黒色中国BLOG

中国について学び・考え・行動するのが私のライフワークです

【南シナ海問題】中国が計画している「海上原発」について調べてみました

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www.sankei.com

▲今朝から、このニュースでツイッターは大騒ぎとなっております。

www.asahi.com

複数の中国メディアは22日、国有造船大手「中国船舶重工集団」が原発メーカーと連携して海上に浮かべる「浮動式小型原子力プラント」を開発し、近年中に約20基を実用化する計画だと伝えた。海上での石油掘削などへの活用が見込まれ、中国の海洋権益の拡大につなげたい考えだ。

▲他にニュースはないかと思って探してみると、朝日新聞はこの海上原発について、さらに詳しい報道をしてくれていました。

この件について、他の情報を探ってみたいと思います。

国家电投与中船重工签署战略合作框架协议_中国船舶网-船舶与海洋工程装备专业资讯平台

▲今年の1月21日,中国の国家電投集団公司と中国船舶重工集団公司が北京で、戦略合作構造協議に署名の儀式を行った…というもの。

朝日の記事にあった、中国船舶重工集団と原発メーカーと連携…というのは、この件と思われます。

finance.sina.com.cn

▲こちらはそれを更に詳しく伝えたもの。以下、要訳すると…

f:id:blackchinainfo:20160423133510j:plain

▲上掲記事より「海上移動式小型原発模型図」

  • 海洋核動力プラットフォームは海上移動式小型原発である。
  • 小型原子炉と船舶工学を有機結合させたものである。
  • 海洋石油採掘と離島に安全かつ効率的に電力を供給するものである。
  • 船舶と海水淡水化の領域において大きな効率をもたらすものである。

※ここで「海水淡水化」という言葉が出てきました。どうやら本件はこれが重要なキーワードの1つになっているようです。

  • 海洋核動力プラットフォームは国内初の取り組みで、中国の民用核動力船舶領域の技術的空白を埋めるものである。

※ようするに、今まで全然やったことがない…ということです。

中国の海上小型原子炉、離島開発を支援へ_中国網_日本語

▲日本語版の情報がありました。

ACPR50Sは同社が独自に開発・設計する海上小型原子炉技術で、1基当たりの発電量は20万kWに達する。海上油ガス田開発、離島開発などの給電熱供給海水淡水化に対して、信頼性の高い安定的な電力を提供する。同社は現在、ACPR50Sモデルプロジェクトの初歩的な設計作業を行っており、2017年にモデルプロジェクトの建設を開始し、2020年に発電を開始する予定だ。

▲「熱供給」とあります。どうやらこの原子炉では、廃熱を供給することを想定しているようです。

detail.chiebukuro.yahoo.co.jp

▲こちら参考まで。

これらの記事から考えるに、今回中国が用意している「海上原発」は原子炉を積載した船で、いわゆる原子力船ですね。それが離島や石油リグまで自力で移動して、電力と熱を供給する…そうい仕組みのようです。

何が問題なのか?

中国が海上原発を運用すると一体何が問題なのか?日本だって原発があるし、危なっかしい運用をしているのだから、他国のことは言えないじゃないか…そういう「声」があると思いますが、問題点をまとめると…

  • 中国が海上原発の運用を行うと思われる地域は、中国の領海・領土ではない。公海であったり、他国の領域または係争地であったりする。
  • 「浮動式小型原子力プラント」は約20基を建造する予定。つまり中国は最大20箇所の海上で原子力発電を行う可能性がある。
  • しかし、今回用意されている「浮動式小型原子力プラント」は、中国は初めて製造・運用を行うもので、過去に運用実績はない

中国は現在まだ海上原発の運用地域を明らかにはしていませんが、

bci.hatenablog.com

▲こちらは、つい2日前に話題となった記事ですが、この9階建ての大きな建物は、一体どのようにして電力を用意しているのか、記事を書きながらずっと疑問に思っていました。

たぶん、当面はディーゼル発電などで賄うのでしょうが、海上原発が実現したら、ここなどは間違いなしに配備されそうな場所です。

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▲しかし、このヒューズ礁は、こんな場所にありまして、今まで中国が運用実績のない海上原発を持ち込むのであれば、フィリピン、マレーシア、ブルネイ、ベトナムなどは生きた心地がしないでしょうね。この海域だと、日本にとっても無関係とは言えません。

それと、中国側の報道を見ると、海洋石油採掘の現場にも海上原発を持ち込むつもりがあるようです。

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東シナ海ガス田問題 - Wikipedia

つまり、日中中間線にある東シナ海ガス田にも、中国の海上原発がやってくる可能性があるわけで、もしこの海域で中国の海上原発が事故を起こせば、沖縄や九州への影響も充分予想されます。

原子力船について

参考まで世界の原子力船の運用が現在どうなっているのかをウィキペディアから抜粋してみると…

原子力船 - Wikipedia

  • 1960年代から70年代にかけて、民間船舶への原子力動力の導入計画が推進された。
  • 日本の原子力船「むつ」は原子炉を撤去されて、ディーゼル・電気複合動力船の「みらい」となっている。
  • 現用の原子力商船は存在しない。ロシアが北極海航路および主要河川の砕氷による航路維持、艦船の救援に原子力砕氷船を用いている。

…という状況でした。

原子力船「むつ」が来た! 原発とメディア 青森・下北半島(上) (朝日新聞デジタルSELECT)

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中国 原発大国への道 (岩波ブックレット)

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