黒色中国BLOG

中国について学び・考え・行動するのが私のライフワークです

『目に見えぬ侵略 中国のオーストラリア支配計画』を買いました

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▲「サイレント・インベイジョン」の名前の方で有名な本ですが、ついに日本語訳が出ました!アマゾンで予約していたのがついに届きました。

【目次】

刊行自粛が相次いだ!

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▲帯を読むと

「刊行自粛が相次いだ」

…と書いてまして、こういう本を出すと中国からの圧力があるのでしょうか。ただ、飛鳥新社なら、へっちゃらっぽいですね。

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▲この数年、「アメリカ通信」を毎週欠かさず見ているのですが、その中で『サイレント・インベイジョン』の話はしょっちゅう出てくるので、もう日本語版は出ているものだと思ってばかりいました。

目次を読む

「反中本=ネトウヨ本」みたいな印象がありますけど、この本は内容を見ると、かなり真面目な本です。

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▲ようするに、中国があの手この手で、オーストラリア(カンガルーがいる方)に浸透しているのを紹介する本です。

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▲日本でも「中国のスパイが!」と大騒ぎするのが好きな人達がいますけど、疑心暗鬼でイイカゲンなことを言ってるだけで、ほとんど「オオカミ少年」みたいな虚言症の持ち主にしか見えない。

香港だとアチコチに大陸からの「浸透」があるのはよく知られたことで、私も香港で何度か「ああ…これが…」というのを見たこと&経験したことあります。

ちゃんとした知識の裏付けがなく、ただ中国が悪い!中国がスパイを送り込んでいる!とわめきちらしても、自分の信用を落として、相対的に中国の信用を高めることになります。こういう真面目な本をしっかり読んで、知識を身に着けなくてはいけません。

「日本語版へのまえがき」…1行目からアクセル全開w

著者のクライブ・ハミルトンが書いた「日本語版へのまえがき」を読むと、日本の読者に向けて、いろいろ書いているのですが、その中からいくつか抜粋すると…一行目から

北京の世界戦略における第一の狙いは、アメリカの持つ同盟関係の解体である。
(「日本語版へのまえがき」、8頁)

…と、余計な前置き抜きで、本当のことを書いておりますww

正直で、率直な著者ですね。

これは、長年中国のメディアに目を通し、中国人と話してきた私にとって異論のない真実です。CCTVで日本の再軍備とか憲法問題を取り上げる時って、毎回「日米同盟」批判みたいになりますから。

▲ご興味ある方は、こちらの連投を御覧ください。2017年の安保法制の際のCCTVの取り上げ方をご紹介しています。

日本では、数千人にものぼる中国共産党のエージェントが活動している。
(「日本語版へのまえがき」、9頁)

私が日本において知る範囲でも、「この人はたぶん…」という覚えのある人がいますからね。そういう人をかき集めたら、数千になるんだろうな…というのはわかります。

では、その数千人が何の目的で、何をやってるのか…オーストラリアでの事例を理解すれば、中国が日本に仕掛けている手口も解明できて、工作を防げるのではないか…と思うわけです。

ところで、「クライブ・ハミルトン」って誰?

「アメリカ通信」を見ていると、『サイレント・インベイジョン』とクライブ・ハミルトンの名前はしょっちゅう出てくるのですが、クライブ・ハミルトンがどういう人かは知りませんでした。

巻末の「著者略歴」を読むと、

  • オーストラリアの作家
  • 14年間にわたって自身の創設したオーストラリア研究所の所長を務め
  • 過去数年にわたってキャンベラのチャールズスタート大学で公共倫理学の教授を務めている。

としか書いてません(著書の部分は飛ばしました)

▲ウィキペディアの方が詳しいですね。

チャールズ・スタート大学では公共倫理学部副学部長の職にある

と書いてるので、どっちかといえば学者さんなんでしょうね。

オーストラリア政府の気候変動局の委員会のメンバーでもあり

「気候変動局」ってなんでしょう?ウィキペディアの続きを読むと、

ハミルトンは、15年以上に渡って気候変動の政治問題について多くの著作を残してきた

とあるので、気候変動が専門なのでしょうか。

でも、どうしてその人が中国問題の本を出したのか。

他の情報を探してみると…

▲「clivehamilton.com」というそのまんまの本人のサイトがありまして、そこの「About」にいろいろ書いてました。

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▲自動翻訳のスクショですが、これで見る限りわかるのは…

  • とにかく頭がいい人
  • オーストラリア研究所を設立したのはわかるけど、ここの運営資金はどこから出ているのか?全部自腹なのか?
  • そしていきなり芸術の学位、経済学の博士号も取得

なんだか、ミステリアスなおじさんですね。つまり、頭はいいけど、中国屋さんでも、安全保障の専門家でもないんです。

専門外の人が中国について書いた本は、煮ても焼いても食えない駄作か、突出した傑作になることが多いです。本書は後者の方でしょう。ただ、気をつけるべきことがあります。

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▲クライブ・ハミルトン氏。ウィキペディアに写真がありました。

今まで、「アメリカ通信」で断片的に本書の内容は聞いてましたし、その内容に特別異論はないのですが、一応素人ながらも長年中国に関する本を読んできた者として申し上げられるのは、まずは情報の発信者を疑わなくてはいけない…意図を見破らなくてはいけない…ということです。

内容的に反中的であり、日本の味方であり、内容にも問題がないとしても、どういう人物がどういう目的でその情報を発信しているのかを意識せずに、無防備に鵜呑みにするのであれば、そういう人は中国のプロパガンダにもすぐ乗せられる。「サイレント・インベイジョン」を見抜けない…と思うのですね。

本書はまだ手にとったばかりで、内容は全然読んでいないのですけど、久しぶりに読み応えのある本が来ました。しばらくはコロナのせいで、中国にも香港にもいけない日々が続きますので、その合間にしっかり精読しようと思います。

【追記】分厚い2段組の本は迷ったら買え

▲ツイッターの方で書いたんですけど、この本、手にとって見ると結構分厚いし、2段組だし、2090円もするんですけど、もしアナタがちょっと躊躇しちゃったら、そこは勢いで買うべきです。分厚い2段組の本に悪い本はありません。聖書とかそうじゃないですか。

今の世の中、「薄くて浅い本」ばかりが蔓延る中で、400頁超の2段組というのは、よっぽど良い内容でないと、世に出ることはないのです。私が去年買った廖亦武さんの『銃弾とアヘン』は2段組370頁で3600円でした。

『目に見えぬ侵略』も本当なら4000円台になる本なんでしょうけど、装幀とかで工夫して(芯の入ったハードカバーじゃないです)2090円に押さえてくれているのですね。これは、非常に良心的な本と言えます。