最近、中国のドキュメンタリー番組をよく見ている。中文の字幕も出てくるし、中国の社会状況を理解する上でも、良い教材になる。
『舌尖上的中国』は有名な食文化のドキュメンタリーであるが、今まで断片的にしか見ていなかった。そこで全編隅々見てみよう…と思ったのである。
第一部の一回目、「自然的馈赠」(自然の贈り物)を見て、気になった箇所が2つあったので、ブログに残しておこうと思う。
■猎殺不絶
https://youtu.be/LmSH2lZqUD0?t=28m59s
▲吉林省の查干湖での冬場の漁を紹介したもの。上のURLで直接その箇所に飛べる。凍結した湖に穴をあけて、そこから網をおろして魚を捕るのだが、その時に使用する網の目は6寸幅で2kg以上の、生後5年以上の魚しか捕れないらしい。
当地のゴルロスモンゴル族の言葉に「猎殺不絶」というのがあり、つまり…根こそぎ捕らない、サステナブルな漁をしましょうということか、そういう教えが古くからあるのを守っている…というエピソードである。
これは去年CCTVのニュースでも問題になっていたけれど、近年、中国では魚が捕れなくなってきたので、目の細かい網を使って小魚も根こそぎ捕る。そうすると、余計に魚が捕れなくなってくるので、政府は目の大きな網を使って、水産資源を守るように指導しているけれど、上手くいかない…という話であった。
中国人のほとんどが、水産資源保護への意識が薄いものだと思っていたけれど、このドキュメンタリーを見るとそうでもないらしい。ただ、これはあくまでも当地のモンゴル族の言葉であって、漢民族の発想に水産資源保護はないのかも知れない。ないからこそ、ドキュメンタリー番組を通じて、水産資源保護を訴えているのかも知れない。
■南シナ海の中国漁船
最近のニュースでもたびたび話題になっている、南シナ海で活動する中国漁船の映像記録も含まれていた。
https://youtu.be/LmSH2lZqUD0?t=39m59s
▲こちらからそのシーンにジャンプできる。
海南島の三亜をベースに活動する漁船で、乗組員は20名。たぶん1千トンもない漁船と思う。南シナ海の西沙群島周辺まで船を出すようで、あの辺りは水産資源が豊かそうだから、魚を捕るのに苦労はないだろう…と思っていたら、2週間近く収獲がないこともあるそうだ。そうやって、どんどん遠いところまで行って、他国の領海に入ることもあるのだな…という事情の背景を垣間見るようなドキュメンタリーである。
去年の赤珊瑚の件とか、それ以前から尖閣周辺にやってくる中国漁船の報道を普段から見ている我々日本人からすれば、中国漁船というのは非常に印象が良くない。ツイッターを見ていると、しょっちゅう「撃沈しろ」みたいなツイートが見られるけれど、こうやってドキュメンタリーの形で、中国漁船の船長と乗組員たちの素顔と、仕事の辛さを目にすると、ちょっと同情してしまう。
この『舌尖上的中国』は非常に優れたドキュメンタリーなので、日本でも放映されて良さそうなものだと、ずっと思っていたのだが、たぶん、こういう「同情」を起こさせるような要素が、特定の人々の怒りに触れるのを恐れて、敬遠されているのだろうか。
でも、YOUTUBEで全編見られるし、中文字幕もあるので、初歩の中国語でも出来る人なら大体の内容はわかるはずである。言葉がわからなくても、この作品は、中国に関心のある人にオススメである。