黒色中国BLOG

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ゆたぼんみたいな子供は昔もいた…中学3年間不登校だった私の友人について

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以前から、ゆたぼんさんは、ツイッターでも話題になっていたが、あまり興味がないので、ずっとどういう子供なのか知らなかった。ただ、今回は朝からやたらとツイッターで見かけたので、上掲の記事と関連のツイートを読んでみたら、別に驚くほど型破りでも、ダメダメでもなかったので、「なんだこりゃ」という感想しか持てなかった。

私が子供の頃から、不登校の子供はいたし、私が親しかった友人も中学生の3年間、ほぼ学校に行かなかったのである。その件についてちょっと触れてみたい。

【目次】

中学校に一切通わなかった友人

私が中学生の頃、友人が不登校だった。3年間ほぼ中学に行かなかった。最初の入学式の後、数日で行かなくなり、卒業式には参加せず、卒業証書だけもらいに学校へ行った。その時私は一緒に彼と学校へ行ったので覚えているのだが、証書を受け取ってすぐ帰ったので、学校にいたのはたった数分だけだった。

3年間学校に通わなかったのに、どうやって私と友人になったのかと言うと、彼には弟がいて、元はそっちと友人だったのである。弟と仲良くなって、家に行ったら、不登校の兄がいた。ただ、この兄の方がずっと面白い人間だったのである。

彼は学校に行くのがイヤなのだが、消極的に家にこもっているというよりも、確信的に学校に行かない、確信的に家にずっといる人で、朝から晩までテレビの前に座っていた。ずっとNHK教育を見ていた。時折ニュースやアニメを見て、ファミコンのゲームをやったけど、基本はNHK教育しか見なかった。NHK教育は幼稚園児向けの番組もやっているが、高校生向けの番組もある。大人向けの番組もある。それを全部見るのである。

新聞も隅々読んでいた。難しい本も読んでいた。生物と社会学、哲学に関心が高かった。理解力とか情報の咀嚼力が非常に高かった。思考力もずば抜けていた。同じ中学生なのに、ずっと年上の大人みたいに思った。

幕末の志士や、明治期の偉人や軍人などが子供の頃から漢文を読み書きしたり、難しい学問を理解したりするのを不思議に思うけど、現代みたいに子供を子供扱いせずに、学びの機会を与え、情報を与えると、子供でも知識を吸収して、そんじょそこらの大人よりもシッカリした知見を持つようになるのだろう。

友人はゲームが好きだった。テレビ、新聞、本などの「静的」なメディアと違って、ゲームは彼の日常の中で唯一「動的」な情報…インタラクティブなものだったからだろう。そして、彼が関心を持ったのは、どうやったらゲームを作れるのか、ということである。

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そこで、彼はファミリーベーシックを手に入れた。

ファミリーベーシックとは、ファミコンにつないでBASICのプログラムが組めるものである。

これでカンタンなゲームが作れた。

彼は中学校にはほぼ通ってないにも関わらず、BASICを習得し、ファミリーベーシックでのプログラミングの細かいテクニックについて理解していた。私は彼の話を聞いても全く理解ができなかった。

真面目すぎて学校に向かない子供

あれから数十年過ぎて思うのは、彼は頭が良すぎたのだろう。学校で、制服を着せられたり、どうでもいい規則を押し付けられたり、教師に殴られたり、生徒同士のいじめや、くだらない人間関係に苦しめられるよりも、家で朝から晩までNHK教育をみながら、自分の好きなことを学んで、好きなプログラミングをやりまくる方が、ずっと効率的で魅力的だったのだろう。学ぶことに貪欲で、私の周囲の誰よりも、勤勉な人間だった。むしろ、そういう人間だからこそ、彼は学校にはいたくなかったのではないか。

私も学校が嫌だった。学校が苦痛だった。できれば行きたくなかったが、登校しないと父親に殴られるので、イヤイヤ行っていた。仕方がないので、学校で授業時間に自分の好きな本を読んでいた。そういう子供だったから、不登校の彼とは気持ちが通じていたのだろう。

動画「中学校へ行くかについて」

このブログを書くために、問題の動画もちゃんと視聴したのだが、ツイッターでゆたぼんさんを叩いている人の大半が、この動画をちゃんと見てないのでは?と思った。以下、私の感想を書き出すと、

  • 学校に行かなくても、12歳でこれだけシッカリ話せるのはスゴイ。
  • 彼は「生徒心得」やニュースをスラスラと読み上げている。それらに使われている漢字も理解しているようで、読み方が非常に上手い。これは内容を理解している人の読み方である。
  • パソコンもちゃんと使えているみたい。Macbookを操作している。
  • 小学校1、2年の時は学校に行ってたらしい。
  • 小学3年の時に「周りの子たちがロボットに見えて」と言っているが、私はそれを中1の時に感じた。
  • 小3の時に、教師から暴力を振るわれたが、教師はそれを認めず「やってない」と嘘をついた。それが不登校の原因になっている。
  • 小4で大阪から沖縄に転校してからは、「行きたい時に行く」という自由登校であった。
  • 制服に関する部分は長いので全部書かないが、制服に対する自分の考えを、ニュースを引用しながら、12歳でもこれだけシッカリ主張できるのだからエライではないか。
  • ゆたぼんさんは、学校には行ってないが、ホームスクーリングとかフリースクールはやっているらしい。
  • 話す時の「ハンドアクション」が巧み。こういうのがちゃんと出来るのは、大人でも少ない。
  • 「こんなふうに子どもの自殺がどんどん増えてしまってる国はどう考えてもおかしい」…正論です。ゆたぼんさんのやり方が唯一の正解だとは思いませんが、これについては異論がありません。

この7分あまりの動画を見てわかったのは、

  • ゆたぼんさんは、「不登校児」として有名であるけど、正確には今まで「行きたい時に行く」という「自由登校」形式に加え、ホームスクーリングやフリースクールで教育を受けてきた子供である。
  • ゆたぼんさんの不登校の原因には、教師の暴力と不誠実がある。不登校児が責められる反面、この手の教師に寛容なのは日本社会の面白いところだ。こうした日本社会の「体質」が、不登校を増やしているのではないか。 
  • 動画を見ても、ゆたぼんさんは12歳の子供としては、十分過ぎるほど文章やニュースが読めて理解できるし、自分の考えをシッカリと言葉にして、身振り手振りも巧みに主張できる。
  • 彼は「不登校」かも知れないが、それで彼が不幸なようにも見えない。むしろ、一般的な12歳よりもずっと充実しているのではないか。

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▲ゆたぼんさんのユーチューブチャンネルより。

ネットのニュースなどは、PV数稼ぎのために、「中学校に行く気はありませーん!」「不登校を宣言」というところを切り取って読者を「釣る」わけだが、ゆたぼんさんの動画で主張している核心部分は、「子供が死にたいって思わないような国にしていかないとアカン」ということではないか。子供がこれを言わなきゃいけない切ない現状があるのに、それをネットメディアに釣られるままに袋叩きにする大人がいる日本。果たしてどちらが「まとも」なのか。

多様な人間を包容できる社会の方が良い

私が中国にいると、小学校もロクに通っていないのではないか…という人をよく見かけた。

そもそもその地域には学校が一切ない…ということもあった。

このチベット族の村がそうだった。

家庭の事情で中学に通えず、15歳ぐらいでレストランで働いている子供、文字が読めない人、書けない人もよく見かけた。

貧富の差に関係なく、誰もが学校に通い、最低でも義務教育…高校ぐらいは卒業できる社会の方が良いだろう。

ただ、それと同時に、学歴や学力を理由に排除されない社会、たとえ字の読み書きすら出来なくても、就職できたり、生きる場所を見つけることができる「包容力のある社会」であることも重要ではないだろうか。

日本は、中国よりも豊かで、成熟した社会である。

今の日本に必要なのは、どんな人にでも無理矢理に1つのやり方を強制することではなく、より多くの選択肢から、自分にあった学び方、生き方を選べる社会ではないだろうか。

「友人」のその後

冒頭の不登校の友人は中学「卒業」後、夜間高校に通った。その頃から付き合いが薄れて会わなくなったのだが、10年ほど前に機会があって再会した。今はプログラマーになって、どこかの会社に勤めて、部下もいて、近々結婚するとか言っていた。

中学校に通わなくても、ちゃんと会社員にもなれるし、昇進もするし、結婚もできる。普通に家庭も持てるのだ。

友人が不登校の時に、周囲の子供や大人の目は厳しかった。ロクな大人になれないとバカにしていた。ただ、実際はそうはならなかった。

「そんなことでは社会で通用しない」という人は多いが、それらの人が考える以上に、社会は懐が広く、どうにかなってしまうものなのだ。むしろ、他人と違うことをやっていると、「社会で通用しない」と言って排除しようとする人たちこそが、生きづらい社会を作っているのではないだろうか。

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▲近年話題の台湾のオードリー・タンさんも、中学中退ですね。中学通わなければ、みんな立派になる…というわけではないでしょうけどw、子供の状況や成長に合わせて、自由な選択が出来る社会の方が良いのではないでしょうか。