黒色中国BLOG

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【緊急事態日記】「噂」を確認するために散歩してみました

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▲この感染者以来、身近に感染したという噂は聞かないのだが、又聞きの又聞きで、我が家の付近でも感染者が増えている…隣町で感染者が出た…清掃の仕事をしている人が突如自宅待機を命じられた…たぶん清掃を受け持っているビルに感染が出たのではないか…それとは別で、どこかのビルで感染者が出た…という噂も聞いた。

とにかく、公式の詳細な情報がないので、噂が噂を呼び、疑心暗鬼になっている…というのがご近所の事情みたいだ。

そこで、ちょっと「散歩」に出てみることにした。

「張り紙」を探して

新型コロナウイルスの情報をいろいろ見てると、「三密」の状況でない限り、そう簡単に感染するものではないらしい。どこかの密閉された空間に入らない限り、「感染地域」を歩いても大丈夫だろう…と考え、マスクを着用して散歩に出た。

感染者が出たという噂の町へ行った。何か、その痕跡でも見つからないかと思ったのだが、それ以前に人影がほとんどない。たまに自動車が走るけど、まるでゴーストタウンを歩いているみたいだった。

某マンションでは、感染者がここにいる!との張り紙があったとか、そういう噂も聞いた。だが、そのマンションへ行っても張り紙はなかった。あくまでも噂なので、そもそも本当にあったのかも不明だが、あってもすぐ剥がされたであろう。

1つ気になるのは、中国だと「コロナを予防するための生活上の注意」みたいなポスターがアチコチにあるものだが、日本でそういうものはないらしい。どこかにあるのかも知れないが、私が見た集合住宅には貼ってなかった。

商店やレストランなどもほとんどが閉まっていた…が、私がいま住んでいる町は、そもそも景気が悪いらしく、以前から営業をやめる店舗が少なくなかった。コロナが原因なのか、不景気が原因で閉めているのか、判断できなかった。なので、理由は明確にわからないのだが、散歩をしていると、少しづつ町が死にかけているのが感じられた。

問題の病院

例の感染者(冒頭のリンクの件)が歩き回ったと言われる地域にも、足を運んで観察してみたが、何の痕跡もなかった。通りに人影はなく、近くにあった神社も参拝者はいなかった。手水舎は感染防止のため水が抜かれていた。

あきらめて帰ろうか…と思った時、例の感染者が駆け込んだ病院が近いことに気づいた。感染者が別の病院に搬送され、検査で陽性が出てから、その病院は消毒され、しばらく(1週間程度とも聞くし、2週間とも聞く)閉鎖されていたそうだが、今はどうなっているのか?

行ってみたら閉鎖はしていなかったが、病院に面した通り側、入り口に近い壁、ガラスの自動ドアの3箇所に、張り紙がされており、「コロナ」の文字は使わないものの、熱だの風邪の症状があって来院する人は事前に連絡を下さい。直接来ないで下さい…と書かれていた。

ようするに、例の感染者の件で懲りて、コロナかどうかは別にして、それらしき症状の人は来るな…ということらしい。わざわざ3つも念入りに張り紙しているのを見て(この3つは非常に至近距離なのだ)、この病院が巻き込まれたトラブルと風評被害の大きさが想像できた。

* * * * *

町全体が、とても静かで、人もほとんどおらず、クルマもほぼ走ってないので、散歩には都合が良かったが、全く楽しくもなく、家に戻るとひどく落ち込んでしまった。

武漢封鎖直後に広東省へ行った時は、所詮他人事だった。現地の人々の深刻さがわかってなかったのだ。なんとか、上手く逃げ切れると思ったし、実際香港が大陸からの旅客を隔離する直前に滑り込むことができた。だが、日本で自分の住む町に感染が及んで、町を散歩してやっと、このウイルスの恐ろしさを肌身に感じるようになった。

テレビやネットを見ていると、布マスクやら給付金の件で、政権の対応を叩いたりで、いつもながら騒がしいが、リアルで町が静かに死んでいくのを見ると、いま日本を飲み込みつつある恐怖の大きさに改めて気づいたのであった。 

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