黒色中国BLOG

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【中国・運転免許証ロンダリングの実態】日本のレンタカー会社「中国パスポートの人には貸しません」の真相を探る

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 ▲先日、こちらのニュースツイートは非常に大きな反響を得た。

このニュースの内容について真偽を調べてみることにした。

 内容をよく読むと…

日本のレンタカー会社、トヨタレンタリースがウェブサイト上で「国際運転免許証を保有しているか否かに関わらず、中国パスポートを持つ中国籍の観光客は、現在日本で自動車を借りることができません」と表示していることが分かり、注目を集めている。

…とある。ちょっと疑問なのだが、こういう内容の文章をトヨタレンタリースがウェブサイトにわざわざ掲載するものなのだろうか?ちょっと信じられない話だ。

rent.toyota.co.jp

▲こちらがそのトヨタレンタリースのウェブサイト。日本語のページではそれらしき内容は見当たらない。

rent.toyota.co.jp

▲こちらは同社の中国語版(繁体字)ウェブサイト。こちらも探してみたけれど、そういう内容の記載は見当たらなかった。

トヨタレンタリースに電話して確認したところ、そういうニュースが出ているのは知っているけれど、ウェブサイト上に「中国パスポートの人には貸しません」というような表示はない、と断言されていた。やっぱりこれは「ガセ」なのか…それにしても、元はどこから来た情報なのだろうか?

■日本と香港で食い違う報道内容

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先のニュースに「日本のサイトからの情報として、香港メディア・東網が24日伝えた」とあったので、香港のニュースサイト『東網』から該当する内容の報道を探しだしてみた。

東網の報道のタイトルは「日本の会社が華人がクルマを借りるのを拒否する」というもの。内容をわかりやすくまとめると…

  • このニュースの出元は「内地旅遊網站」(中国国内の旅行サイト)であると書かれている。「日本のサイト」ではない。

  • トヨタレンタリースがこれらの内容を「宣布」したとあるが、「トヨタレンタリースのウェブサイト」とはどこにも書いていない

  • ネット上で違法に購入した偽造国際免許証(IDP=International Driving Permits…上掲のニュースでは「IPD」となっているが、これは間違いかと思われる)や、資格が合わない国際運転許可証(IDL=これはたぶんInternational Driving Licenceの略と思われる)を使用する中国人が増えてきたので…と書かれている。

  • そのため、トヨタレンタリースでは中国パスポートの所持者にクルマを貸さないことを決定…香港特区政府のパスポート所持者はこの影響を受けない…と結んでいる。

かなり情報に混乱が見られる。編集翻訳を担当した恩田有紀さんが見たのは私と同じニュースなのだろうか…しかし、最初に紹介した日本語のニュースをよく読むと

トヨタレンタリースによると、中国のパスポートを持つ人でも香港の運転免許で申請した国際免許証や、非正規の国際免許証を持って自動車を借りようとする人が増えてきた。

 …とある。ここを調べてみることにした。

■免許証ロンダリング?

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中国のネットショッピングサイトで検索してみたらすぐに出てきた。香港運転免許と国際免許への代理申請サービスである。1449人民元だから、現在のレートで約2万8千円程度。黒地の「商品名」の下に灰色の文字で、台湾や日本で自分で運転して旅行…と書かれている。

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以下、申請の説明をまとめてみる。

  • 2004年から、中国の運転免許証を所持する中国人は、香港運輸署にて試験を受けずに香港の運転免許を申請できるようになった。ちなみに10年間有効とのこと。

  • 中国は、国際運転免許を定めたジュネーブ条約を締結していないが、香港とマカオは返還以前に旧宗主国が同条約を締結しているため、返還後も条約は有効となっている。つまり、上記の2004年からの処置が抜け道になって、中国の運転免許証は国際免許証を申請できる状況にある。

 ここで注意したい点がもう一つある。

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中国の運転免許証を使って申請して得られる香港の運転免許証には証明写真がない。国際免許証の方にはあるのだが…。

トヨタレンタリースのウェブサイトに、「中国パスポートの人には貸しません」とは書いていないのだが、店頭ではこれらの確認が行われているのであろうか。

本来、国際免許証を申請できない中国の運転免許証を使い、香港・マカオの「特殊事情」を利用して国際免許証を申請するような仕掛けになっているため、これではレンタカーの貸出を拒否されても仕方ないだろう。日本政府は、今後も中国人観光客の誘致を拡大しようとしているのだから、このような「特殊事情」は、日本の関係者に広く周知されるべきと思われる。

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