19日:米軍のB52が南シナ海を飛行
— 黒色中国 (@bci_) November 21, 2018
20日:習近平が中国の国家主席としては13年ぶりにフィリピン訪問。同日、米シンクタンクが南シナ海に新設された中国の軍事用探知装置の情報を公開
21日:台湾が太平島で射撃訓練を開始
…最近の南シナ海って結構緊迫感あるけど、日本で話題にならないのはなぜだろう?
こちらのツイートが地味ながらそこそこウケました。
ところで、「21日」の箇所に出てくる「太平島」がこの数年…特に最近は騒がしくなってきている…が、あまり日本では報じられない。
「そりゃ、台湾のことだからね」
…と思うかも知れませんが、実はこの太平島…元々は日本の領土だったのです。
【目次】
【太平島】関連写真資料
▲2015年4月時点での状況
▲2006年から2015年にかけての変遷。
▲南沙諸島の各島嶼の大きさの比較。ちなみに、左の大きな3つの島…美済島,永暑島、渚碧島は中国が実効支配しています。この3つの島は中国が埋め立てで拡大した、いわゆる「人工島」でして、自然に出来た陸地が最大のものは太平島となります。
太平島の歴史
手短にザックリと説明すると、太平島とは南シナ海に浮かぶ「岩礁」で、戦前は日本とフランスがこの島の領有権を争い、日本の領土に編入されたのもつかの間、終戦後は中華民国の領有となったが、中華人民共和国とベトナムとフィリピンが今も領有権を主張している…という経緯である。
ただ、2016年のハーグ仲裁裁判所判決(フィリピンが中国を相手に提訴)の際、太平島を含む南沙諸島にはEEZを設定できる「島」ではない…という判決が出てしまう。
太平島は中国が占領していないので仲裁とは本来無関係なのだが、国際機関から領土が「島」であることを否定されてしまった台湾では大騒ぎになり、以来実効支配の強化に努めている…というわけだ。
私がこの件に興味を持つ理由は主に3つあって、
- 台湾が実効支配強化のために繰り出してくる施策は、日本にとって教訓になる(日本と違って台湾の「実効支配強化」は前のめりで積極的なのだ)。
- 今後、中国が南シナ海での影響力を拡大させる際に、たぶん太平島が占領される可能性が高い。太平島は南沙諸島で最大の陸地面積を持っており、日本もかつて潜水艦の基地を置いていた…軍事的な価値が非常に高い「島」なのだ。
- 太平島が「島」か「岩」かという問題は、日本の沖ノ鳥島に飛び火する(理由は後述)。
…というわけで、太平島の動向はずっとウォッチしているのだが、最近は特に動きが顕著になってきた。
これは、2016年のハーグ仲裁裁判所判決の他に、冒頭で挙げたツイートでもわかるように、中国の南シナ海侵略が本格化し、米国も本気で乗り出してきたのが原因だろうと思われる。
最近の太平島を巡る動向
▲2016年7月の仲裁判断以後の経緯と日本の沖ノ鳥島問題との関係を理解する上でこちらの記事は非常にわかりやすいです。
▲2016年7月の仲裁の翌月に台湾の閣僚が太平島を視察した…という記事。日本に置き換えると、閣僚が魚釣島や沖ノ鳥島に上陸するような話です。更に良く読むと仲裁直後に与野党の国会議員8名が太平島を訪問しているわけで、台湾の「実効支配強化」って日本とは完全に真逆なわけです。
2016年9月
【南シナ海問題】『太平島に新たな軍事施設を建造か?=台湾』
— 黒色中国 (@bci_) September 22, 2016
太平岛卫星空照图 赫见疑似军事设施 https://t.co/7sNFxE88p0
台湾が実効支配する太平島は今年7月の仲裁判決で排他的経済水域を持たない「岩」とされたが、蔡英文の新政府は、新たな建造物を構築しつつある。 pic.twitter.com/QJMjWXWBoD
【緊迫・南シナ海】『台湾、太平島に中国軍監視レーダー? 現地紙報道、「米国製」で早期警戒』台湾が南シナ海の南沙諸島で実効支配しているイトゥアバ(太平島)で、移動式の早期警戒レーダーを設置するための建設工事を行っている https://t.co/Vtyzyw1kAl
— 黒色中国 (@bci_) September 30, 2016
2016年11月
【台湾、南シナ海の太平島で救助訓練実施へ 今月末】 台湾の海岸巡防署(海上保安庁に相当)は20日、南シナ海の南沙諸島で台湾が実行支配している太平島周辺で今月末、救助訓練を行う計画だと明らかにした。訓練には海軍も参加する見通しという https://t.co/lVaai2HStZ
— 黒色中国 (@bci_) November 21, 2016
2018年7月
▲馬英九政権時の総統府のスポークスマンが、ワシントンにあるシンクタンク・台米関係研究センター(ITAS)での講演で「蔡英文相当は太平島を訪問すべき」と発言。陳さんは現在ITASの研究員なんですね。
2018年9月
【中国軍が岩礁制圧を研究】海軍内で権威ある専門誌の昨年6月号は、海軍陸戦隊幹部による制圧作戦研究を掲載。「敵」は明示はされていないが、対象としているのはサウスウエスト島(ベトナムが実効支配)、パグアサ島(同フィリピン)、太平島(同台湾)などの岩礁がある海域 https://t.co/UwRScXzI3d
— 黒色中国 (@bci_) September 1, 2018
太平島は南沙諸島中、自然形成された陸地面積が最大の海岸地形、パグアサ島は南沙諸島で第二の面積、サウスウエスト島は面積0.12平方kmですが、結構立派な軍事基地になっていたりします(下図参照)。
▲これで見ると、2005年から2013年の8年でベトナムは南子島を発展させたわけですが、こうした動きは日本で報じられることもなく、中国の動きだけが「脅威」として報道されるものの、中国以外の動向も並行して理解しておかないと、南シナ海で何が起こっているのかわからない、中国だけが悪いことをやってる…みたいな印象になるわけです(※読解力のない人のために注釈すると、これは中国を擁護しているのではありません)
2018年11月
【米艦の南シナ海・太平島への寄港「人道支援なら可能」=国防相/台湾】政府は太平島を南シナ海における人命救助の拠点とする政策を掲げており、海巡署(海上保安庁に相当)が同島で医療設備の拡充を進めている。 https://t.co/S8U8xt6DzE
— 黒色中国 (@bci_) November 21, 2018
▲最近は「米軍艦の太平島寄港」というのが、実効支配強化の次なる施策として、大きな争点になっているようです。
【太平島挖石油解決負債?經部:不知有無經濟價值】雙雄辯論會,韓陳激烈交鋒,其中國民黨高雄市長候選人韓國瑜,拋出要開挖太平島石油解決高雄2千多億負債,他強調不是天馬行空,是過去經濟部也核准中油2次探勘,對此經濟部證實… https://t.co/w30se4Zydy
— 黒色中国 (@bci_) November 21, 2018
11月24日に投票が行われる高雄市長選の候補者である国民党の韓国瑜氏が太平島で石油を掘って、2千億以上の巨額な債務を解決する…と弁論会で主張した…との報道。
▲こちらに図説されていますが、高雄市の負債って飛び抜けて高いのですね。
太平島は高尾市の管轄になっているため、こういう主張が出てくるわけです。
【閲覧推奨】『中国にボディーブローを与えた台湾軍の「禁じ手」』■中国との協調姿勢をみせる日本とはあまりにも対照的■米国から退役艦を直接輸入■南沙諸島「太平島」における砲撃訓練■台湾と日本の好対照の外交能力https://t.co/L7CHCHy90H
— 黒色中国 (@bci_) November 21, 2018
▲こちらは太平島だけじゃないけど、面白い記事でした。
【お知らせ】11月21日から23日まで、南シナ海の太平島(中華民国が実効支配)周辺海域にて、台湾海岸巡防署の射撃訓練が実施されます。太平島周辺を航行される場合は、演習海域に接近しないで下さい。海岸巡防署によれば、これは軍事演習にはあたらない定例の訓練になるそうです。 https://t.co/rc3R8TSq2O
— 黒色中国 (@bci_) November 21, 2018
「射撃訓練」と書くとショボいですが、原文タイトルを見ると「砲撃」とあります。
映像資料
▲中華民国外交部(外務省)が製作したプロモーションビデオ「南シナ海・太平島のあゆみ」。
▲実効支配強化のために、台湾内外のメディアに太平島を公開。日本の共同通信が製作したビデオ。日本に置き換えると、魚釣島に日本と海外のメディアを呼んで取材させたような話です。
* * * * *
というわけで、日本語で出てくる情報が少ない太平島事情ですけど、中国語の情報も交えて追っかけていると結構面白い…ところが最近になって面白がってばかりではいられない、緊迫した状況になりつつある…というわけでした。今後も継続して、太平島の情報をツイートしようと思います。
※ツイートしても太平島の情報は見てくれる人があまりいないので、今回ブログでまとめて紹介してみました(^^)
- 今日の発見 太平島を通じて、台湾問題と南シナ海問題はリンクしている…ただし日本ではほとんど報道されない。