実は、すでにフィルムを1本使って撮影を済ませている。撮影した写真はこちらでは公開しないが(近所や家族ばかりなのである)、いろいろと思うところがあった。
ようするに、「手を加えて」やらないと、このままでは使いにくい、画質や操作感も問題がある…ということで、とりあえずは自分でバラせるところまでバラしてみることにした。
海鴎二眼レフの分解に必要なのは、精密ドライバーとピンセットは当然として、もう1つ…
▲ボンドG17。これがあると分解ができるのだ。
(1)前面の貼り革をはぐ
▲なぜ海鴎二眼レフの分解にはボンドが必要不可欠なのか…それは、ネジを外すには、前面の貼り革をはぐ必要があり、あとで組み立てる時にボンドで革を貼る必要があるからだ。
▲こんな感じで、貼り革をはぐとプラスのネジが4つ見える。まずはこれを全て外してやる。
▲それから、シャッターボタン周りのリング。これも外す。リングに一部「欠けた」部分があるのが見えるだろうか?
▲本当ならカニ目レンチで外すのだろうが、ピンセットでも外せる。
▲シャッターボタン周りのリングを外した状態。
(2)レンズボードを外す
▲これで前面のカバーが外れる。そうするとレンズボードが見える。ここにビューレンズ、テイクレンズ、絞り、シャッターなどの中枢機能が集中している。レンズボードにはマイナスのネジが4つ。これも外してやる。
▲レンズボードを外した状態。こうやって見ると、カメラっていうのは本当に暗箱なんだな…と思う。特に二眼レフカメラは、カメラとしての大半の機能がレンズボード側にあるので、外してしまうとほぼタダの箱だ。
(3)レンズボード、そして海鴎二眼レフのレンズのウンチク
▲「SA-83」はレンズの名前だが、海鴎二眼レフに採用されているレンズの命名規則はちょっと変わってて、ビューレンズもテイクレンズも同じ名前だが、別のものである。ローライだとビューレンズは「ハイドロスコープ」だけど、海鴎ではそうやって呼称を区別しない。
「SA」とはたぶん「Seagull Anastigmat」の略と思われる。
ただ、海鴎二眼レフはそもそも「海鴎」という名前でなく、一番最初は「上海」という名前だった。その後、地名を使った製品が禁じられたため、海鴎になったわけだが、もしかしたらレンズの「SA」とは「Shanghai Anastigmat」かも知れない。
▲テイクレンズの前玉は回すとカンタンに外れる。
海鴎二眼レフのレンズは、私の知る限り
- SA-31
- SA-83
- SA-85
- SA-91
- SA-99
…などがある。「などがある」と書くのは完全に全ての種類を把握している自信がないからだ。まだ他にもあるのかも知れない。
数字は西暦の下二桁を意味するのではないか…と思ったが、そうすると最初の「31」が意味するのは何なのか?となる。
もしかしたら、「トリプレット(三枚玉)」の第一世代レンズ…という意味なのかなぁ。ただ、そうなると海鴎4Aの4枚玉はどうなってしまうのか。SA-41ってあったっけ?
83、85、91、99は西暦の下二桁じゃないのかなぁ…と思う。それぞれ、出現の時期と海鴎二眼レフの新機種登場がなんとなくかぶっているように思えるのだ。
これらは、まだ情報不足なので、後日もっと調べてから書こうと思うが、もう1つ書いておくと、海鴎の二眼レフでは、これらの「レンズ名」だけでは、それが3枚玉か、4枚玉か判別できないようになっている。3枚でも4枚でも名前は一緒なのだ。
そして、海鴎4Aはレバー巻き上げの4枚玉、海鴎4Bはノブ巻き上げの3枚玉…という区分があるものの、英語名「SEALGULL」の二眼レフについてはクランク巻き上げだけど3枚玉…というのがあったりする。
この点、これから海鴎の二眼レフを入手しようとする人はご注意いただきたい。
(4)レンズの観察
▲テイクレンズの前玉を後ろから見た。
▲ホイホイとカンタンにパーツが外れる。
▲中央が前玉。左が前玉の後ろに金具で止まっていたレンズ。カンタンに分解できたので清掃してやるとキレイになった。
私の海鴎4Bについていたテイクレンズは三枚玉のトリプレットタイプである。
▲我が海鴎4BのSA-83トリプレットは撮影してみると確かにシャープだが、一部描写がオカシイと感じる時があった。それは単に解像度不足なのか、後玉が曇っているのか(取り外してないので詳細は不明)はわからない。目の覚めるような鮮やかな色を出す時もあれば、地味な発色の時もある。
▲レンズボードの裏側。テイクレンズの後玉はカニ目レンチがあると外せる。今回は簡易分解で、構造を学ぶのが目的なので、これ以上の深追いはヤメておく。
▲ブロアーと綿棒を使って、レンズボードを清掃した。
▲ビューレンズにブロアーをかけていたら、風圧を受けて前玉がパカッと動いた。ビューレンズは極めて単純な作りなのだ。こちらも取り外してキレイに清掃した。
テイクレンズは4枚玉のものがイーベイや日本のアマゾンでも発売されている。古い4Aや4Bでもそれらを取り付けることは可能らしいので、後日チャレンジしてみたいと思う。
(5)カメラボディ
▲ボディはレンズボードの裏側(写真上の白い部分)は新品みたいにピカピカ。ブロアーをかけて綿棒で軽く拭ってやった。写真のボディ両脇の「溝」に真鍮色の部品が見えるけど、これはノブの動きに合わせてレンズボードを動かす機構である。動きが固かったので、5-56を一瞬かけてやると、とてもスムーズになった。
▲こちらはレンズボードのカバーの裏側。絞りとシャッタスピードを変えるレバーはこのような構造になっていて、カバー側についている。ここも古いグリスを綿棒で拭い、5-56を少しさしてやったら、とても動きがよくなった。
(6)前面の貼り革の清掃
▲ストロボを焚いて撮影すると、キレイに見えるのだが、私の海鴎4Bの前面の貼り革はかなり汚れていた。これは食器洗剤をかけて、歯ブラシでブラッシングすると汚れが落ちて、本当に新品みたいなピカピカ状態になった。
▲貼り革を剥がすと裏面には変色したボンドが固着していたが、これはぬるま湯につけてから、食器洗剤をかけてしばらく置いて歯ブラシでこすると革とボンドの間の粘着力がなくなって、あとは指でしごき、爪で引っ掻いてやるとポロポロと落ちた。一旦は全部接着剤を除去して、それからボンドで貼り直す。
▲キレイになったでしょ?ボンドは少しつけて、貼ってから指で上から押し伸ばすようにして広げてやる。完全にベタベタ似する必要はない。ちゃんと貼りつかない部分があれば、そこだけ爪楊枝の先にボンドをつけて、ちょっと足してやる。また指で伸ばす。その繰り返しでキレイに貼れる。
* * * * *
とりあえずのバラシでわかったのは、
- カンタンな工具だけでバラせる。
- レンズ交換も難しくなさそう。
- 難しそうなのはシャッターユニットだけ。
- 構造が単純なのでジャンクから使えるパーツを取り出して組み合わせるのもカンタンみたい。
フィルムカメラは面白いけれど、今はメーカーが修理を引き受けてくれないのがほとんどで、修理業者に出すと結構な費用がかかる。中判となればなおさらである。
その点、中国製二眼レフ…特に大量に数が出ている海鴎だと、構造も単純だし、中古品もジャンクもパーツも大量に出回っているため、購入しやすく、いじりやすい。フィルムカメラの運用コストを節約できるし、カメラの勉強にもなる。これで充分な画質の写真が撮れるのなら、文句なしなわけだが、この点はもう少し研究が必要なようである。
(7)参考にした動画
海鴎二眼レフの分解動画は結構ある。数が出ているのと、輸出もされていたのと、今でも使おうとする人が世界中に多いためか、情報共有が進んでいるのだろう。
▲こちらはYOUTUBEにある海鴎4Aの分解修理だが、基本的な構造は4Bと同じ。巻き上げクランクの部分が異なるが、これはそもそも4Bとは無縁の機能だし、大体の構造を知る上でこの2つの動画は見る価値がある。
▲こちらはビリビリ(中国のニコ動みたいなの)の動画。こちらは4Bのもの。非常にわかりやすい。4Bの分解をする人なら必見。
▲こちらは4Bの「革」を張り替える…という動画。分解動画ではないがご参考まで。
▲こちらの本では、リコーダイヤコードの分解修理の解説があり、わかりやすい(34頁~)。基本的な構造や、修理方法は海鴎4Bも同じなので参考にしました。