【YOUTUBE】『「ゲノム編集」双子女児誕生か 中国の研究者が発表』中国・深センにある南方科技大学の賀建奎准教授は自ら動画を公開し、エイズウイルスに感染しないようヒトの受精卵を操作し、双子の女の子を誕生させたと発表しました https://t.co/zDSBHP0rkE
— 黒色中国 (@bci_) November 27, 2018
この数日、中国の「ゲノム編集出産」の件が話題になっておりますが、関連のニュースを片っ端に読んでいると、賀建奎副教授の発言に「気になる矛盾点」がありましたので、こちらにまとめておこうと思います。
【目次】
- 何が本当で、誰がウソをついているのか?
- 「研究」の場所と「資金」の出処
- 遺伝子系テクノロジー企業・瀚海基因
- 中国科学者の非難声明原文
- マイケル・ディーン米ライス大教授
- 米国西海岸と関わりの深い中国のDNA研究
何が本当で、誰がウソをついているのか?
▲こちらの記事によると、
同大は26日、「国際的な学術倫理に著しく背いた」と賀氏を非難したうえで、専門家による委員会を立ち上げて調査に乗り出すとの声明を発表した。声明によると、賀氏は大学側に事前に報告していなかったという。
▲南方科技大では、賀氏の事前報告を受けてなかった、一切知りませんでした…と声明を出しているわけです。
同記事を読み進めると…
AP通信によると、賀氏は深圳の病院から研究について承認を受けたと主張している。しかし、この病院は27日、「賀氏のいかなる実験にも関与していない」とする声明を発表。この病院では、ゲノム編集でエイズウイルスに対する免疫を持たせた双子の女児は生まれていない、と否定した。
…とあります。
もう完全に賀氏と病院の言い分は食い違っているわけです。病院の声明が本当なら、女児はどこで生まれたのか。もしくは存在しないのか。
更に同記事を読むと、
中国の科学技術省の徐南平次官は27日、朝日新聞などの一部の海外メディアに対し、「賀氏の研究が事実であれば、明らかに中国の条例に違反する」と指摘した。同省は緊急会議を開き、事実関係の確認を急いでいることを明らかにした
…とありますが、
【中国当局、「ゲノム編集」駆使の副教授に活動停止措置「違法」と批判】徐次官は「わが国の関連法・条例に公然と違反するものであり、学界が堅守してきた道徳・倫理面のレッドラインを越えるものだ」と批判、法律に基づき調査・処理する意向を示した。 https://t.co/oVXPw2UPIF
— 黒色中国 (@bci_) November 30, 2018
▲こちらを見る限り、賀准教授の「研究」が実際にあったことが確認出来たから、「違法」という判断や、「活動停止」という措置が出てくるわけで、双子の女児はどこかで産まれているのは間違いないはず。産まれていないのなら、何が違法で、なぜ活動停止になるのか…ということになります。
▲但し、28日に香港で開かれた国際会議に出席した賀准教授は、双子の実在を示す具体的な情報を明らかにしなかったそうで、「出産の真偽は不明」ということになっています。
「研究」の場所と「資金」の出処
【ゲノム編集の双子誕生か 中国、受精卵改変と報道】米メディアによると、研究者は中国・深センの大学に所属。不妊治療中だった7組のカップルの受精卵に、HIVへの感染を抑止できる可能性が高まるよう特定の遺伝子をゲノム編集で改変。このうち1組が妊娠、出産した… https://t.co/devcjxsUcR
— 黒色中国 (@bci_) November 27, 2018
▲こちらの記事では、7組のカップルの受精卵をゲノム編集し、その内の1組が出産した…とあります(※当初は8組だったのが途中で1組辞退)。決して、規模の小さいものではない。大学は知らなかったと声明を出しているわけでさうが、なぜ大学側に一切バレずに、賀副教授は、これらの「研究」を実行できたのか。
【「世界初のゲノム編集赤ちゃん」の正当性主張 中国科学者】■大学は賀准教授の研究内容を把握しておらず、内容について調査を開始すると発表。准教授は今年2月以来、無給休暇中だった■准教授も自分の研究は大学の関知するところではなく、研究資金は自分で賄ったと説明… https://t.co/Fn5xLQHdht
— 黒色中国 (@bci_) November 29, 2018
▲新しいニュースを見る度に、これほど怪しい話が噴出してくるのも珍しいと思うのですが、こちらでは
- 賀准教授は今年2月以来、無給休暇中だった。
- 賀准教授も自分の研究は大学の関知するところではないと証言。
- 研究資金は賀准教授が自分で賄ったと説明。
8組のカップルに参加してもらって、ゲノム編集も行って、出産まで至っているわけですから、それらを全部大学に隠しながら実行して、しかも費用は賀氏が全部自腹でやりました…と。なんだか変な話になってきました…
【ゲノム編集の中国人科学者に質問、「自分の子どもでも実験するのか?」】講演後に受けた双子の将来に関する質問については「プライバシーを保護しつつ、モニタリングを続ける」「全ての資金とエネルギーを費やしてケアする」などと回答。 https://t.co/cm4D1DTVm9
— 黒色中国 (@bci_) November 29, 2018
▲こちらも香港での国際会議での発言ですが、
講演後に受けた双子の将来に関する質問については「プライバシーを保護しつつ、モニタリングを続ける」「全ての資金とエネルギーを費やしてケアする」などと回答
先のBBCの記事に
今後18カ月の間、双子の成長経過を観察し続ける方針という。
…とありましたので、少なくとも18ヶ月間18年、双子の女児にはモニタリングとケアが行われるわけですが、それらの資金はどこから出て、どこで行われるのか。
※コメントでご指摘いただきましたが、「18ヶ月」は、BBC日本語版の誤訳で、英語版では
hey would be monitored over the next 18 years.
…となっておりましたので訂正いたしました。
▲英語版記事はこちらをご参照下さい。
更にネットで情報を漁っていると、気になる記事がありました。
遺伝子系テクノロジー企業・瀚海基因
【企業家が語る深センの科学イノベーションの聖地への道】賀建奎(34歳)氏は深セン市南方科学技術大学の副教授であると同時に、テクノロジー企業の取締役でもあります。賀氏は6年前、遺伝子の検査機器と試薬の研究開発を行うテクノロジー企業を創設しました https://t.co/vEovZz61jY #ゲノム編集出産
— 黒色中国 (@bci_) November 30, 2018
賀建奎氏は遺伝子関連のテクノロジー企業の取締役なのでした。もしかしたら、今回の「ゲノム編集出産」の件は、大学ではなくて、こちらの企業で行われたのかも…。
▲こちらが、賀建奎氏が役員を勤めるテクノロジー企業「瀚海基因」のウェブサイト。早速見てみると、何か文書みたいな画像が張り付いており、「声明」が見えます。
「公司声明」を抜き出してみると、
公司声明
鉴于近期社会各界对深圳市瀚海基因生物科技有限公司(以下简称“瀚海基因”)的关注,本公司声明如下:
瀚海基因从未开展或参与基因编辑项目。
瀚海基因始终致力于单分子基因测序仪及其配套试剂盒的开发及生产,公司产品单分子基因测序仪已经完成小批量试产。
目前公司的生产经营及管理活动一切正常。
特此声明深圳市瀚海基因生物科技有限公司
2018年11月28日
ようするに「当社はゲノム編集をやってもないし、関わってもいません」ということですね。遺伝子の検査機器と試薬の開発と生産をしているだけで、遺伝子の検査機器は既にパイロット生産を完成しております。当社の生産経営と管理活動は一切正常です…と描かれております。
私と同じようなことを考える人がいるので、先に手を打った…という感じですね。
ただ、こうなってくると、今までの「研究」と今後18ヶ月間の双子の女児のモニタリングとケアは、どこで行われ、誰がお金を出していたのか、出されるのか?ということになってきます。
誰かがウソをついているのでなければ、全く説明がつきません。
▲瀚海基因の役員のページを確認すると…賀建奎氏は董事長ですね。この会社のトップです。
▲ゲノム編集出産に「協力」したと報道されているマイケル・ディーン米ライス大教授が、同社の「科学顧問」に入っています。
▲ちなみに会社沿革を確認すると…
▲「中米の科学者がBioRxiv(生物学のプレプリントリポジトリ)に共同で論文を発表し…」というところから始まります。
▲2016年2月の箇所で出てくる『自然』は、科学雑誌『ネイチャー』のこと。2015年10月の箇所には米国(美国)科学院…とありますから、この会社って、始まりから今に至るまで米国との関わりが大きいわけです。
中国科学者の非難声明原文
https://www.weibo.com/5705191799/H4AV5pK35?refer_flag=1001030103_&type=comment#_rnd1543543993143
▲こちらにありました。SNSで非難声明が出たということなので、各々の科学者が自然発生的に連携して「非難声明」に発展したのかな…と思ったのですが、こちらは『知識分子』というウェブメディアのアカウントでして、3名の学者さんが集まって作ったそうです。
『非難声明』を見ると、これに同意した学者さんの名前がたくさん並んでおります。
マイケル・ディーン米ライス大教授
今回のゲノム編集出産には米国の研究者も参加しておりまして、
▲こちらを見ると「マイケル・ディーン氏」というお名前が出てきます。
マイケル・ディーン氏は、 カリフォルニア工科大学、 カリフォルニア大学バークレー校の出身。現在、テキサス・ヒューストンのライス大学で教授を務めているとのこと。上掲のウィキペディアは早速更新されて、今回の「ゲノム編集出産」に関する記述が加えられています。
Deem was an advisor to He Jiankui, who announced in November 2018 that that he had generated the world's first genome-edited babies, Lulu and Nana; Deem was involved in He's research, and was present when people involved in He's study gave consent. Deem came under investigation by Rice after news of the work was made public.
この「He Jiankui」とは、賀建奎准教授のこと。マイケル・ディーン教授の教え子だったのですね。今回のゲノム編集出産が報道されてから、ディーン教授は大学に調査されているそうです。
▲こちらによると、
賀氏は06年、中国科学技術大学で近代物理学の学士号を取得。10年に米テキサス州ライス大学で生物物理学の博士号を取り、翌年から2年間、米スタンフォード大学で遺伝子研究に従事。28歳で南方科技大学の最年少副教授に就任した。
▲とあります。この時にマイケル・ディーン教授との接点が出来たわけです。
▲先の内容と重複しますが、マイケル・ディーン氏は瀚海基因の科学顧問を務められております。
ここで私が気になってくるのは、今回のゲノム編集出産は、マイケル・ディーン教授が主導したのか、それともあくまで賀准教授の手助けだったのか…ということです。
ここで、ちょっと別の視点で今回の件を見てみます。
米国西海岸と関わりの深い中国のDNA研究
【中国のゲノム研究所、「究極のシークエンサー」の開発に着手】世界最大規模のゲノム研究所を擁する中国企業「BGI」が、米西海岸の2カ所に新たな研究拠点を発足した。さらには独自の次々世代シークエンサーの開発を進めることが発表されている。 https://t.co/UBw6XNGDkI
— 黒色中国 (@bci_) July 5, 2017
▲このBGIという中国企業、漢字表記では「北京基因組研究所」(Beijing Genomics Institute)なわけですが、北京が本拠地と思いきや、現在本拠地は深センににあります。
▲ Beijing Genomics Institute(ウィキペディア英語版)より
BGIは、元々は中国科学院遺伝研究所の人類遺伝子センターで、「中国科学院」は国務院の直属の機関です。
このBGIの研究拠点が米国西海岸に2箇所ある…というわけです。場所を確認してみます(つづく)
※本記事は随時更新&未完成です。新しい情報が分かり次第、追記します。