▲こちらRFAのニュースですが、陜西省でVPNを使って国外のネットにアクセスしていたため、罰金500元が課せられた件について、中国国内で議論になっているとの記事。
興味深いので、こちらにて取り上げておきます。
発端となった事件
箇条書きで要訳しますと…
- 5月19日に陜西省漢浜公安局が出した公告によると、去年9月からスマホにVPNアプリを入れて「壁越え」(中国語では「翻墙」…中国のネット規制を越えて国外のネットに接続すること)していた楊さんは「建立非法渠道进行国际联网」(違法なネット接続を行った)として500元の罰金を課せられた。
- 本件については多くのネットユーザーが当局の対応を批判するだけでなく、環球時報も「壁越え」を違法と見なすことは出来ないとして当局の批判を行っている。
環球時報は人民日報傘下の新聞で、あくまでも体制側の意見を伝えるものとして、有名な中共寄りのメディアですけど、その環球時報ですら今回の件については「壁越え」を擁護する立場を取っている…それはなぜなのか?
環球時報の編集長も壁越えをしていたw
- 環球時報の編集長である胡錫進氏もしょっちゅう壁越えをしており、「壁越え」を「違法」と見なすことには反対している。
- ファイアーウォールの必要性はあるものの、様々な原因で壁越えは認めざるを得ないものであり、安易に「違法」のレッテルを貼って良いものではない。
そういえば、トランプのツイートに関して、中国国内でもほぼリアルタイムで報じていることがあり、「中国国内では見えないのでは?」というのが話題になっていましたけど、やっぱり見てるんですね。ただ、よく考えてみると…
▲「米軍がウイルス持ち込んだ」のツイートで世界的に有名になった、中国外交部の趙立堅報道官だって、ツイッターをやってるからには何らかの方法で「壁」を越えているわけで、一般市民がVPNを使って壁を越えたからって、それで違法とみなされて罰金を取られるのは理屈に合いません。
実は、「壁越え」で罪に問われた人は少ない
- 現在、中国でVPNの利用者は2千万から3千万人とされる。
- ある学者は外国の図書館のサイトで資料をダウンロードするためにVPNを利用している。
- 当局がVPNの利用を違法とする根拠となっている《计算机信息网络国际联网管理暂行规定》は、1996年に定められた規則だが、執行されたことは非常に少ない。
- その後、漢浜公安局は、壁越えを違法とする公告を削除した。
一昨年の暮あたりから、VPNの取締が厳格化されて、行政処罰を受けたとか、民主活動家が捕まった…というニュースが続いたことがありました。
【「中国でVPNを使ったら行政処罰」の真相を探る】(1)「広東公安執法信息公開平台」の正体 - 黒色中国BLOG https://t.co/GVwrJ56oLc 先日TLを騒がせた件の詳細…まずは広東省韶関市の公安局の「行政処罰決定書」をネット上で公開していた「怪しいサイト」が一体何なのかを調べてみました。 pic.twitter.com/YmFwYkXmlk
— 黒色中国🍀 (@bci_) 2019年1月7日
▲その顛末はこちらに書きましたけど、あれから1年以上が過ぎて、中国の世論も随分変わってきたようですね。
そもそも、「壁越え」を違法とする規則そのものが、24年前に作られたものであり、今とは社会状況が全く異なります。
今後、中国はこれまで以上に、海外から情報を得て、海外に情報を発信していかなきゃいけないので、壁越え=違法と見なす規則や取締は、現状に合わなくなってきているのかも知れません。
外国人としては、中国に居る限りVPNのお世話にならざるを得ず、VPNで壁を越えているだけで処罰されるのでは、生活にも仕事にも差し支えるわけですが、今回の件を見る限り、壁越えで何らかの反体制運動でもやってない限りは、その対象にならないのでは…と思われます。とはいえ、油断しちゃダメですけどね。