このシリーズを始めてから、海鴎4Bにカラーネガフィルムを詰めて、実際に撮影してみたのですが、
▲第一回の時に触れた「トリプレットレンズの魅力」なるものは、ほぼ確認できませんでした。
よく言えば「個性的な描写」ですけど、率直に言えばボケがかなりうるさいです。
アッサリとした清涼感のある発色は好感度持てますけど、解像度はさほどでもない。あくまでも量産品の家庭用カメラだな…というところでした。
とはいえ、もう気持ちは盛り上がってしまっているのでw、ここですぐ引くわけにもいかず、沼に向かって前進するのが漢というもの。
▲こんなものを入手しました。海鴎4Bに装着可能なテッサータイプレンズです。
【目次】
海鴎二眼レフのレンズの命名規則
海鴎の二眼レフは長期に渡って生産されたので、レンズも複数のタイプが存在します。
大きく分けて
- 海鴎4A(4枚玉のテッサーレンズ)
- 海鴎4B(3枚玉のトリプレットレンズ)
…の2種類が基本なのですが、後期になると海鴎4Aでも三枚玉があったりします。
そして、海鴎という会社は、レンズの命名規則がいい加減でして、「SA-XX(二桁の数字)」という名前を見ても、それが3枚玉か、4枚玉か判別できません。
SA-99は海鴎が二眼レフ用に開発した最終形の撮影レンズです。「3-G 4-E」と書いてあるのは、「3 Group 4 Elements」の略。つまり「3群4枚」…テッサータイプということになります。下側に置いているのは後群にあたります。
これとは別に、「SA-99」なんだけど、「3-G 3-E」と書かれているトリプレットタイプもあります(SEAGULL 4A-105に採用されている)。中古で海鴎の二眼レフを購入する時は注意してください。
海鴎の二眼レフは、ボディが単純だし、大量に中古品が市場にあるため、壊れたら別のものを入手したり、部品取りをして直して使えばいいわけですが、レンズは、クモリやカビが酷かったりすると画質に大きく影響します。海鴎の古いレンズには味のある描写をするものもあって、古いから良くないとは断言できない…好みの問題なのですが、なぜかネット上ではSA-99の新品が販売されておりまして(イーベイで探してください)、なるべく新しいレンズ、新品のレンズを使いたいのであれば、それを購入して自分で交換すれば良いわけです。
レンズの交換
海鴎の二眼レフのレンズ交換は、やってみたら簡単でした。
▲交換するのは下のテイクレンズ(撮影レンズ)の方です。今はSA-83が入っています。
▲こちらで解説したように、レザーを剥がして、レンズボードをボディから分離してやれば交換しやすいのですが、全く分解しなくても、レンズ交換は可能です。
▲こういうものを用意して下さい。
ホームセンターなどで探せば、こういうゴムってあるのかも知れませんが…

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▲探すのが面倒なので、私はアマゾンで買いました。古いカメラと付き合うにあたって、この手の工具は持っていて損になりません。
▲これを前群の周囲の部分(文字が書いている黒い部分)に当てて、グイッと回してやると…
▲簡単に外れます。シャッターがむき出し状態で見えます。
▲そして、さっきのゴムを使って、SA-99の前群を同じように今度は逆回しでねじ込んでやります。
▲フィルム室を開けてやると後群が見えます。レンズのまわりに円筒形の「囲い」が見えますが、たぶんこれは内面反射防止のものでは。これはレンズ交換と無関係なので無視して下さい。
▲カニ目レンチを用意しました。
▲ネットでも大きなカメラ店でも取り扱いがあります。私はアマゾンで一番安いものを購入しました。
▲海鴎の二眼レフはフィルム室から後玉まで結構深いので、カニ目レンチの串刺しになっている2本の棒は位置を変えてこのようにしてください。写真では先端が尖っているほうになってますが、実際にはマイナスの方を使います。
▲カニ目レンチでの作業は下手するとレンズを傷つけてしまうので、慎重にやって下さい。コツは間隔をキッチリ合わせること。そして2本の棒を固定しているネジをキッチリ硬めに締めること。レンズを外す時は、カニ目レンチを回してやるのではなくて、カニ目レンチはガッチリ手で押さえて、カメラの方を回してやる方が、うっかりズレてレンズを傷つける恐れは少なそうです。
そして、レンズがちょっと動いたら、最後までカニ目レンチを使うのではなくて、私は太めの爪楊枝を使ってレンズを回し、取り外しました。
▲レンズが外れたら、カメラを逆さにしてレンズを落としてやってもいいんでしょうけど、私はレンズサッカーを用意したので、これで吸い付けてレンズを取りました。

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▲これも、古いカメラとお付き合いする上での必需品の1つなので、とりあえず持ってて損はないです。
▲レンズの後群を外した状態で、一応ブロアーをかけてキレイにしてやりました。デリケートな箇所なので、あまり強くブロアーを吹き付けない方がいいと思います。
▲そっと、新しいレンズの後群を置いて…
▲後群のフチの切り欠きに太楊枝を突っ込んで回します。回しにくい時は、時計用のバネ棒外しなんかも使いやすいです。
▲取り付け完了!
海鴎は新品のレンズが使える最後の二眼レフカメラ?
▲さっそく撮影してみましたが、テッサータイプレンズになったからと言って、劇的に描写が向上するものでもなく、可もなく不可もなし…かな。最初からついてたトリプレットレンズのグルグルボケがあまりにひどかったので、ようやく普通に使えるレンズになった…という感じです。
それと、海鴎に限らず、二眼レフカメラは既に生産を終えてからかなり経つわけですが、いまだに新品のレンズが手に入り、素人でも交換可能な二眼レフカメラは、たぶん海鴎だけじゃないのかな…一応、SA-99はマルチコーティングという説もありますし。海鴎のボディそのものはネット上でまだたくさんありますので、「二眼レフカメラ&クモリのないレンズで撮影したい!」という人にとっては、海鴎は唯一の選択肢…と思われます。