黒色中国BLOG

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中国海軍潜水艦乗組員の5分の1が精神障害…連続潜水記録で世界一?

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【中国南海潜艇人员五分之一有精神健康问题】 https://www.rfa.org/mandarin/Xinwen/9-01312021163546.html

▲香港のサウスチャイナ・モーニング・ポストによれば、上海海軍軍医大学の南シナ海で活動する中国海軍の潜水艦乗務員500名を対象とした研究で、5分の1が精神に問題を抱えているのが判明…とのこと。

この件、少し深堀りします。

中国の海洋侵略の代償

記事から要訳すると…

  •  これらの乗組員は、不安障害や妄想症などの症状が、一般的な中国軍の兵士よりもひどい。
  • 問題の原因は、軍事演習の回数が増加し、60日から90日間の長期間にわたる潜航状態で海中に長期間封鎖・隔絶されているのに加え、睡眠時は騒音に悩まされている。

…とのことで、中国が南シナ海への侵略を強めた結果、演習も増えて、潜水艦の乗組員に影響が出ている…という事情のようです。

中国のニュースを毎日見ていると、「連続○○日間潜水達成!」みたいなのをよく見かけるので、中国の潜水艦には長期潜航が可能な特別な設備があるのか、中国人は長期間の潜航に耐えられる素質があるのか…と思っていたのですが、そうじゃなかったのですね。

潜水艦の連続潜航記録で中国は世界一?

潜水艦の連続潜航記録をググると、

▲こちらが出てくるのですが、

1960年2月15日にニューヨーク沖から潜航を始めたアメリカの原子力潜水艦トライトンは、マゼラン船団の航路をなぞるようにして世界一周を達成し、この日、83日ぶりにアメリカ・デラウェア州沖で浮上しました。

(中略)

この航海のメンバーには心理学者が含まれており、閉鎖環境下での乗員の観察も目的のひとつでした。その結果、潜水期間が60日を過ぎたあたりから乗組員の士気が低下するということが明らかになったそうです。

 …とあります。

でも、中国のネットで検索すると、中国が世界一になっております。

▲こちらの記事をみると、

1985年,我国海军舷号为403的“长征3号”091级核潜艇载着125名官兵,完成了连续航行90天5小时的极限纪录

…とありまして、1985年に125名の乗組員を乗せた中国の091型原子力潜水艦が90日と5時間連続の潜航を達成し、米国の記録を打ち破った…とあります。

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▲091型原子力潜水艦

ただ、中国の記録はその詳細がよくわからないのですね。

ググっても百度で調べても細かいところがわからない。たぶん、軍事機密扱いなのかな。だから、世界記録として認定されてないものと思われます。

ただ、これを調べてみると面白いことがわかってきたのですね…

騒音と放射能被爆

▲1985年に90日間連続の潜航に成功した091型。これのウィキペディアを読むと…

艦体が延長された理由は、航行時の(『割れ鐘を叩いているような』と表現されるほどの)雑音対策によるものと見られている(このため401号艦、402号艦は母港で長期係留状態にある)。雑音の音圧レベルは、401号艦・402号艦が160~170デシベルで(スキップジャック級や旧ソ連のノヴェンバー型などの初期の原潜と同水準)であるが、403号艦から405号艦は改善され、140~150デシベル(パーミット級と同程度。ロサンゼルス級は105~125デシベル)。しかし依然として静粛性に欠け、アメリカ海軍や海上自衛隊には容易に探知されている

90日間連続潜航を達成したのは403号艦なので、雑音は改善されているけど、それでもうるさかった。比較対象で出てくるパーミット級は1950年代に開発され、1961年に就役した米国の潜水艦です。

091型はまだ現役ですが、北海艦隊所属なので、たぶん南シナ海とは関係ない。だから、冒頭の調査とは関係ないと思いますけど、調査の中で睡眠障害のことが出てくる。1985年に90日間潜り続けた125名の中国兵も、騒音にはかなり悩まされたはずです。そして…091型の記述をさらに読み続けると…

陸上用加圧水型原子炉を潜水艦用原子炉として十分な研究なしに改造・導入したため、構造的欠陥が原因と考えられる放射能漏れ事故が頻発した。1番艦は1974年に就役したが、約10年間は完全に運用できる状態ではなかった。また、中国国内には被曝した潜水艦乗員らを対象とする、放射能汚染障害専門病院「海軍409核傷専科医院」が新たに設立されている。

今の最新の中国の潜水艦だと、放射能漏れは抑えられてると思うのですが、長期間にわたる原子力潜水艦での勤務には、そういうリスクもあるのですね。単に長期間、水中で閉じ込められるための精神的な問題とは考えない方がいいのかも知れない。

▲ちなみに、「海軍409核傷専科医院」は、現在、「青島解放軍401医院嶗山分院」と名前を変えています。

医院还是全军唯一的核辐射检测与救治专科医院

全軍唯一の放射能被爆検査と治療の専門医院…と現在の紹介でも書かれている。

南シナ海に出没する中国の潜水艦は海南島の基地に所属しています。山東省の青島とは全然違う場所にある。

では、海南島には放射能被爆関連の病院はないのでしょうか?

https://www.ccgp-hainan.gov.cn/cgw/cgw_show.jsp?id=17267

▲いま関連情報で見つけられるのはこれだけ。

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▲海南省の政府調達のサイトで、海南省衛生健康委員会が、「国家核輻射緊急医学救援基地」のプロジェクトで設備の調達を行った際の公告。「核輻射」は「放射能被爆」のことですね。

この救援基地がすでにあるのか、まだ建設中なのかは不明です。

▲海南省には一応、原発があるので、それに備えた施設かも知れませんけどね。

中国の潜水艦乗りの精神障害から、意外なことが次々にわかったのでした(^^)