【ベトナム当局 中国船を領海侵犯で拿捕】この船には10万リットル以上の燃料が積み込まれていて、船長はベトナムの領海内で違法に操業する中国漁船に燃料を供給する目的だったと話しているということです https://t.co/2lkBI3QYDB
— 黒色中国 (@bci_) 2016年4月2日
▲こちらのニュースがずっと気になっていたのですが、日本では詳細に関する続報がなく、ベトナム語が読めない私にはベトナム語の情報がわからない。中国語の情報もほとんど出てこない。それに、この件に関しては中国の報道は、日本のニュースの転載がほとんどでしたが、今日になって気になるニュースを1つみつけました。気がかりなことが幾つかありましたので、こちらに記録しておきます。
▲こちらBBC中文版ですが、
- 船の名前は「琼洋浦13056号」…海南省洋浦港に所属する船と思われます。(「琼」は海南省の意味)
- ベトナムの国営通信社によれば、琼洋浦13056号は漁船を偽装して航行していた(ただし写真を見る限りそれらしくは見えません)
- 船長は広東省からきた38歳の男。他、船員2名の計3名がベトナム当局に拘束された。
- 10万リットルのディーゼル燃料の出処を証明する書類、2名の船員の就労証明などはなかった。
他国の領海内で勝手なことをやるわけですから、あまり証明書などはしっかり持って活動することもないと思いますし、こういうイイカゲンなのが中国では当たり前なのかも知れないですけど、大量の燃料を購入したり、船員2名がいたとしても、なんらかの証明となる文書が1つもない…というのは興味深いですね。こういうことで、中国領海内で中国当局に臨検にあった時はどうしているのでしょうか。
バクロンヴィー島とは?
- 今回の中国船を拘束したのはハイフォン市所属の国境警備隊。
- 拘束した場所はバクロンヴィー島(白龙尾岛)の北部。
日本の報道では「トンキン湾」としか説明がなかったのですが、バクロンヴィー島と言えば…
中国船も大胆ですね(笑)。
以前南沙諸島(スプラトリー諸島)や西沙諸島(パラセル諸島)と同様にベトナムと中華人民共和国との間で、その領有権に関して争いが起こっていた。しかし2004年、中越両国は国境画定交渉を本格化させた結果、ベトナム帰属が正式に決定され、中国政府もベトナム領有を確認した。
ちなみに、この島は現在、係争地ではありません。
海南島とハイフォン市の中間よりハイフォン市寄りの地点で、中国の密漁船に燃料を売ろうとして10万リットルもディーゼル燃料を積んで航行していたのですね。
ただ、海南島からバクロンヴィー島って130kmしか離れておりません。わざわざ海上で燃料を売りに行かなくても、それぐらいの距離なら給油の必要はないような…と思ったり。
南シナ海であっちこっち魚を追っていれば、途中で給油したくなることもあるんでしょうけど、このような、帰ろうと思えばすぐ帰れる近い場所で、給油って必要なんだろうか…とにかく、何かと不可解な事件ですね。
追記:中越間の石炭・燃料密輸について
不可解なまま放置しているのも気分が悪いので、視点を変えて調べてみましたら…
▲こんなニュースがありました。今年1月のニュースで、去年12月に発覚したベトナムから中国への石炭の密輸ですが、
- 石炭輸出に必要なベトナム側の通関関連書類を提示できなかった。
- 同船には船長とその他に7人が乗り込んでいたが、船長及び船員の資格証明も所持していなかった
- 同船はハイフォン市船籍の石炭運搬船で、中国の海南省や広東省に石炭を運ぶ途中だった
- ベトナムから中国への石炭密輸が増えている
- 背景には中国が2015年1月1日に、石炭の品質を定める「商品煤質量管理暫行弁法(商品痰品質管理暫定方法)」を施行したことがあるという
- 同弁法は石炭に含まれる不燃成分や硫黄の基準を定めたもので、ベトナム産無煙炭の多くが「環境基準を満たさない」との理由で、中国で燃やすことが出来なくなった
▲今回の10万リットルの中国船と似たような状況が幾つか見られます。
▲こちらは海南省を拠点とした軽油密輸団が捕らえられた…という去年11月のニュース。要約すると
- 中心人物は広東省出身の船長(58歳)。
- 2014年8月から密輸を開始
- 2015年1月15日、海南省八所港から出港。
- 中越公海海域で、ベトナムの国旗を掲げた白い給油母船から軽油150トンを受け取り、1月16日、帰港する途中で中国海警局に逮捕される。
…とあります。
▲こちら、ちょっと古い情報ではありますが、
- ベトナムの原油生産量は1日平均40万3,300バレル。東南アジア地域では、インドネシア、マレーシアに次ぐ水準だ。国内で使用される原油は20万バレル程度で、残りは輸出されている。原油の輸出による利益は、ガソリン・石油の輸入を補填している
- 採掘技術の低さからベトナムの原油の質は高くなく、付加価値も低い。
あと、上掲の記事を読み進めるとわかりますが、ベトナムは精製技術でも劣るようです。
もしかしたら、ベトナムには公式ルートでは輸出できない低質な軽油があって、それを海上で中国人相手に闇取引していたのかも…。
上掲の10万リットルの中国船の件は、今回ベトナム当局が逮捕したわけですが、もしこれが密輸事件だとしたら、ベトナム側は「密輸出」をしているわけですから、「身内の恥」を隠すため、公式発表にあたり、10万リットルの軽油は、バクロンヴィー島の付近で密漁を行う中国漁船に給油するためではないか…という「口実」を設けたのかも知れません。
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