黒色中国BLOG

中国について学び・考え・行動するのが私のライフワークです

【「中国でVPNを使ったら行政処罰」の真相を探る】(1)「広東公安執法信息公開平台」の正体

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黒色中国にしては珍しく、久しぶりにまともなニュースツイートでバズりましたw。

この件は中国で活動する日本人のほぼ全員が気になることかと思います。VPNが使えなければ、日常的なネット利用や仕事の面でも大いに差し支えますし、いきなり逮捕や行政処罰というのは困りますので。VPNの使用全てがNGなのか?どういう状況なら問題ないのか?閲覧や書き込みの内容が問題になるのか?

この件はかなり事情が入り組んでおりまして、ツイートでその全容をお知らせするのは大変と判断しましたので、このほどブログの方で情報をまとめてみようと思いました。

お手数をかけますが、こちらのブログ記事をご覧になる方は、まず上掲のツイートとそれに連なるリプライに目を通してツイート段階での全容を押さえておいて下さい。

そこで、まず問題になるのはツイートのリプライの中でも登場する津上俊哉さんからの指摘…あのネタ元のサイトは「釣りサイト」じゃないのか?…VPNを使っていたら行政処罰という話そのものがフェイクじゃないか?ということです。まずこの点を検証してみようと思います。

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【目次】

 「広東公安執法信息公開平台」の情報はフェイクなのか?

http://www.gdgafz.alldayfilm.com/

▲こちらがアムネスティやその他のツイーターのネタ元となったサイト『広東公安執法信息公開平台』。中国広東省の警察の情報公開プラットフォーム…という意味です。

そこに…

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▲こちらの情報が出てきたわけです。

http://www.gdgafz.alldayfilm.com/bookDetail.html?type=1&id=1134323

▲こちらが情報への直リンクになります。

ところで、私も当初から気にはなっていたのですが、ここのサイトは「中国の公安っぽい」作りになっているけど、イマイチ公安っぽくないというのか、変なところが多いのですね。

韶関市公安局公式サイトの場合

上掲の情報は韶関市の公安局からの情報ですが、韶関市の公安のサイトを開いてみると…

http://www.gdsg110.gov.cn

▲URLはこちらになるわけですが、

  • URL末尾は「gov.cn
    広東公安執法信息公開平台は単なる「.com
  • ウェブページの下に

    f:id:blackchinainfo:20190107172117p:plain

    ▲「粤ICP备10000217号」という番号が出てきます。これらは政府機関にこのサイトを登録した際に発行される番号です。

ちなみに韶関市公安局のドメインから工業和信息化部への登録情報を引っ張り出すと…

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▲このようになります(クリックで拡大)

http://icp.chinaz.com/info?q=gdsg110.gov.cn

▲直リンクはこちらです。

ドメインと粤ICP备10000217号の番号が符号するので、これは政府機関に登録されたサイトであるのがわかるわけです。

そして広東公安執法信息公開平台の方はこのサイトがどこの公安のどの部署が関わっているのか、そういう一切がわからないようになっています。

広東公安執法信息公開平台の方には、この登録番号が見当たらないので「怪しいサイト」「釣りサイト」と思われても仕方ないわけです。

「alldayfilm.com」とは?

そもそも、広東公安執法信息公開平台は「alldayfilm.com」のサブドメインになっておりまして、頭につく「gdgafz」は「広東公安執法」のピンインの頭文字を取ったものになりますが、そもそものメインドメインである「alldayfilm.com」とは何なのか?というのが気になります。

そこで、メインドメインの方を開いてみると…

http://www.alldayfilm.com/

▲こちらになるのですが、

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▲こんな画面が出てきます。この下の部分に拡大すると…

f:id:blackchinainfo:20190107181604p:plain

▲何やら文字が見えますね。

  • Copyright 2017 平安东城 版权所有
  • 粤ICP备16008913号
  • 全天候网络传媒有限公司技术支持

一般的に「平安なんとか」は中国の各地域の警察の微博(ウェイボー)の名前になっています。コンテンツの1つを開いてみると

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▲こんな情報が出てきました。「微信」なのでWechatなのかな。「東莞治安工作新聞発布」とか出てますから、やはり東莞市の公安のアカウントと思われます。

そして「」とは広東省のこと。政府機関の登録情報を調べると…

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▲クリックで拡大できます。

http://icp.chinaz.com/info?q=alldayfilm.com

▲こちらが直リンク。

ドメインそのものは「東莞市全天候網絡伝媒有限公司」という会社が登録しているものになります。

東莞市全天候網絡伝媒有限公司とはどんな会社か?

社名でググってみると…

▲求人広告を出してましたw

▲こちらは会社概要

https://pt.linkedin.com/company/%E4%B8%9C%E8%8E%9E%E5%B8%82%E5%85%A8%E5%A4%A9%E5%80%99%E7%BD%91%E7%BB%9C%E4%BC%A0%E5%AA%92%E6%9C%89%E9%99%90%E5%85%AC%E5%8F%B8

▲そしてlinkedinの情報もw

そこからたどると…

https://pt.linkedin.com/in/%E6%96%87%E8%88%9C-%E9%99%88-18276659?trk=org-employees_mini-profile_title

▲先程の会社概要で法定代表人が「陈**」となっていたので、たぶんこのリンクトインに出てくる陈文舜さんが社長ではないかと思われます。

想像するに、この会社は警察から微博のサイトの制作を請け負っており、広東公安執法信息公開平台も何らかの業務委託を受けて制作しているのではないか…と思うのです。

技術支持

▲こちらは東莞市公安局のウェブページですが、一番下に

版权所有:东莞市公安局 技术支持:开普云信息科技股份有限公司

…とあります。全天候網絡伝媒有限公司とは別の会社ですけど、こうやって政府機関のサイトを「技術支持」という形で民間企業が制作・運営を行うことがあり、全天候網絡伝媒有限公司もそうした企業の1つで、広東公安執法信息公開平台の制作を請け負っているのではないか。

goc.cn」のドメインではなく、会社のサブドメインで広東公安執法信息公開平台を構築しているのは、たぶんまだ試験運用だからではないか…と思うのです。というのも…

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▲こちらのサイトは遡っても2018年12月6日以後の情報しかありません。

この数日確認したところ、1日遅れで情報がアップデートされており、今だと1月6日の情報が最新です。

ただ、深セン市などの大都市になると情報も膨大でして、これら全部がフェイクで、毎日フェイクの情報を作って(自動育成とかあるのかも知れませんがw)、いちいちアップデートしているというのは信じられないのです。

そして、ちょっと手間をかければ、会社の情報や社長の個人情報も出てくるようになっているわけで、フェイク情報を掲載するための「釣りサイト」にわざわざそれらの情報を付加する必要があるのか…ということになります。

すでに有名メディアも掲載

それと今回の「VPNを使ったら行政処罰」の件は

▲鳳凰網でも報道

▲東方網でも

▲そして環球網でも…

▲星島日報でも…

既に報道されておりまして、これらが全部「釣りサイト」の「フェイクニュース」に騙されているとは信じがたいのです。

▲まだ、この件については書くことがたくさんあるのですが、長くなりましたので記事をわけました。 (2)に続きます。

▲こちらは私が以前使っていたもので、参考まで掲載しておきます。他にも種類があり、アマゾンで「香港 SIM」で検索すればいろいろ出てきます。この手のSIMの大陸内での使用は違法ではありません。

私は香港で購入し、日本でも使っているスマホにSIMを挿して、香港でも使えましたし、そのまま中国に入っても何も操作せずにそのまま使えました(機種によって違うかも知れません)。中国に入ってもツイッターやFBが使えました。こちらのSIMは電話回線なしで、データ通信のみです。この手のSIMは電話回線+データ通信のものと、データ通信だけのもの、使用できる期間の違いなどもありますので、購入時には注意してください。