黒色中国BLOG

中国について学び・考え・行動するのが私のライフワークです

クジラ料理の思い出

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まさか、今頃になって商業捕鯨再開となるとは夢にも思わなかった。捕鯨の賛否について、黒色中国はとやかく言うつもりはない。中国以外のことに、余計な口出しをしないのが私の方針である。

あれば食べるし、なければ食べない。他人に食べろと勧めないし、他人が食べるのを咎めようともしない。そもそも私は、あれが食べたい、これは食わぬと、食べ物に執着しない性格なのである(誰も信じないであろうがw)

私が子供の頃、食卓によくクジラが出た。好きでもキライでもなく、ただ普通に食べた。父は胡椒を効かして焼いたのが好きで酒のツマミにしていた。母は鍋に入れるのが好きだった。

月に何度か、食卓にあがるクジラ肉は、私が買いに行くのが常だった。隣町の商店街の端っこに、クジラ肉を売る店があって、自転車で買いに行った。

そこはいつも客がおらず、開店休業のような趣きで、昼を過ぎると店主はずっとテレビを見ている。夕方には店が閉まる。冷蔵ショーケースはいつも空っぽで何も入ってない。注文したら奥の冷蔵庫からクジラ肉を取り出して切り分けてくれた。

本当にここのオヤジはこの商売で生活がなりたっているのかと、子供ながらに気になるほど閑散とした店であったけど、その店が売るクジラ肉だけは絶品であった。

飲み屋街に近かったので、飲食店に卸していたのだろう。

商業捕鯨が禁止されてからも、しばらくは店が続いていたが、たしか前世紀の終わり頃に、気がつけば店がなくなっていた…と記憶している。母に聞いてみると、あの商店街の鯨肉屋は、店主が老齢だったので店を閉めたのだろう…ということだった。

母にクジラ肉の思い出を聞いてみると、終戦後はやたらとクジラを食べた、学校で食べさせられた…というので、クジラ肉がキライなのかと思ったら、「でも、クジラ肉で作ったカツは美味しかった…」と懐かしそうな顔をした。さほど、キライでもなかったらしい。

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捕鯨再開をめぐる議論が、見たくなくてもツイッターで流れてくる。どちらの言い分もそれなりの説得力があり、私はどちらでも構わないので、静観しているだけだが、敢えていうと、どちらも恣意的な印象である。

極端に、「あんなものは不味くて、他に食べるものがないからイヤイヤ食べさせられていたのだ」という人もいれば、「クジラは日本の食文化だ、子供の頃に食べたけど美味しかった」という人もいる。

私の母のように、特別好きなわけでもないが、カツは好きだった…というぐらいの人もいるし、私みたいに、あれば食べるが特に興味はない…というのもいるわけだが、こういう人間は特に「主張」を成すに至らないので、発言もせずに黙っている。世の中の意見としてカウントされないのであった。

そこに、私はツイッターにおける議論の「型」を観るわけだが、結局はその人の思想傾向に合わせて、極端に過去を切り取って、印象を操作しているだけではないのか。所詮、クジラ肉は食材の1つに過ぎない。好きな人間もいれば、キライな人間もいるだろう。ただ、それだけのことではないのか。

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「佐藤垢石」という人がいて、新聞記者あがりの物書きで、釣り師である。私も釣り師なので、以前ナマズ釣りについて調べている時に、彼の文章を見つけて、一時期ハマっていたことがあった。ただ、よほど物好きの釣り師でもない限り、現在彼の文章を読む必要はほぼない。ほぼ、今となっては何の役にも立たない昔の話ばかりである。だが、

鯨を釣る

鯨を釣る

 

▲この『鯨を釣る』という作品は、一読の価値がある。そんなに長い話でもないので、捕鯨問題に関心のある人は、その賛否を問わず読むことをオススメする。Kindleで無料だし、

■佐藤垢石 鯨を釣る

▲青空文庫にも収録されている。

アラスジを述べると、極洋捕鯨会社(現在の株式会社極洋)からの誘いを受けて、佐藤垢石が捕鯨船に同乗し、宮城県鮎川港から出港して金華山沖でクジラを捕るのを見学する…という記録である。

特に、捕鯨を礼賛するでもなく、鵜の目鷹の目で批判するわけでもなく、男のロマンを謳い上げるのでもなく、海洋資源の保護を訴えるのでもなく、淡々と捕鯨に関わり働く人々を描写した内容だ。

初出が1977年というから今から41年前だが、その当時は日本の近海でもクジラが捕れたし、クジラを捕ることが別に悪いことでもなく、普通に日本の日常としてあった…ということが書かれている。

私の母は、そういう時代の中で、若い時期を過ごしていた人なので、いまさらアレコレ理屈を並べて捕鯨批判をされても、逆に日本文化礼賛としての捕鯨を主張されても、よくわからないだろう。

そういうかつての体験者が置き去りにされたままで、恣意的な極論が横行するのは、なんだか変だなぁ…と思いつつ、この数日ツイッターを眺めている。大したオチが用意できなくて申し訳ないが、それが私の正直な気持ちなのであった。

佐藤垢石全集 決定版 全91作品 (インクナブラPD)

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  • 今日の発見 このブログ記事は佐々木俊尚さんの朝のツイートで紹介されて、非常に多くの人に読まれたけれど、真意を理解してくれた人はどれだけいたのか。今の日本で、クジラに関する話は、極端なカタチでの「賛成」か「反対」の立場でしか成立しないものらしい。