▲中国の釣り雑誌の表紙を飾る村田基さん(2010年11月)。
中国と釣り
そんなことを考えている時、中国の釣りブームに気が付いた。
中国では大昔から釣りが行われてきたが、文化大革命以後に弾圧対象となって廃れてしまった。大躍進政策で池や貯水池で養魚が行われるようになったため自由に竿を出せる場所が少ない。波止場や海岸線は立ち入りが禁じられている場所が多いため、釣りがしにくいという事情もある。
しかし、最近は中国が豊かになって趣味が多様化したのと、中国で釣具の生産が行われている(多くは外国企業からの請負と思われる)こともあって、釣具を販売する店が増えてきた。
唯一「反日」の影響を受けない特殊分野
中国では国交回復以前から、日本の釣具が輸入されていたと言われる。現在も中国の多くの釣具店で、日本ブランドの釣具が販売されている。反日デモの時に日本製品不買、日系店舗への襲撃が行われたが、日本の釣具が不買対象になったとか、釣具店が襲撃されたという話も聞かない。
2010年9月の漁船衝突事件の直後、反日機運が高まる中でも、中国の釣り雑誌の表紙に日本人釣り師が出ていたぐらいである。釣りは中国において唯一「反日」の影響を受けず、日本がリスペクトを受ける特殊分野だ。親日的すぎる分野とも言えるが、日本への理解がある中国人が多い。この分野であれば、冷静な中国人の日本観を聞くことができるのではないか…と言う手応えを感じた。
「旅行記」というドキュメンタリー
事件や社会問題を扱う「報道」以外で、中国を伝える方法として「旅行記」があるのではないか、というのは以前から考えていた。しかし、その旅行先の選び方によっては、事件や社会問題にテーマを絞り込んでしまうことになってしまう。それすらもなく、漫然と中国を物見遊山するだけではただの退屈な旅行記になりかねない。
そこで、「釣り」というテーマを中心に据えて、「旅行記」という形式をとった「ドキュメンタリー」の製作が出来るのではないか…と思い始めたのであった。(続く)