沖縄の歴史や文化を知る上で、あまり堅苦しくなく、気軽に読めるものはないのかな…と思っていたら、面白いツイッター・アカウントをみつけた。
▲こちらでは、『マンガ沖縄・琉球の歴史』の中身を少しづつ、ツイートで紹介してくれている。
その中に、気になる話があった。
ゆる琉球史マンガ(68)「シマのテーゲー飯(1)」 pic.twitter.com/BPw8zMJs64
— ゆる琉球史マンガbot@単行本発売中 (@mangaryukyu) 2016年9月23日
ゆる琉球史マンガ(69)「シマのテーゲー飯(2)」 pic.twitter.com/lOfjaopbXD
— ゆる琉球史マンガbot@単行本発売中 (@mangaryukyu) 2016年9月24日
▲「シマのテーゲー飯」という項目で、「カタツムリ汁」という料理が紹介されているのだ。
マンガを読む限り、美味しそうだ。
今でもカタツムリ汁を出す沖縄料理店はあるのだろうか?
【目次】
- 沖縄のカタツムリ汁
- 香港のアフリカマイマイ
- 中国における食用カタツムリは11種類…その内2つはアフリカマイマイ
- 世界で最も一般的に食べられているカタツムリはアフリカマイマイ?
- アフリカマイマイをこっそり養殖?
- 中国人は何でも食べるけど、好き嫌いはある。
- 関連記事
沖縄のカタツムリ汁
マンガでは1970年代までは食べられていたというから、今でもカタツムリ汁を出す沖縄料理屋があるかも…と思って検索するもヒットなし。
▲マンガでは、カタツムリの種類について書いていなかったが、沖縄在住の人が運営するサイトで、アフリカマイマイを食べる記事はあった。
このサイトでは他のカタツムリも食べているが、こういう記事が成立することから考えて、今の沖縄でカタツムリは品種と関係なく、あまり一般的には食べられていないのだろうし、提供する店もないものと思われる。
香港のアフリカマイマイ
先程の記事で思い出したが、2年前、香港に居た時、住宅街の公園で、大きなカタツムリをみつけて驚いたことがある。
好奇心旺盛な私としては、捕まえていじって遊んでみたかったが、先を急いでいたので、とりあえず写真を撮っただけで立ち去った。
その写真をツイートした後に、フォロワーの方から教えてもらったのだが、このカタツムリは「アフリカマイマイ」というもので、危険な寄生虫を持っているので触れてはいけないらしい。
しかし、先程の記事では美味しく食べているので、取り扱いに注意して食べれば問題ないのだろう。
それにしても…私は中国で色んなものを食べてきたつもりだが、今までカタツムリだけは食べたことがない。
二本足は親以外、四本足は机と椅子以外なんでも食べる中国人が、カタツムリを食べないわけがないだろう。
それに、アフリカマイマイは、香港の住宅付近の公園で普通に生息しているわけで、たぶん大陸にもいるだろうし、そうであれば捕まえて食べている中国人がいるはずだ。
中国における食用カタツムリは11種類…その内2つはアフリカマイマイ
▲こちらに現在、中国で食用とされているカタツムリの解説があった。
- 褐云玛瑙蜗牛(これはアフリカマイマイらしい)
- 高大环口蜗牛(中国の草むらにいる一般的なもの)
- 海南坚蜗牛(海南坚螺の名でウィキペディア中文版に解説あり。広東、海南、広西に生息)
- 皱疤坚蜗牛(皱疤坚螺の名で百度百科に解説あり。漢方薬に使われるようだ)
- 江西巴蜗牛(百度百科に解説あり。中国各地に広く生息する)
- 马氏巴蜗牛(百度百科に解説あり。吉林、遼寧、長白山に生息)
- 白玉蜗牛(百度百科に解説あり。アフリカマイマイの一種)
中国で食用にされているカタツムリは11種類との情報であったが、紹介されているのはこの7種だけであった。
しかも、1番目の「褐雲瑪瑙蝸牛」と7番目の「白玉蝸牛」はアフリカマイマイのことなので、中国ではしっかり食用として定着している…ということなのだろう。
世界で最も一般的に食べられているカタツムリはアフリカマイマイ?
先程の中文記事の続きを読むと、アフリカマイマイの解説に次のような記載がある。以下要訳すると…
瑪瑙蝸牛
- 台湾人は「露螺」と呼び、広東一帯では「東風螺」と呼ぶ。
- アフリカ東部のマダガスカル島の原産。
- 世界最大のカタツムリ。故にアフリカマイマイ(非洲大蝸牛)と呼ばれる。
- アフリカ西部地区、特に黄金海岸の居民は、カタツムリを唯一の動物性蛋白質としている。
- この種のカタツムリは肉質が美味であり、欧米のシェフから大変人気があり、アフリカマイマイは現在世界で主に食べられるカタツムリとなった。
- 中国で普遍的に養殖されている品種は白玉蝸牛である。肉が雪のように白いためこの名がついた。
- 白玉蝸牛は中国で特殊な動物の1つであり、特殊価値、特殊栄養、特殊風味、特別用途を備えている。
- 肉質はよく肥え太って、栄養豊富、高タンパク、低脂肪、20種類のアミノ酸を持ち、宇宙飛行士とスポーツ選手の最良の滋養補給品となっている。
- 白玉蝸牛は瑪瑙蝸牛の変異品種である。養殖方法は基本同じだが、要食事の衛生条件は更に高いものが要求され、販売される際の価値も高い。
こんな風に書かれると、アフリカマイマイはとても美味しく良いもののように思えてくる。
ところが、百度百科でアフリカマイマイの解説を読むと、日本と同じく危険な外来生物として紹介されているし、食用も薦められていない…一体どういうことなのか?
アフリカマイマイをこっそり養殖?
上掲の百度百科のアフリカマイマイに関する紹介の中で、福建省の福州で巨大カタツムリが発見された…との記載がある。ここを要訳すると…
- 2014年7月、福州市銅盤路の付近で、1匹の巨大カタツムリが目撃された。
- 専門家の鑑定によれば、これはアフリカマイマイであった。
- 1980年代、かつて福建では養殖がされていたが、禁止された後、養殖業者がアフリカマイマイを野外に放棄した。
- これらのカタツムリは破壊力が強く、500種類の作物に危害を及ぼし、コンクリートでも食べてしまう。
- 結核と脳膜炎を媒介するため、手で触れてはならず、食べてもいけない。
- 中国では養殖が禁じられたが、この度,福州で発見されたのは、こっそりと養殖されているものと疑われる。
情報を整理すると、アフリカマイマイは「中国外来入侵物種リスト」(中国外来入侵物种名単)にも加えられ、病気を媒介するので「中国国家出入境二類検疫性有害生物」(中国国家进出境二类检疫性有害生物)にも指定されているけれど、どちらかと言えば、農作物への被害が甚大なために危険視&禁止されているものであり、病気を媒介云々は二の次で、こっそり養殖する人がいるのは、これが食用として取引されているからだろう。
▲白玉蝸牛の養殖に関するサイトもあるので、中国でアフリカマイマイの養殖が完全禁止になっているのではなく、一部の業者には許されているのではないだろうか。
百度で「白玉蝸牛価格」で検索すると、たくさん出て来るし
▲アリババでも販売されている。
中国人は何でも食べるけど、好き嫌いはある。
アフリカマイマイは美味とされながらも、中国では危険な動物として指定を受けており、一般での養殖は禁じられている。それでも養殖のサイトがあったり、アリババで販売されていたりするのは、主目的としては欧米への輸出があり、一部が中国に流通しているんじゃないかと思われる(アリババを見ても、カタツムリは「フランスのエスカルゴ」(法式焗蝸牛)として売られているケースが多いようだ)。
アフリカマイマイ以外の食用カタツムリもあるものの、私はカタツムリ料理を中国で見かけたこともない。市場で売っているのも見たことがない。
百度で「蜗牛能吃」(カタツムリは食べれる?)で検索すると、この質問をしている中国人の書き込みがたくさんヒットする。それらを読むと、漢方薬に使用するとの記載、野生のものは寄生虫がいるから危ないとの警告などが多い。たぶん、今の中国人にとっても、カタツムリはあまり馴染みがない食材ではないだろうか。
▲「白玉蝸牛は一斤幾らですか?」との質問を見ると、
市场平均价5元/斤,另外白玉蜗牛在中国没有市场,白玉蜗牛的肉有一种象蚯蚓一样的土臭味,中国人非常讨厌这种味,不爱吃,在国内无市场。
市場平均5元/斤だが、白玉蝸牛は中国に市場がなく、白玉蝸牛の肉はミミズのような土臭さがあり、中国人は非常にこの味を嫌い、食べたがらない。国内に市場はない。
私の中国人の友人にも聞いてみたけれど、「フランス料理で食べたけど、臭くて美味しくなかった」とのこと。
中国人は何でも食べると言われるけれど、実際のところ「好き嫌い」があり、カタツムリは好まれない食材に属するようだ。
沖縄ではカタツムリ汁のようなものが食べられることがあったものの、中国では薬用以外の用途で、積極的には食べられず、調理法も発展することがなかったのではないだろうか。
▲アマゾンで検索してみると、現在取り扱いがあるのはフランス産かインドネシア産。中国産のものは見当たらなかった。日本では中国産そのものの印象が悪いので、扱わないのかも知れないが、アジアにおける食用カタツムリ養殖としてはインドネシアの方がメインなのかも知れない。