ツイッターはこの件で騒然となっております。こちらで動画を解析し、ツイッターで連投しましたが、文量が多いので、こちらでまとめ直します。
【目次】
(1)問題の動画
▲FBに上がっているものが一番鮮明ですので、こちらを参考にしました。
拳銃発射の瞬間
▲こちらが拳銃発射の瞬間。黒い服の高校生が60cm足らずの白い棒(材質は不明)で警官に殴りかかり、拳銃を持った腕の袖をかすった後に警官が撃ちます。
出血
▲服の上にドクドクと血が流れるのが見えます。
名前は曾志健
▲ただし、漢字が正しいかは不明のようです。自分で名乗れるぐらいなので、意識は確かなようです。報道によれば高校2年だそうです。
当たったのは胸ではなく鎖骨周辺
▲倒れた状態で服を脱がせ、酸素吸入しながら応急処置をしております。
▲被弾した箇所のアップを見るに、これは胸ではなく鎖骨の下あたり?みたいです。
動けないけど目はハッキリと動いている
▲動画で目の動きをみるに、意識はシッカリしているようです。
腹部が動いているので呼吸はシッカリしている
【動画】警官に撃たれた高校生の腹部をよく見ると、呼吸で動いているのがわかります。#antiELAB#香港反送中 pic.twitter.com/QuhtwnkzVN
— 黒色中国 (@bci_) 2019年10月1日
▲お腹の動きを見るに、呼吸はかなり大きいように見えます。
▲救急車がかけつけて、タンカにのせるところ。
拳銃弾が当たっているので重体には違いありませんが、とりあえず意識はハッキリしているようです。
(2)別角度で撮影されていた動画
He absolutely shot with personal purpose!!! pic.twitter.com/8R3B5TmZa7
— Chris Wong (@ChrisWo54307020) 2019年10月1日
▲こちらの動画で見ると、かなり騒然とした状況が見えてきました。
抗議者の集団に暴行される警官を救うために拳銃を持った警官がやってきた
▲わかりにくいですが、抗議者がたくさん集まっているのは、画面中央付近に警官が倒れているからです(破線)。それを救出するために駆けつけるのが拳銃を持った警官(実線)
撃たれた高校生は警官に攻撃していた
▲救出にかけつけた警官は、白い棒で殴ぐりかかる抗議者に銃を向けています。棒はシャツの袖をかすっただけで、その後、拳銃を発射。
▲抗議者が一斉に逃げ出しますが、撃たれた高校生は後ずさり、路上にかがみ込んでいた警官(破線)にひっかかって転びます(破線左側)。
▲路上にかがみ込んでいた警官はすぐさま逃げ出し(破線)、次は撃たれた高校生を救出するために黄色いヘルメットの抗議者が近寄るも取り押さえられます。
抗議者が逃げ出した直後、火炎瓶による攻撃
▲黄色いヘルメットの抗議者の取り押さえに成功したと思いきや、また警官が銃を向けます(破線)、少し離れた電灯の柱?あたりに火炎瓶を持った男が駆け寄ってきたからです。
▲銃を持った警官に火炎瓶を投げつけると、近くにいる負傷した仲間も巻き添えになると思ったのか、少し後方に投げて、炎上します。
【香港警察 18歳の男子生徒に発砲と発表 自衛のためと釈明も】
— 黒色中国 (@bci_) 2019年10月1日
男子生徒は病院に運ばれた時には意識はあったということです。現在の状況は明らかになっていません。
警察は今回の発砲について「自分の命と仲間の命を守るために発砲した」として、自衛のための発砲だったと釈明https://t.co/jJzOg2ft6F pic.twitter.com/U2afo4s7CI
▲高校生を撃った警官は、「自分の命と仲間の命を守るために発砲した」と言っているようですが、威嚇射撃なしというのはどうなのか。威嚇射撃をしていれば、その時点で抗議者は逃げ出していたかも知れません。実際、高校生を撃った直後に、他の抗議者は逃げ出しているのですから。この点、判断が難しいように思います。
(3)BBCが入手した映像の分析
▲BBC中文版が公開している記事の中の動画が最も鮮明でわかりやすかったので、改めて解説いたしますと
盾を持った警官が抗議者の集団に追跡されていた
▲盾を持った警官が抗議者に追いかけられているところからスタート。
▲盾を持った警官は抗議者の一人に捕まって、路上に押し付けられ、続々と仲間が集まってきます。
抗議者に捕まり、集団暴行を受ける警官
▲この時、すぐそば(右)に警官がいたのですが、抗議者は転倒した警官に集中して、気付いていない?みたいです。赤線で囲んだ警官の存在をよく覚えておいてください。
▲そして転倒した警官を袋叩きに。この左手に青い盾を持っているのが、後で警官に撃たれる曾志健君です。
▲たぶん、中央と右の抗議者が使っているのは鉄パイプかな。左の曾志健君が持っているのは、細めの棒で、これが鉄パイプかは不明。
抗議者の武器は鉄パイプの他にカナヅチも
▲寄ってたかって警官に暴行していますが、よくみるとカナヅチで殴りかかっている人もいます。非常に危険な状態だったわけです。
曾志健君が撃たれた理由
▲この時、曾志健君が少し遠くを見ているのがわかります。
拳銃を持った警官が接近するのを目撃したからです。
▲拳銃を持った警官は、転倒して袋叩きにされている警官を助けるために近づいて来たのですが、最初から拳銃を抗議者に向けて構え、威嚇射撃などは一切する様子もありません。「仲間を撃たれたら大変だ!」とばかりに曾志健君が棒をバックハンドで構えて、拳銃を持った警官に接近します。
▲曾志健君の接近に気づく警官。曾志健君は透明のマスクをした抗議者の後ろにいるので見えません。ちょっとだけ曾志健君の持つ棒が見えます。
▲たぶん、曾志健君は仲間に向けられた拳銃を払うため、棒をバックハンドに構えたものと考えられます。しかし、突如警官が曾志健君に拳銃を向けたため、間合いが近くなりすぎました。
▲曾志健君の棒は警官のシャツの肘あたりを虚しくかすめてヒットせず。そして警官が曾志健君に向けた拳銃を撃ちます。
この状況から判断すると…
- 同僚を助けるためとはいえ、なぜ警官は威嚇射撃をせずに最初から抗議者に拳銃を向けたのか…という疑問。
- この時点で、拳銃を持った警官の身には危険は及んでいないので、拳銃使用は自衛目的にはならない。
- 曾志健君は仲間に拳銃を向ける警官をみつけ、仲間を助けるために警官へ接近。
- 曾志健君は、仲間に向けられている拳銃を振り払うつもりで棒を振った。
- 曾志健君の攻撃は不発に終わるが、警官は曾志健君に向けて引き金を引く。
…なので、最初から警官は撃つ気マンマンで、乱闘に近づき、それを阻止されそうになって、曾志健君を撃った…ということになります。
袋叩きにされている警官を助けるため…とはいえど、かなり乱暴すぎる対応だったのは否めない。そしてあの乱闘の中で拳銃を撃てば、仲間の警官に当たっていたかも知れない。
曾志健君は、仲間が撃たれるのを止めるために立ち向かったのであり、何もしてない警官に襲いかかったのではありません。
(4)曾志健君のCTの映像
曹ではなく曾らしい。
— think_bamboo (@BambooThink) 2019年10月1日
CTの写真が流出してた、tg groupで見つけた物なので、あくまで参考に: pic.twitter.com/GTFpaRwxMz
当初、「曹」と勘違いしていましたので、ご指摘を受けて訂正しました。すみません。
ツイートに添付されている画像を見ると、弾丸は肺を上から下へ貫いて心臓の下の大動脈(aorta)の近くで止まっています。既に手術を終えたとの情報もあるので、無事摘出できたものと思われます。
(5)盾を持った警官はなぜ追いかけられていたのか?
「警官を追いかけ回して、集団でフルボッコにしていたのだから、撃たれても当たり前だろう…」という警察擁護の声も聞かれますが、こうやってシツコク映像を検証した私からすると、ちょっと変な気がします。
▲というのも、この盾を持った警官。なぜこんなに追いかけ回されているのでしょうね?この動画は始まる前に一体何があったのでしょうか?
▲盾を持った警官を捕まえてからも、すぐ側には別の警官がいました。無差別に警官を襲撃しているのなら、赤線で囲った警官の方に襲いかかっても良さそうなものですが、次々に集まってくる抗議者は、盾を持った警官だけを集中攻撃します。なので、動画が始まる前に、盾を持った警官が何かやったんじゃないのかな…と想像されるわけです。
無論、それで抗議者の暴力が正当化されるわけでもないでしょうが、警官の行き過ぎた暴力が抗議者の抵抗につながり、その連鎖の中で、今回の拳銃発砲が起きた。動画の一部だけを切り取って誰かを吊るし上げるのではなくて、もっと広い目で事実を判断する必要がある。そして、今回の拳銃発砲の件を見ても、独立調査委員会を設ける必要があるのでは…と、黒色中国は考えます。
- 作者: 照井資規
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▲今後、香港を旅行するにあたって、こういう本の1つでも読んでおいた方がいいんじゃないかと冗談抜きで考え始めました…
▲防弾チョッキも検討してみましたが、こちらは7.62mm弾にも対応できるとか。その割にリーズナブル(2万円台)なので、これは真剣に検討してもいいかと思いました。
ただ、これを着用or所持して空港を通過できるのか…という疑問がありますけどね。この件は今後どこかで検証してみようと思います。