年末で何かと忙しくしているので、今日はツイッターを半ばお休みのつもりでありましたが、ふとTLを見ると、日韓外相会談の件で沸騰している…慰安婦問題の「最終解決」についてです。
私にとって韓国は全くの専門外で、慰安婦問題についても詳しくありません。こういう敏感な話題に下手に口出しすれば、左右双方から袋叩きにされるのは、今までの苦い経験でよくわかっております。
ただ、この件は中国でも既に話題となっており、中国も無関係ではない。いや、非常に関係が深い…その件について、こちらにまとめておこうと思います。
- 「安倍首相が謝りに来ないのであれば、如何なる謝罪も賠償も受け入れない!」
- 中国の「慰安婦問題」と世界記憶遺産
- 参考:『上海日軍慰安婦実録』とは?
- 参考:写真の無断転載問題と蘇智良氏の日本との関わり
- 中国は慰安婦問題についての世論工作を強化している
- 追記:慰安婦申請見送りで一致=日韓
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「安倍首相が謝りに来ないのであれば、如何なる謝罪も賠償も受け入れない!」
▲つまり韓国でまだ存命の慰安婦が、「如何なる謝罪も賠償も受け入れないぞ!」と言っている…という中国のニュース。
听闻韩日外长即将会面的消息,一些尚健在的“慰安妇”表示,除非日方真心诚意地承认错误,否则她们不会接受任何道歉或补偿。
“安倍晋三首相必须来这里……逐一向我们道歉,”受害人李玉宣(音译)说,“除非日方承认我们是遭日军强征的,否则我们不会接受任何道歉。”
ようするに、「日本が誠心誠意に誤ちを認めなければ、彼女たちは如何なる謝罪も賠償も受け入れない」「安倍晋三首相はここに来なければいけない…我々一人一人に謝罪しなければ…我々が日本軍に強制されたことを日本側が認めなければ、我々は如何なる謝罪も受け入れられない」という「慰安婦」の発言なのですが、
法的責任や、慰安婦募集の強制性についての言及はなく「責任を痛感する」という表現にとどまった。
▲報道によれば強制性についての言及はなかったそうなので、上掲の「慰安婦」としては謝罪も賠償も受け入れられない…ということになります。
今後、「日本は金だけ払って終わらせようとした!全然反省してない!」と言う「民意」が出てきたら、その時の韓国の政権は「既に最終解決済み」として「民意」を説得できるのだろうか…非常に悪い予感がする。
しかし、話はこれだけでは終わらない。実はこの件、中国と非常に深い関わりがあるのです。
中国の「慰安婦問題」と世界記憶遺産
【世界記憶遺産】『中国、「慰安婦」の他国との共同申請検討 韓国と協力か』ユネスコ国際諮問委員会から今回の登録見送りに関し「慰安婦問題の他の被害国との共同申請を勧められ、2017年に行われる次回会合で審査するとの説明があった」と述べた http://t.co/vkHng0rxqs
— 黒色中国 (@bci_) 2015, 10月 12
日本であまり広く知られていないことですが、中国にも「慰安婦問題」が存在します。今年、「南京大虐殺」に関する資料が、ユネスコの世界記憶遺産に登録された件は、記憶に新しいですが、その際に、中国は「慰安婦問題」に関する資料も申請をしていたのです。
長年、中国の「慰安婦問題」を研究してきた「蘇智良」という中国人の学者がいます。私は丁度10年前に彼の本を上海で手に入れて以来、これを読み進め、中国の「慰安婦問題」なるものが、今後どのように中国の政策に反映されるのかを注視してきました。世界記憶遺産の登録は見送られたものの、今年は中国の「慰安婦問題」が国際舞台に踊り出た記念すべき年でもあったのです。
以下、参考として、過去のツイートから蘇智良氏の慰安婦問題研究本に関するものを紹介させていただきます。
参考:『上海日軍慰安婦実録』とは?
#中国慰安婦研究 こちらは、『上海日軍慰安婦実録』という本。中国で2005年に出版されたもの。05年は大きな反日デモがあったけれど、書店に行くと色んなタイプの「反日本」がたくさんあった。たぶん終戦60周年に合わせて計画されたのだろう pic.twitter.com/kYH3vwFQVy
— 黒色中国 (@bci_) 2015, 9月 8
#中国慰安婦研究 著者は蘇智良という学者さんで、90年代から13年間にわたって、日本の慰安婦問題を研究し続けた、この道の第一人者である。 pic.twitter.com/HfHEz16Mlr
— 黒色中国 (@bci_) 2015, 9月 8
#中国慰安婦研究 「十五」とは「第十次五カ年計画」のこと。つまり2001年から2005年の間に、上海市教育委員会から予算がついた研究で、「上海市教育委員会中国近現代史重点学科計画プロジェクト」という、たいそう立派な肩書付きの研究である pic.twitter.com/FqNCNbmruU
— 黒色中国 (@bci_) 2015, 9月 8
#中国慰安婦研究 これが第1ページ目。「慰安婦」の言葉の定義から始まる。「日本軍人に性服務を提供させられる者を指す。性奴隷の婦女に充当す」とある。そして写真では切れてるけど、「上海は日本軍が慰安婦制度を実行した発祥地である」と書いてる pic.twitter.com/d5X5rYNjn5
— 黒色中国 (@bci_) 2015, 9月 8
#中国慰安婦研究 上海に当時あった日本総領事館の警察署長が、長崎県水上警察署長に宛てた手紙。こういうのはどうやって入手したのかと思うのだけれど、たぶん蘇智良さんには、日本側の「協力者」もいるのではないかと思われる。 pic.twitter.com/DBtHDTTuEq
— 黒色中国 (@bci_) 2015, 9月 8
#中国慰安婦研究 蘇智良さんは、13年間の研究で、150箇所の慰安所を調査し、当時を知る人々への聞き取り調査も行った。今は再開発で失われた、解放前の「大上海」の影の部分を記録した資料でもあり、上海の日本人社会を知る上でも貴重である pic.twitter.com/TnwbsYZQ4Q
— 黒色中国 (@bci_) 2015, 9月 8
#中国慰安婦研究 私は、蘇智良さんがとても誠実で真面目な研究者ではないかと思い尊敬している。というのも、彼は「プロパガンダ」を越えて、とても真面目に研究したので、朝鮮人経営の慰安所についても、詳しく記録を残しているのであった… pic.twitter.com/l1GUJ9jsys
— 黒色中国 (@bci_) 2015, 9月 8
#中国慰安婦研究 朝鮮女子は日本植民政策の犠牲であり、彼女達は上海に来てから更に悲惨な目に遭った…と書いた直後、日本軍兵士の月給が8円、朝鮮慰安婦は1回1円、泊まりなら2円…と蘇智良さんは書く。朝鮮人経営者に酷く搾取されていたのだろう pic.twitter.com/lbPWKgRNrO
— 黒色中国 (@bci_) 2015, 9月 8
▲このように、上海の「慰安所」では、朝鮮の「慰安婦」が多く働いていたので、韓国の「慰安婦問題」は中国の「慰安婦問題」は無関係ではありません。韓国に対して、日本が「慰安婦問題」なるものを認めて謝罪・賠償するというのは、今後中国に対しても同様の対応を要求されることが予想されます。
参考:写真の無断転載問題と蘇智良氏の日本との関わり
【中国の慰安婦関係資料に福岡の医師「父の写真、無断使用」 自民が調査へ】「父の写真の使用を許可したことはない。この写真は慰安婦が『強制連行された』『性奴隷だった』ことを示すものではありません」 https://t.co/iqPyKTWbWd
— 黒色中国 (@bci_) 2015, 11月 19
中国が世界記憶遺産の申請のために提出した「慰安婦関連資料」には、日本人が撮影した写真を無断転載しているとして、その遺族から疑問の声が出ています。
このニュースを見た時に、手元にある蘇智良氏の著書を確認しましたが、その際の一連の検証ツイートも参考のため以下に転載します。実はこの蘇智良氏の慰安婦研究、日本と深い関わりがあったのです。
https://t.co/iizw7ajoXc ▲どこかで見たような覚えが…と思い書棚を探ってみたら、この写真無断使用の「中国の慰安婦関係資料」は私の手元にあった。内容を確認したが、この本で間違いない。計9枚の写真が引用されている pic.twitter.com/vmgHkXH1Sh
— 黒色中国 (@bci_) 2015, 11月 19
本書では149の慰安所が紹介される中、96番目の慰安所として今回、写真無断引用で問題になってる「楊家宅慰安所」が出てくるが、ここだけで46頁も割かれている。無断引用とされるものと思われる写真9枚が掲載されているのだが…よく見ると… pic.twitter.com/6Fjdp66iXx
— 黒色中国 (@bci_) 2015, 11月 19
本書では、麻生徹男氏が撮影した写真が、表紙に使われているのである。稀に見る大胆不敵な無断引用ではないか。何十年も前の写真だから著作権は無効じゃないか…と思ったけど、写真は麻生徹男氏の著書から転用しているので、これはNGだろう。 pic.twitter.com/DPPmiYVNfw
— 黒色中国 (@bci_) 2015, 11月 19
本書には麻生徹男氏の肖像写真も含まれているが、無断引用の本の写真を引用して故人の名誉を傷つけるのは避けたい。代わりにこちらをツイートしよう。無断引用は麻生氏の著書「上海より上海へ」から行われたようだ。キャプションにそう書いてる pic.twitter.com/UDvFmIuiLL
— 黒色中国 (@bci_) 2015, 11月 19
「楊家宅慰安所」の書き出しは次のように始まる。「1992年、私は日本国東京大学で客員研究員として、中国近代史の研究していました(略)ある日、神保町の古書店で、この写真を発見したのです」…この慰安婦問題研究者は、かつて東大にいたのだ pic.twitter.com/0d0raph8sd
— 黒色中国 (@bci_) 2015, 11月 19
筆者は写真発見後、その詳細が非常に気になったらしい。「1993年6月11日、私は2年の日本留学を終え、妻と共に横浜から船に乗り帰国。上海に戻ってから、すぐに実地調査を開始したのでした」…以下、8章に及ぶ「楊家宅慰安所」研究が始まる pic.twitter.com/BrcmHhqmSP
— 黒色中国 (@bci_) 2015, 11月 19
「私が上海に戻ってから、友人である一橋大学の三谷孝教授が1冊の本を送ってくれました。この本の題名は『上海から上海へ』で、作者は麻生徹男氏でした」 https://t.co/AE6CsdWyXi ▲三谷孝教授の詳細はこちらにある。 pic.twitter.com/WsQZwwvwSR
— 黒色中国 (@bci_) 2015, 11月 19
「北九州出身の日本婦女の多くは妓女であるが、朝鮮女子は日本軍に騙されて誘われ、略奪されて来た良家の少女である」とある。つまり朝鮮慰安婦は日本軍が強制的に連れてきた…と書いているのだ。これは麻生氏の著書にも記載されているのだろうか? pic.twitter.com/DqEkBHrrOi
— 黒色中国 (@bci_) 2015, 11月 19
東沈家宅の沈錦珠さん(1933年生)の証言。「朝鮮慰安婦が兵士への性服務提供を拒絶すると、管理者が川でザリガニを捕まえ、慰安婦の裸体に這わせ、無理やり日本軍の性奴隷になることを改めて同意させたのです」…そんな拷問の方法があるのか… pic.twitter.com/rH0MxupTPO
— 黒色中国 (@bci_) 2015, 11月 19
「慰安婦問題」に関しては、韓国が大きく先行していたわけですが、ちょうど日本で慰安婦問題が大きく取り扱われていた1990年代に日本留学をしていた中国人の学者が、中国の「慰安婦問題」に関する「研究」を始め、2005年に『上海日軍慰安婦実録』を出版、2015年に世界記憶遺産へ申請(但し見送られた)、2015年末の現在、日韓外相会談において「慰安婦問題で最終的解決」、そして2017年に中韓共同で世界記憶遺産に申請の予定…という流れがあります。
中国は慰安婦問題についての世論工作を強化している
【重要】『Theme park to tell story of Battle of Shanghai』 http://t.co/MobjnjIWy0 ※上海の第二次上海事変記念館が展示を拡充して、来年テーマパークを開業
— 黒色中国 (@bci_) 2014, 7月 1
▲上海の「第二次上海事変記念館」とは、「上海淞滬抗戦紀念館」のことです。
中国のいわゆる「反日記念館」の展示内容は、その時の中国政府の「反日政策」の方向性や今後の展開を知る上で、非常に参考になります。以前にもこの記念館には行ったことがあるのですが、習近平政権になってからはまだ訪れていませんでした。
上掲のニュースだと、2015年にはリニューアルしているはず…実はつい先日、参観してきたばかりなのです。
▲上海地下鉄3号線の「友誼路」駅から歩いて30分ぐらいかな。公園の中にあります。ちなみに入場無料です。
▲この紀念館のレポートは年明けにツイッターでやろうと思っていたんですけど、この部分だけ先行公開。手短に言うと、この紀念館はリニューアルしてかなりスペースが小さくなったようです。昔は塔のてっぺんの展望台にも上がれましたけど、今は上がれなくなりました。「慰安婦」に関する展示は、第四部分の「日軍在上海的暴行」(日本軍の上海における残虐行為)の箇所にあります。
▲こちらが上海で初めて設立された「慰安所」と言われる「大一サロン」。
日本海軍は「大一サロン」の形に満足したため、上海で始めた慰安所制度を中国各地へ広め始めた。1938年1月13日、上海派遣軍東兵站部司令部の管理で、上海の北東に「楊家宅娯楽所」が開業した。日本と朝鮮の少女104人が楊家宅慰安所の最初の慰安婦になった。その後、多くの外国籍の女性が仕方なくこの戻れない道へ足を踏み入れた。
上海の「大一サロン」こそが、その後の「慰安所」の原型であり、上海こそが日本の慰安婦問題の発祥地なのである!というわけです。
▲こちら、上海にあった日本軍の「慰安所」のリスト。何をもって「日本軍の」とするのかはさておき。
* * * * *
以前、 私が上海淞滬抗戦紀念館を参観した際、慰安婦問題についてこのように大きく取り上げていたのは記憶にありません。そして、これらの展示内容が、蘇智良氏の研究に基いており、中国の「慰安婦問題」の世界記憶遺産申請とも連動しているのは、間違いないといえるでしょう。現在既に、中国は国内外で「慰安婦問題」に関する世論工作を強化しているのです。
今回の日韓外相会談で「慰安婦問題」が「最終的解決」するのか。韓国の慰安婦問題が終わったとしても、これは中国の「慰安婦問題」の始まりを意味するのではないか。ツイッターでは「韓国がまた蒸し返すに決っている…」という意見がよく見られますが、この「最終的解決」を跳躍台にして、中国の「慰安婦問題」が日本に襲いかかるのではないか。今回の「最終的解決」は、2017年に予定されている、中韓共同の「慰安婦問題」の世界記憶遺産登録への「始まりの一歩」ではないでしょうか…
そのような不安を持って、今日のニュースを眺めておりました。今後、中国が日本にどのような奸計を仕掛けてくるのやら…気を引き締めて観察しなくては…と強く心に思った次第です。
追記:慰安婦申請見送りで一致=日韓
一夜明けて、こんなニュースが出てきました。
【重要】『慰安婦申請見送りで一致=日韓』日本政府関係者は28日、韓国が同日の日韓外相会談で共同申請を見送ると確認したことを明らかにした https://t.co/XkTD9W28Mb ※これは快挙です!安倍政権中韓反日連携分断成功GJ!
— 黒色中国 (@bci_) 2015, 12月 29
▲これは非常に大きな意義があります。私が長いブログ記事でツラツラと書き連ねた懸念が全くの杞憂になってしまいましたから(笑)
既に多くの方々が指摘されていますが、今回の慰安婦問題の「最終的解決」は、半島有事を目前にして、日米韓が連携するためのものだったのかも知れません。
この約束がちゃんと履行されるか心配ですが、これが本当なら10億円で中韓反日連携を分断したことになる。現在、多くの安倍首相支持者が憤慨されていますけど、これは意外にGJだったのかも知れない。
但し、日本が韓国に慰安婦問題の謝罪と賠償を行うことは、今後他の国々の模倣を引き起こすでしょうし、中国も今回の件をきっかけに、何らかの動きを見せる可能性が高い。この点は注意しなくてはいけませんが、とりあえず中韓共同の世界記憶遺産申請はなくなったということで、ちょっと安心しても良いのではないか、と思います。
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▲こちらは先に挙げた写真をパクられてしまった麻生徹男さんの著書になります。
▲パクられ元の著書である『上海より上海へ』はアマゾンでの取り扱いはありませんが、出版元で販売しているようです。