黒色中国BLOG

中国について学び・考え・行動するのが私のライフワークです

現在、日本国内にある孔子学院の数について

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オーストラリアで13の孔子学院を閉鎖…というニュースのツイートが話題になっています。

ところで、この朝日の記事では、無料部分で読める範囲が限られていて、オーストラリアの孔子学院が全体でいくつあるのか、よくわかりません。

そして、今の日本の孔子学院がどうなっているのかも知りたくなってきましたので、調べてみることにしました。

【目次】

(1)オーストラリアには孔子学院がいくつあるのか?

▲以前、こちらの記事でも紹介しましたが、孔子学院は公式サイトがあるので、それを見れば、全世界の孔子学院の状況を把握できます。

そちらでまずオーストラリアの状況を調べてみますと…

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▲孔子学院公式サイトの分類で、オーストラリアはオセアニアの下にあり、そこを見ると

  • 孔子学院…14校
  • 孔子課堂…6校

とありました。こうして見ると、「そんなものか…」と思いますが、オーストラリアの人口は2460万人(2017年の調査による)です。

オセアニア全体で孔子学院は20校しかなく、その内の14校がオーストラリアに集中しているわけです。

(2)現在、日本には孔子学院がいくつあるのか?

上掲の2015年の私が書いたブログ記事では

  • 孔子学院…13校
  • 孔子課堂…7校

となっていました。

「孔子課堂」については

▲こちらでも解説しましたが、

「孔子学院」は大学に開設し、「孔子課堂」は小学校~高校に開設されるものだそうです⇒参考資料。日本での取り組みをググってみると「神戸東洋医療学院」に孔子課堂が設置されています。本体の神戸東洋医療学院は鍼灸師養成施設であり、一般的な大学とは異なります。ここの孔子課堂は語学学校の類で、この事例で見る限り、「孔子課堂」は正規の大学以外で孔子学院のカリキュラムが行われる場合に使用される名称のようです

 ▲こういうことになっています。

ようするに、

  • 大学に設置されるのは「孔子学院」。
  • それ以外に設置されるのは「孔子課堂」。
  • 孔子課堂は孔子学院よりも小規模である。

…ということになるかと思います。

では、現在の数がどうなっているのかを調べてみますと…

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孔子学院は15校、孔子課堂は2校でした。

つまり、この4年間で孔子学院(大学での設置)は2校増えて、それ以外の孔子課堂(大学以外での設置)は5つ減った…激減しているわけです。

現在の日本の孔子学院(開設年月日と提携校)

  1. 立命館大学(2005年6月28日、北京大学)
  2. 桜美林大学(2005年11月1日、同済大学)
  3. 北陸大学(2006年2月15日、北京語言大学)
  4. 愛知大学(2006年2月24日、南開大学)
  5. 札幌大学(2006年11月22日、広東外国語大学)
  6. 立命館アジア太平洋大学(2006年10月25日、浙江大学)…大分県にあるそうです
  7. 兵庫医科大学(2012年3月1日、北京中医大学)…ここの孔子学院だけ特殊でして、「中医薬孔子学院」という名称になっており、「「中医薬」に特化した教育・研究活動を中心に中医薬関連の文化・学術交流活動をすすめるもので、我が国では唯一、世界的にはイギリス、オーストラリアに次ぐ3番目、アジアでは初めての医薬・医療系の孔子学院」だそうです。
    詳しくは

    ▲こちらを御覧ください。

  8. 早稲田大学(2007年4月12日、北京大学)
  9. 岡山商科大学(2007年6月12日、大連外国語大学)
  10. 大阪産業大学(2007年8月28日、上海外国語大学)
  11. 福山大学(2007年11月16日、上海対外経貿大学と上海師範大学)…広島県にあるそうです。ここだけなぜか提携校が2つですね。
  12. 工学院大学(2008年01月22日、北京航空航天大学)
  13. 関西外国語大学(2009年9月22日、北京語言大学)
  14. 武蔵野大学(2015年8月11日、天津外国語大学)
  15. 山梨学院大学(2018年12月05日、西安交通大学)

ウィキペディアにも同様の情報はあるのですが、情報が更新されていないようです。それと私は開設年月日を孔子学院公式サイトから引っ張ってきているのですが、ウィキペディアでの記載は一部違う内容になっています。

この開設年月日をよく見ると、13番目の関西外国語大学(2009年9月22日)以後、長らく新規開設が途絶えております。

たぶんこれは、尖閣諸島中国漁船衝突事件(2010年9月7日)、尖閣諸島国有化(2012年9月11日)による関係悪化の影響のように思われます。

それから、2015年にようやく新規開設(武蔵野大学)。その次が2018年の山梨学院大学で3年後ですから、日本における孔子学院の新規開設は、初期の「破竹の勢い」はなく、鈍化しているのがわかります。

ただ、人口1億2680万人の日本で孔子学院は15校、オーストラリアは人口2460万人で14校ですから、オーストラリアへの「浸透」は凄まじいですね。

(3)現在設置されている日本の孔子課堂について

先にも述べましたが、2015年に7校あった日本の孔子課堂は、現在2校に激減しています。

なんとなく想像がつく理由として、日本にはそもそも中国語会話教室が多く、一時期のブームで中国語教育の人材が増えたものの、日中の関係悪化で、新規に学ぶ人が減ったので、安く学べるとか、無料でも学べる(地方自治体がやっている講座などでこのタイプがある)場所もあるので、日本で孔子課堂はあまり必要性がなかったのではないか…と思われます。

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▲では、いまも日本にある2つの孔子課堂はどうなっているのかを確認すると…

  • Radio Confucius Classroom at Japan-China Friendship Association of Nagano Prefecture
    ▲一見何のことか不明でしたが、日本語では「長野ラジオ孔子学堂」という名称になっています(「課堂」は中国語であり、日本語での訳は「学堂」になったり、「課室」と訳する場合もあるようです)。長野県にある日中友好協会が中国国際放送局(CRI)と提携して開設したそうです。ラジオで授業を放送するのかと思いましたが、そういうのではないみたいです。設立は2007年11月7日。

    ▲こちらを見るに、友好協会の中国語教室が「孔子課堂」になっている…ということのようです。

  • 「Kobe Toyo Medical School」は「神戸東洋医療学院」でした。設立は2007年10月25日。天津中医薬大学と提携。神戸東洋医療学院は鍼灸師の学校であり、「大学」ではありません。「一般社団法人」になっています。

    ▲こちらを見ると、
    「日本から中国へ留学する学生には、中国語教育を行う『神戸東洋医療学院 孔子課堂』を設けております。」
    …とあるので、そういう特殊な事情での設置となるようです。

このようにみると、日本における孔子課堂は、日中友好協会か鍼灸学校という「ちょっと特殊なケース」だけが残っているようです。中国語学習以外の目的や本業があるために、孔子課堂を続けられる…という事情もあるのかと思われます。

【追記】米国に孔子学院はいくつあるのか?

この記事を公開してから多くの反響が寄せられましたが、「米国は孔子学院を全て撤去している!」という声があり、そういえば米国のことは今まで気にしていなかったので、ちょっと気になって調べてみました。

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孔子学院は95、孔子課堂は12もあります。

先に人口比で豪州は日本に比べて孔子学院が多い…と書きましたが、米国も多いですね。この95+12が実際どのように運営されているのか、活動実態は知りませんけど。

ただ、私も今までの日本の報道を見ていて、「米国の孔子学院は片っ端に閉鎖されているのだろう…」と思い込んでいたので、今回の件は良い気付きのキッカケになりました。