黒色中国BLOG

中国について学び・考え・行動するのが私のライフワークです

【田中芳樹研究】対談、エッセイ、共著をまとめて借りてみました

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▲こちら以来、【田中芳樹研究】と題して、田中芳樹さんと中国にはどういうツナガリがあるのか、中国をどのように描いてきたのかを『銀河英雄伝説』を読む前につかんでおこうと、対談やエッセイの類いを片っ端に読んでいるわけですが、キリがないので、とりあえずは、

▲こちらの2冊を読むだけで良かろう…と思ったわけですが、他の対談、エッセイ、共著にも中国と関連するものは少なくないので、いますぐ全部読まないにしても、図書館でまとめて借りてきて、状況を把握し、次に買うか借りる時の目安にしておこうと思いました。

【目次】

チャイナ・イリュージョン 

チャイナ・イリュージョン (中公文庫)

チャイナ・イリュージョン (中公文庫)

 

 ▲巻頭から田中芳樹さんの三峡旅行の写真が6点あり。これらは

▲『長江有情』では使われなかった写真ですね。何かこの時の旅行記が入ってないか…と探してみると、同行者だった狩野あざみさんの「悠々長江 旅の思い出」という小文が収録されており、この中に旅程が記録されていた。

旅行は、上海から入って西安に飛び、成都、重慶を経て船で長江下りを楽しみ、武漢から杭州へ行って上海に戻り、最後は香港を経由して帰国するという計画だった。(中略)半月以上かけての旅は、主に史跡を廻るものになった。(199頁)

『長江有情』では重慶から武漢の間だけしか取り上げていなかったが、実際の旅行はもっと広範囲だったのだ。

それと、なぜか最後に上海から香港に出てから帰国する…という遠回りの寄り道をしている。

徳間書店も、3人の作家と1人の写真家を、これだけの大掛かりな旅行に誘ったのだから、それで作られたのが『長江有情』ただ1冊というのは信じられない。他にも何か本があるのか、本になってなくても雑誌で掲載されているのか、他の目的があったのでは…と予想しているが、目下それらの手がかりはない。

本書は、タイトルの通りの内容で、田中さんの中国小説分野の作品世界を紐解く本である。インタビュー、対談なども多く含まれている。中国分野の作品に絞り込んで読み始める際に、この本は役立ちそうである。

中国武将列伝

中国武将列伝〈上〉 (中公文庫)

中国武将列伝〈上〉 (中公文庫)

 

上巻のみ借りてきた。こちらは、陳舜臣氏との対談録『中国名将の条件』の巻末にあった中国歴代名将百人を拡大したような内容である。物語単位ではなくて、人物単位でそのエピソードを読むような内容である。

「イギリス病」のすすめ

「イギリス病」のすすめ (講談社文庫)

「イギリス病」のすすめ (講談社文庫)

 

 対談録である。対談相手の土屋守さんは、田中さんの同級生…と冒頭で明かされるが、どんな人かと巻末の紹介を読むと、フォトジャーナリストとある。ロンドンで日本語雑誌の編集長をつとめ、イギリスに関する記事を執筆。ググってみると、現在すぐ出てくる肩書は「ウィスキー評論家」となっている。

この本は…特に中国とは無関係の、英国に関する本なので、銀英伝を読み終えた後で、時間のある時に読んでみるか…と思いながらパラパラと頁をめくったら「中国」という言葉が出てきた。128頁から香港返還の話が出てくるのである。 

陳舜臣氏との対談録でも、一部アヘン戦争について語る箇所があって、ちょうどこれらの本の出版時期が香港返還(1997)と重なっていたので、話題的にも出やすかったのだろうが、ここでは田中さんの「中国近現代史観」が披露される。「現代中国観」も垣間見える。このあたり、田中さんはかなりシッカリとした譲れない「中国観」をお持ちのようだ。これについては、他に書かれたものを探せば、もっと詳しい文章が出てくるかも知れない。

それと、「あとがき」に重要なことが書かれていた。

もともとF君(※社会思想社の編集者)からは、「エッセー集を出版させてくれないか」という申し出があったのですが、私は自分が小説家であるということに妙なこだわりがありまして、(一)講演はしない(二)TV出演はしない(三)小説以外の文章はなるべく書かない…というわがままを通しております。この(三)のせいで、これまで書いたエッセー、雑文の類を全部集めても、本を作るにはとうてい文量が足りません。(176頁)

つまり、私の「探しもの」が見つからないのは、この3つの「こだわり」のせいなのだ。そもそも講演をしてないし、小説以外の文章はほぼ存在しないのだ。

私が愛読する司馬遼太郎は、晩年は小説を書かず(1984年~1987年の『韃靼疾風録』が最後の小説で、1996年に亡くなる)、講演と旅行記とエッセイばかり書いていた人なので、田中さんもそれらの作品はあるんじゃないか…と思って探していたのだが、そもそも存在しないのであった。

中欧怪奇紀行

中欧怪奇紀行 (講談社文庫)

中欧怪奇紀行 (講談社文庫)

 

 赤城毅さんとの対談録。赤城さんは『書物の森でつまずいて…』でも巻頭のインタビューで聞き手を務められていた。「紀行」とあるので二人で旅行したのかと思いきや、目次を読むと日本国内での対談である。冒頭で

九九年十一月、構想中の小説の取材のため、ハンブルクを拠点に北ドイツを回った田中氏に、赤城氏は通訳兼ガイドとして同行している。

 …と明かされている。そして対談最初の田中さんの発言が

ぼくはドイツにはまるで素人なのにもかかわらず、ドイツ人っぽい名前が出てくるような作品を恐れげもなく書いたりしております(笑)

であった。銀英伝をチラ見する限り、「ドイツ人っぽい名前」が大量に出てくるので、田中さんはよっぽどドイツにゆかりのある人なのだと思いこんでいたが、そうではないらしい。

とっぴんぱらりのぷう

とっぴんぱらりのぷぅ

とっぴんぱらりのぷぅ

 

本書は「ブックガイド」となっているが、2部構成で、第1部は全12回のインタビューで初出は理論社の「ミステリーYA!」というウェブサイトに2006年8月から2008年6月にかけて連載されていたものに加筆したもの。

第2部は柳広司氏、久美沙織氏、藤田和日郎氏との対談である。

田中さんがどんな本を読んできたのか…「芸の肥やし」になっているであろう「物語」が何であるのかが明かされるもの…と思われる。これも特に中国ついて触れる内容ではないので(中国の物語は出てくるが)、後回しにしておく。 

中国帝王図

中国帝王図

中国帝王図

  • 作者: 田中芳樹,狩野あざみ,井上祐美子,赤坂好美,皇なつき
  • 出版社/メーカー: 徳間書店
  • 発売日: 1995/12/01
  • メディア: 単行本
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黄帝から清の宣統帝(あの、ラストエンペラーだ)に至る52名の中国の帝王を皇なつきさんのイラストと共に紹介する内容。解説文は田中芳樹さんを始めとする計4名が担当。判型も大きいし、随分と金のかかった本…という印象。

私的に残念だったのは、田中さんが担当する最後の皇帝は清の太祖で、それ以後は他の執筆者が書いていること…つまり、本書を読んでも田中さんの「中国近代史観」はわからない。他の書籍で田中さんのアヘン戦争への強い関心は見えてきたが、本書ではその時代の皇帝について解説していないのである。

* * * * *

…というわけで、かなりザックリと「まともに全部読んでいない書評」を書いてみた。これから、これらの本を読もうとする人の手がかりになれば幸いである。