昔、上海の租界の公園に、「犬と中国人は立ち入るべからず」との注意書きがあった…というのである。
これは、正確にはかなり違うのだが(そもそも外国人のための公園であり、付添の使用人などの中国人の入園は可能であったらしい)、その後、ブルース・リーの映画でも取り上げられたこともあり、中国人は犬と並べて入園を拒絶されたと信じ込んでおり、これを解放前の国辱だと思っている。
▲こちらがそのブルース・リーの映画『ドラゴン怒りの鉄拳』(中文名『精武門』)のシーン。
だから、西洋人から、「犬扱い」を受けるというのは、中国人にとって黄浦公園の件を想起せざるを得ないだろう。
こんなことは中国語を学んだ者なら誰でも知っていることなのだから、中国人を犬に例えるのは、冗談でもありえない。
米国大使館の中の人は、そもそもこれだけ流暢な中国語が書けるのだから、故意にやったのでなければ、よっぽど常識ハズレの人だったのだろうな、と思われる。