黒色中国BLOG

中国について学び・考え・行動するのが私のライフワークです

腕時計とシャツの袖の問題、そして手巻き式と革ベルトの組み合わせについて

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たぶん、この2つのブログ記事のせいだと思うのですが、「黒色中国BLOG」は、中国に関するブログとしてよりも、腕時計のブログとして世の中には認識されているようでして、日々検索経由で少なくないアクセスを戴いております。ぶっちゃけ、中国関連の記事なんかより時計関連のアクセスの方がダントツで多いのです(´Д⊂グスン

このままでいいのか!」…と、ブログの在り方を憂慮するものの、時計関連の記事が多くの人々に読まれている現実が既にあるわけで、たぶん他の時計ブログではあまり扱わないニッチなネタなので、同じようなことに興味のある人が、検索経由でやってくるのでしょう。

…というわけで、我がブログの在るべき姿はさておき、最近私がずっと試行錯誤していたニッチな腕時計ネタをお届けしようと思います。

【目次】

シャツの袖と腕時計の大きさの問題

腕時計趣味にハマった多くの人が、「シャツの袖の内側にお気に入りの腕時計がうまく収まらない」という悩みを抱えて日々悶々と過ごされていると思います。誰でも、腕時計にハマると一度はこの悩みに突き当たることでしょう。

たまに諸事情あってシャツの上から巻きつける人もいるのですが、基本的に腕時計はシャツの袖の内側に収まるのが正しい。左腕を軽く伸ばして「サッ」と袖口から腕時計のぞかせて時間を見て、右手の助けなく「スッ」と袖口に戻るのが理想形。こういう状態だと、シャツの袖が腕時計を守ってくれるので、不用意にどこかにぶつけて傷つけることも少なくなります。

でも、最近流行りの機械式腕時計は「デカ厚」が基本でして、特に「デカ厚」でないモデルでも、それなりに厚みがありますし、合わせて革ベルトも厚手のゴージャスなのが…それに加えてDバックルが…となってきまして、腕時計がシャツの袖口にキレイに収まらない…という悩みが噴出してきたわけです。

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▲39-80サイズのワイシャツに、セイコースピリットメカニカルSCVS003(ケース幅は38ミリ、竜頭込みで40ミリ。革ベルト+Dバックルに換装)を合わせた事例。厚手の革ベルトにDバックルもつけてますけど、一応は袖口に収まっています。

パネライにハマっている人などは、わざわざ袖の広いオーダーメイドシャツを用意したりするそうで、私もパネライこそは持っていないものの、大きめのシャツを選んで裄丈を直したりしていた時期もありました。でも、基本的には、服装を腕時計に合わせるのではなく、服装に合った腕時計を選んで身につけるのが王道ではないか…と私は考えるわけです。

お気に入りのシャツに腕時計が収まらない

よほど身体の小さい人でもない限り、標準的なカッターシャツを選べば、ケース幅40ミリ前後の自動巻きはなんとか袖口の内に収まると思います。

私も大体そんな感じなのですが、最近は仕事でスーツを着る時以外でも、ジャケットに長袖シャツというスタイルが増えてきまして、「今日は仕事じゃないんだけど他に着るものがないからスーツを着てます」みたいな雰囲気にしたくないので、ちょっと古風なジャケットを着て、革靴を履いて…というようにしております。目指すは昭和30年代…みたいな。

そこで最近お気に入りのオックスフォードシャツがあるんですけど、これはスーツを着る時に合わせているワイシャツとは違って袖口が小さいので、ケース幅40ミリクラスの自動巻き腕時計はキレイに収まらないのです。

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▲お気に入りのオックスフォードシャツに、セイコースピリットメカニカルSCVS003(ケース幅は38ミリ、竜頭込みで40ミリ。革ベルト+Dバックルに換装)を合わせた事例。一見、袖口に収まっていますが、上部をよく見ると袖が盛り上がってます。これだと見る時にも収める時にも右手の補助が必要になるし、腕を振って歩いている内に、袖から腕時計が出てしまって、不意に何かにぶつけた際に、腕時計に傷がつく…ということになりかねませんし、無理矢理袖口に腕時計を収めても、異物感があって装着感が悪く、しっくり来ません。

こういう時こそ、私の愛機であるチープカシオを選べば、何の苦労もなく全て解決!チープカシオでなくても、薄型のクォーツ式腕時計を用意すればいいわけですが、昭和30年代にクォーツ式腕時計はなかったし、オフの時に脱力して古風な格好をするわけですから、チプカシや真面目なクォーツ式に出てきてもらうと、無粋で窮屈な気分になるのは私だけでしょうか…時計趣味者ならわかっていただけると思いますけど、やはりこういう時は遊び心のある機械式にこだわりたい。できれば服装に合わせて昭和30年代に製造されたものを選びたい…こうやって人は時計趣味の底なし沼に堕ちていくわけです。

「手巻き式」という選択肢

ようするに、小さくて薄い機械式腕時計が必要なわけです。となれば、「手巻き式」という選択肢が浮上してきます。

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▲こちらは1964年(昭和39年)に生産された「66-0010」というセイコーのビンテージ。ケース幅は34ミリ。竜頭込みにしても36.5ミリ。17石、DIASHOCK、もちろん手巻き式なのであります。

私は一時期、手巻き式にハマっていた時期がありまして、その時に購入した一品です。私の写真が下手なのもあると思いますけど、実物はもっとキレイです。限界まで無駄を削ぎ落としたデザインで、文字盤になだらかな凹凸があって、光の反射が美しい…眺めているだけで幸せになれます。

セイコーのアナログ式腕時計の基本デザインは、もうこの時期には完成していたみたいで、

セイコー グランドセイコーメカニカル SBGW231

セイコー グランドセイコーメカニカル SBGW231

 

現行のGSと比べても、基本デザインはほぼ同じです。むしろ、66-0010の方がもっと洗練されている。手巻きだからこそ、薄くシンプルにできるのでしょう。

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風防はプラスチックですけど、「ドーム型」でして、これがまた独特の美しさと気品を漂わせるのです。厚さは10ミリだからそれほど薄くもない?ですけど、風防がドーム型でなかったら、もっと薄かったでしょう。

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▲裏蓋はスクリューバックではなくて、スナップ式です。あまり腕時計の裏をじっくり見ることもありませんが、ゴツゴツしたスクリューバックと違って、スナップ式の裏蓋は何とも味があって良いものです。但し防水機能は全くありませんので、この点は取扱注意。詳しくは後で書きます。

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この66-0010は、11年前に中国で購入しました。価格は80元ぐらいだったかな…古いセイコーが大量に出ていた時期がありました。たぶん、中国社会の移り変わりで、こういう古いものが全く評価されない時代だったのでしょう。いまe-bayで見ると、けっこう値上がりしているので驚きました。

そんな骨董品が使い物になるの?」という人もいるでしょう。

小学校に上がる時、祖父が手巻き式の腕時計を買ってくれたのが、腕時計人生の始まりだったので、私は手巻き式に抵抗感ありません。

それと、手巻き式は部品点数が少ないのもあってか、なかなか壊れにくいですし、それなりに時刻も正確です。

それにそもそも、私が探しているのは、オフの時の遊びの腕時計ですから、毎日使用したり、電波時計並みの精度を求めるものでもなく、休日の朝に時間を合わせてゼンマイを巻き上げ、夜に寝るまでの間、数分の誤差が出ない限りは、実用上何の問題もないのです。

ただ、1つの大きな問題点として、ベルトをどうすべきか?という難題が浮上してきます。長い枕でしたが、これが本記事の本題なのです(!)

古風な腕時計用革ベルトとは?

最近は「デカ厚」ブームの影響なのか、革ベルトを探していると、「厚手」と書かれているものが多いのですね。それなりの大きさ、重さの腕時計に合わせるには、革ベルトも大きく、厚いものにする必要があります。

ただ、昔の写真を見ても、それこそ軍用の特殊な時計でもない限り、パネライ級のデカ厚革ベルトをつけているのは見当たらず、私の祖父が身につけていた腕時計を思い出しても、薄いベルトの記憶しかありません。

せっかく軽くて小さな66-0010ですから、なるべく軽くて薄い革ベルトを選びたい。

そして、66-0010のシンプルなデザインに合わせて、革ベルトもシンプルなもの…竹符とかの型押し模様がないスムースレザー(無地)で、ギラギラの光沢もないつや消しの黒が良い。

尾錠はステンレスの白で、小さくて角がない丸っこいもの。顔が映りこむような鏡面仕上げではなく、できればサテン仕上げがベスト。

最近の存在感てんこ盛りの腕時計が私は嫌なのです。腕時計はブランドを他人に見せびらかして見栄を張るための道具ではないのです。

全然控えめで目立たない、着けているのも忘れるぐらいに存在感がない、全く主張しない、一切出しゃばらずに、シャツの袖の下で静かに時を刻み、持ち主が時間を知りたい時だけに、こっそり教えてくれるような腕時計が欲しい。

有名人が身につけていたというエピソードがなく、北極や南極やエベレストや月にも行ったこともなく、究極の精度を追求したわけでもなく、実際に使うことがない複雑な機能が搭載されてもない…一切の煩悩を滅却した悟りの境地、枯山水のような「時間を知るための道具」が欲しい。

…というわけで、そういう条件に合った革ベルトを探し続けたのでした。

こういう時こそセイコー純正

アマゾンとe-bayでずっと革ベルトを探し続けたのですが、なかなか良いものが見つかりません。

数日悩み抜いて気づいたのは、「セイコーの腕時計デザインが50年以上不変で、最新のGSにも引き継がれているのなら、革ベルトだってそうじゃないのか?」ということ。

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▲そこで見つけたのがこれ。量販店のベルトコーナーでよく見かけるお馴染みのケースのアレです。実売価格は1200円ぐらいで買えました。

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DXH3A」という型番。「18-15」というのは、腕時計本体のラグ側の幅が18ミリ、尾錠側の幅は15ミリ…という意味。

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▲ラグ側と尾錠側でベルト幅が3ミリも違う…というのは、こんな感じでテーパー(先細り)になっているわけです。こうすると、ベルトが細くなりますから、腕に触れる面積も少なく、手首の動きにもストレスがかかりにくくなるから、装着感が向上するのです。

昨今のデカ厚を見慣れていると、DXH3Aは「女性用か?」と思うぐらいに細いですけど、小さく軽い66-0010に使うのはこれで十分です。

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▲厚さは3ミリ。ステッチの部分は厚さ1ミリで、真ん中部分が少し盛り上がるようになっているので、一見シンプルながら微妙な変化があって、結構飽きません。無論、つや消しの黒です。

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▲そして、この革ベルトは「撥水(はっすい)加工」がかけられており、防臭・抗菌作用もあるとか。手首の汗を吸い込みにくいようになっています。たとえばNATOベルトなんかだと汗をたくさん吸い込んでしまうので、夏に着用していると、肌へのベタツキ感もあって、長く使用しているとニオイが染み込むのですが、DXH3Aはそういうのをある程度抑えてくれるわけです。

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▲尾錠も概ね希望通り、小さく丸っこいデザインで、軽いサテン仕上げ加工がかかっていました。

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▲66-0010にDXH3Aを取り付けてみました。半世紀以上の時を経ても、やはりセイコー純正品同士はよく合います。この組み合わせで重さは30gぐらいです(!)。

本人にとっては、長年のこだわりの末に到達した境地で、これ以上の組み合わせは無い!最高の組み合わせだ!…と感動しているんですけど、他人からみたら、単なる地味でジジ臭い組み合わせにしか見えないでしょうねw

腕時計を品評する時に、上の写真のようにベタ置きの状態で観察するのはよく有ることですけど、腕時計は腕に巻いた状態で使うものですから、実際に装着して見なければ、その組み合わせの本当の美しさは判断できません。

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▲お気に入りのオックスフォードシャツを着た上で、66-0010+DXH3Aを装着してみました。まだ革ベルトが新品で手首に馴染んでいませんけど、これ、全然装着感がないです。メチャクチャ軽い!手首へのストレスがない!そして袖口には全然ひっかかりません。

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▲ダイバーズのように回転ベゼルがあるわけでもなし、クロノグラフのようにボタンがたくさんついているわけでもないので、狭い袖口の内側にキレイに収まってスムーズに出し入れ出来ます。やっぱり腕時計はこういうのじゃなくっちゃ!

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▲時間を知りたい時以外は、袖口の内側で静かに潜んで、本人すら身に着けているのを忘れてしまう…そういう理想形がやっと実現しました!…でも、これで問題がなくなったわけでもないのです。

スナップ式は夏に不向き(汗の問題)

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▲スナップ式の腕時計の問題点として、防水性が全くないというのがありますけど、「泳いだりしなけりゃいいんじゃないの?」という単純な話ではありません。スナップ式は汗の影響を受けやすいのです。

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▲こちらは、私が愛用している「ラケータ」というロシア製腕時計ですが…

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▲これもスナップ式です。右側の窪みにマイナスドライバーを入れたら、簡単に開けられます。

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▲ムーブをしょっちゅう眺めたいとか、自分で調整・修理しやすい方が良いとか、そういう人に向いているのがスナップ式ですけど、汗が浸透しやすいのが難点です。

昔、ランニングをしている時に、大きな文字盤のラケータだと時間が見やすいから良いのではないか…と思って、ラケータを身に着けて走ったことがあるんですけど、確かに大きくて時間が見やすいのです。でも、冬場に走っていたら、風防内が曇って文字盤が読めなくなったことがありました。ラケータの裏蓋が肌に直接触れていると、走って熱くなった身体から汗がにじみ、冬場はウィンドブレーカーを着てラケータは袖の内側にありますから、汗と熱気が逃げずに時計内部に入り込んでしまうのでしょう。

たぶん…ですが、ロシアのように寒くて乾燥している地域だと、汗の影響に神経質にならなくても良いので、ラケータの腕時計では、スナップ式が20世紀後半になってもずっと採用されていたのではないかと思います。

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▲汗が浸透しやすい問題に気づいてから、ラケータをランニングに使用するのはヤメて、その上で当て革付きのBUNDストラップに交換しました。

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▲当て革があるので、ラケータの裏蓋が直接手首の肌に触れません。当て革も防水なので、汗が浸透することなく、裏蓋に汗が染みることもないわけです。

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▲66-0010の裏蓋は、ラケータのように大きな窪みもないので、それほど容易に汗が浸透することはないと思うのですが、真夏に使い続けたらほぼ間違いなく、ムーブメントが汗で錆びてしまいそうです。以前、防水のクォーツ式腕時計を夏場に使い続けて、腐食させた経験があるので、スナップ式ではあっという間に錆びそうな気がします。

そもそもは長袖シャツの内側にキレイに収まる、休日用腕時計として66-0010に着目したわけですから、真夏の汗ダラダラの状態で使用することはなく、実用上は問題ありません。

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「自分だけの宝石」がまた1つ、増えてしまいました。あんまり可愛くなってきたので、近々オーバーホールに出してあげようと思います。

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