黒色中国BLOG

中国について学び・考え・行動するのが私のライフワークです

新疆の学校で京劇を使った「洗脳」教育?

SPONSORED LINK

ツイッターでいろいろ見ていると、新疆での「収容所」とか「洗脳」について疑問の声とか、本当にあるのか、みたいな話をする人がたまにいる。

私も、各種メディアから漏れてくる「情報」やら「証言」がどこまで信用できるものなのか判断つかない時があって、実態はどうなんだろう?と思うことが…正直なところを述べると、やっぱりあった。

でも、この動画を見た時にはさすがに頭を抱え込んでしまった。中国語がわかる人間だったら、これを歌わされているウイグル人の悲哀というのが、直感的にわかるだろう。

新疆の学校でウイグル人の学生たちに歌わせている京劇の歌詞を訳すと次のようになる。

我是一个中国人
(私は一人の中国人)
炎黄子孙龙的传人
(炎帝と黄帝の子孫にして龍の末裔)
继承祖国的灿烂文明
(祖国の輝かしい文明を継承し)
做一个堂堂正正的中国人
(堂々たる中国人となる)

どう考えても、ウイグル人が炎帝黄帝の子孫で、龍の末裔なわけないだろう。

中国が侵略したら、侵略先の民族はみんな炎帝黄帝の子孫になるのか。

中国が日本を侵略したら、日本人の子供もこれを歌わされるのか。

これが日本の小学校でやられているのを想像すれば、新疆の状況がどれほど異常かわかるだろう。

歌詞を別のものと間違えてましたm(__)m

…というようなことをツイッターで書いたが、幾つか訂正しなくてはいけない。

まず、京劇の歌詞だが、これは別のものと取り違えていました(すみません)。

正確には、

继承祖国的灿烂文明
(祖国の輝かしい文明を継承し)

の部分が、

文明古国更要讲文明
(文明の古国はさらに文明を重んぜよ)

になります。

ちょっと解説すると、ここでの「文明」はいわゆる「世界四大文明」の「文明」ではなくて、「野蛮」と対比される方の「文明」…「文明人」という使い方でされる方の意味になります。

なぜ別の歌詞を引っ張ってきたのか言い訳をすると、動画ではカメラの動きが頻繁で歌詞の字幕の上にちょうど動画の表示(再生回数とか秒数とか)があって、歌詞の文字も暗くなって見にくいので(私は目が悪いのです)、歌詞の冒頭からググって歌詞の全体を引っ張ってきたら、別のバージョンの歌詞だった…というわけです。

ただ、これには「発見」がありましたので、こちらに記録しておきます。

なぜ歌詞に違うバージョンがあるのか?

http://www.qupu123.com/minge/wuzi/p14206.html

▲こちらが新疆で歌わされている『我是中国人』。「文明古国更要讲文明」の歌詞の京劇バージョンである。

▲こちらは「苏教版」と呼ばれるバージョン。「继承祖国的灿烂文明」の方だ。「苏」とは「蘇」の簡体字で、「蘇教版」は「江蘇教育出版社の小中学校教材版」の意味である。

京劇バージョンの方が先であるはずで、蘇教版はなぜ歌詞を変えているのか…と考えるわけだが、蘇教版の2番、3番の歌詞を見ても、「继承祖国的灿烂文明」の箇所が、

(2番)建设祖国要协力同心

(祖国建設のため心を1つにして協力せよ)

 

(3番)为了祖国的繁荣昌盛

祖国の繁栄、隆盛のために

となっている。たぶん、現代の愛国主義教育に沿ってわかりやすい内容に変更されたのだろう。

こうして見ると、『我是中国人』は中国で広く、児童教育の現場で歌われている…ようなのだが、ここで1つの疑問が湧いてくる。

なぜ新疆では蘇教版ではなく、京劇版の歌詞で歌われているのだろうか?

そもそも、中国の学校教育では蘇教版と京劇版のどちらが歌われているものなのだろうか?

これはちょっと継続して調べてみようと思う。

(現時点で30代の女性から返答があったが、いずれのバージョンも共に学校で歌わされたことがないらしいので、『我是中国人』を学校で歌うのは最近のことなのかも知れない)

f:id:blackchinainfo:20190220115758p:plain

▲動画のテロップで見ると、「新疆学校規定学習京劇」とあるので、小中学校用の唱歌を合唱しているのではなくて、まさに京劇を学ぶように定められている…ということになる。ならば、蘇教版ではなく京劇版で歌わされて当然か。

また分かり次第、こちらに追記します。