黒色中国BLOG

中国について学び・考え・行動するのが私のライフワークです

中国人の釣り客7名が台湾統治の島に侵入、逮捕される

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7名の中国人がモーターボートに乗って、台湾統治下にある烏キュウ郷という島に上陸し、釣りをしていたので逮捕された…というニュースがありました。

釣り人の私としても、ちょっと気になるので詳しく見てます。

「烏キュウ郷」とは?

まずは場所の確認ですけど、

こんな場所ですね。泉州市と福州市の間、莆田市の沖合にある小さな島です。

BBCの中文ニュースのタイトルでは、「金門外島」とありましたので、アモイに近いのかと思いましたが、実際は100km以上離れています。

金門島と烏キュウ郷は、元々全く別の行政区域だったけど、国民党政府が劣勢になって、この島の周囲が中国共産党の統治下となった時に、金門県の管轄にしたようです

▲こちらにその経緯が細かく書かれています。

ニュースの詳細

BBCの報道とは別に、他でも既に報道されていました。

▲こちらは写真も豊富です。写真を見る限り、普通の釣り客だったようです。

内容を要訳すると…

  • 5月24日、7名の中国人がモーターボートで台湾統治下の烏キュウ郷に上陸し、救援要請をした。台湾の海巡部門が海軍陸戦隊烏キュウ守備隊の協力を得て逮捕した。
  • 台湾の報道によれば、海巡部門は烏キュウ郷の住民の陳さんからの通報を受けた。
  • 烏キュウ郷は大きく分けて「大坵」と「小坵」の2つの島があり、中国人が上陸したのは小坵の方。
  • 上陸したのは7人のうち4名。
  • 「要求协助处置」(協助処置を要求)「请海巡署协助处置」(海巡署に協助処置を頼んだ)とあるので、釣り客は何らかのトラブルに遭ったのかも知れませんが、その詳細については書かれていません。

ウィキペディアを見ると、

烏坵港は水深が浅く、喫水の深い軍艦では座礁の恐れがあるために満潮時刻に到着するダイヤとなっており、また満潮時でも直接の接岸が不可能なため、ランチ艇で艦と桟橋を連絡している

…とあり、無理に磯へ接近してスクリューを損傷したのか、遠出しすぎて燃料がなくなったのでしょうか。

最近は、中国でも釣りが流行っておりまして、浙江省から福建省にかけてのあの地域は、島がたくさんありますから、私も機会があれば行ってみたいと思っていたところです。

同じような目に遭わないように気をつけようと思います(笑)

追記:3つの気になること

昨日このニュースを訳した後で、忙しかったので、気になりつつも書けなかったことが3つあるので、追記しようと思う。

1:何を釣ろうとしていたのか?

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▲今回、中国人の「釣り客」7名が乗っていたのはこんなに小さな船。これに7名も乗り込んだら船上で釣るのは狭すぎて無理。たぶん、この船で移動して、島にあがって釣りをするようなやり方なのでしょう。

▲こちらのニュースを見ると、釣具の写真があった。

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▲タモ網の玉枠のサイズは…こんなものなのかな。このタモ網はちょっと安っぽい感じ。しかも、それほどサイズも長く伸びないような…。磯用のものだと5mとか8mとか普通にある。磯は足場が悪いことが多く、長い柄が必要になるためだが…このタモ網は伸ばせば8mとかになるのだろうか。

私は磯釣りをしないし、この地域で釣りをしたこともないので、正確なことはわからないけれど、これらの「釣り客」は何を釣る気でいたのだろうか。

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▲ライフジャケットは真新しい感じ。手前のものはちょっと色あせた雰囲気だけど。私が使っているライフジャケットは2年も使えば、使用感たっぷりで、あちこちほつれてきたりするんですけどね。

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▲パッカンとかクーラーも真新しい感じで、汚れとかキズも見当たらないのですね。

2:船に掲げられた五星紅旗

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▲発見者の島民が撮影したという逮捕前の写真をよーく見ると、「釣り客」が乗ってきたボートには、五星紅旗が掲げられているんですね。

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▲台湾の海巡署が報道機関に提供した写真を拡大してみました。五星紅旗は外されていますが、旗竿が残っています。

中国って、こういう小さいボートにもいちいち五星紅旗を取り付けなきゃいけない規則があるんでしょうか…

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▲こちらは福建省の港に停泊されてる漁船。今回逮捕された人たちが乗っていたボートと同じぐらいのサイズですが、五星紅旗は見当たらないし、そもそも旗竿もないようです。使わない時は旗竿ごと外しておくようになっているのかな…

3:他の事例を探してみると…

烏キュウ郷は、福建省の沖合30kmぐらいの位置にある島なので、たぶん他にも中国の船が接近した事例があるはず…と思って探してみました。

▲こちらは今年1月27日に、中国の漁船「福遠漁9601号」が烏キュウ郷で座礁し、船員1名が溺死、4名が救助された…という記事。

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ウィキペディアの烏キュウ郷の説明にもありましたけど、水深が浅いのでうっかりしていると座礁しちゃうのですね。

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▲これはたぶん、潮が引いた時に撮影したのでしょう。船の一部が凹んでますね。

記事によると、烏キュウ守備大隊が海巡署第三海岸總隊烏キュウ安検所に通報し、救援にあたり、救出された4名は4日後の1月31日に紅十字会の協力を得て、「小三通」を通じて中国へ帰った…とあります。こちらのケースでは、海軍陸戦隊が出動した…とは書かれていません。

つまり、金門島から船でアモイ経由で大陸へ帰った…ということですね。この4名は逮捕されていません。

なぜ今回の「釣り客」は陸戦隊まで出動して「逮捕」され、厳重な警護で護送されるのか

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7名大陆人金门外岛钓鱼 被台湾海巡部门扣留(组图)_新闻频道_中华网

今回の「釣り客」は、護送の様子も随分と物々しいです。

福遠漁9601号は何かの手違いで座礁したケース。ボートの釣り客は故意に接近して何らかのトラブルがあって烏キュウ郷に上陸し、救援要請をしたケースですから、似たような感じながら若干違う。ただ、やっぱり気になるのは「国旗」なのですね。

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この「釣り客」はたぶん「釣り」以外の「目的」があったのではないか。だから、海巡署の職員だけじゃなくて、海軍陸戦隊まで出動して逮捕されたのではないか…と気になったわけです。