十数年ぶりにLOMO LC-Aの裏蓋を開けてみると、モルトプレーンが溶けていた…カメラの内部にこびりついたドロドロのモルトプレーンを念入りに除去して、やっと新しいモルトプレーンを貼る作業に…というのが今回の内容なのですが…
▲最初に断っておきますが、今回のブログ記事はかなり長いです。今の時代にLOMOをまだ使っていて、自分でモルトプレーンを交換しようという人が一体どれぐらいいるのか知りませんけど(笑)、たぶん今回の作業は他のカメラの修理でも参考になるかと思いますので、こちらに細かい作業の全貌を詳細に記録しておくことにします。
【目次】
カッターの切れ味が肝心
やってみてわかったのですが、モルトプレーンの交換で最も肝心なのは「カッターの切れ味」です。ミリ単位の精度の切り出しが必要なので、切れ味が鈍いと作業が全然はかどりません。
▲大体のカッターはお尻の部分に「SNAP OFF」とか書いてる「溝」がありまして、このお尻のパーツを取り外して、カッターの歯にあわせて、カッター側の「溝」に合わせてパーツを差し込んで曲げてやれば、刃を折ることができます。それで刃先を鋭利にしてから作業されるのがベターです。もっと切れ味の良いカッターがあるのなら、そちらを使用する方がベストです。
作業の全容と手順
「モルトプレーンの交換」は難しいことではありません。
LOMOの場合、ただ3つモルトプレーンを切り出して、それを貼り付けるだけです。
ただ、やりやすい手順で考えると、次のようになると思います。
(1)裏ブタ下部…ここは単に真っ直ぐなだけで簡単です。
(2)裏ブタ上部…下と違って、途中で太さが変わり、金具の裏側に入り込ませなくてはいけない部分もありちょっと難易度があがります…でも、そんなに難しいこともありません。
(3)カメラ本体のヒンジのそば…ここは撮影済みのフィルムが巻き取られる軸の直ぐそばなので、ちゃんと遮光してやらねばなりません…でも、単に長方形に切って貼るだけなので、ここも簡単です。
モルトプレーンの交換は決して難しい作業ではありません。「難しい」のではなくて「面倒くさい」のです。単にモルトプレーンを切って貼るだけだからカンタンなのですが、なにが面倒くさいのかといえば、「採寸」と「切断」が面倒なのです。
だから「面倒」を解消する上で、採寸のための道具(ノギスと柔らかいメジャー…これはこの記事の中には出てきませんけど使用しています)と、切断のための道具(冒頭で述べたようによく切れるカッター、ステンレスのモノサシ、カッティングボード)が必要なわけです。
モルトプレーン交換
裏ブタ下部
▲まず、ノギスで採寸してみたらフタ側下部のモルトプレーンを貼りつける「溝」の縦幅は5ミリでした。ちなみにこのノギスはダイソーで売っているもの。安い割に使い勝手が良くて1つ持っていると何かと便利です。
▲横幅ですが、単にノギスを当てて測ったら10センチ。ただし、裏ブタは両端が曲がっていますからそこも計算に入れて12センチぐらいで見ておきました。そういえば…
▲私が購入したモルトプレーンは横幅12.5センチなので、0.5センチ長いだけですね。ということは、単に縦幅5ミリでスパッと切ってしまって貼り付けて、あとで余分はカットしてやればよいわけです。
▲私が購入したモルトプレーンはこちらです。
▲出来ました。ただ5ミリ幅で切っただけ。
▲こちらは切り出しの際の参考画像。カッティングボードの上にモルトプレーンを置いて、ステンレスのモノサシをしっかり当てて固定し、カッターで切り出します。カッティングボードの直線が1センチ幅で、点線が5ミリ幅なので、それを目安にステンレスモノサシの両端を合わせてやれば良いので、非常にカンタンなのでした。
▲切り出したモルトプレーンの裏に両面テープの粘着面の紙がありますけど、これにカッターで真ん中に切れ目を入れて、半分だけ剥がして貼り込んでやります。半分貼れたら、残りの紙をまた剥がして貼り込んでやる。その方が手にくっつきにくいので、作業がやりやすくなります。
▲まずは先端部分をキッチリを貼り込んで、そこから徐々に徐々に爪楊枝で押してシッカリを貼り込んでやります。ちょっとやったらすぐ慣れます。私が使っている爪楊枝は一般的な細いのではなくて、太いタイプです。これも百均で売ってます。太い爪楊枝は他にカメラの細かい部分の汚れを取る際にも便利です。
▲全部貼れたら、念押しに浮いている部分がないか確認するようにして爪楊枝で押し込んでやります。
▲これで裏ブタ下部の貼り込みは完了。ただ、ちょこっと飛び出てますね。
▲5ミリ程度余りました。これはハサミで切ってやって下さい。
▲こういう時に使用するのは小型のハサミが良いです。これは私が釣りの際に使っている裁縫用の折りたたみハサミ。先端が小さいものの方が使いやすいです。
▲これで裏ブタ下部の貼り込みは完全に出来ました。
裏ブタ上部
▲裏ブタ上部のモルトプレーンの溝は場所によって縦幅が変わります。
▲こちら側は縦幅5ミリ。下と同じです。
▲1本につながっている必然性を感じなかったので、まずは5ミリ幅の部分だけを貼り込んでやりました。左側の斜めになっている部分はカッターでちゃんと切ってあります。
▲飛び出した部分はハサミでカット。この金具部分の裏に入り込まさなくてはいけないのがちょっと面倒なんですけど、爪楊枝で押し込んでやればなんとかなります。
▲裏ブタ上部のモルトプレーン溝の細い部分は大体2.5ミリ程度かな
▲長めに取って、2.5ミリ幅を切り出して貼り込んでやりましたが…
▲最後の太い部分と接合する箇所でモルトプレーンが足りなくなったので、小さくモルトプレーンを切り出して隙間を埋めてやりました。
▲これで裏ブタ側の上下両方できあがりました!
カメラ本体のヒンジのそば
▲ここは横幅42ミリ、縦幅5ミリでした。
▲横幅50ミリ、縦幅5ミリ。モルトプレーンの切り出しで重要なのは、最初からピッタリのサイズで切り出すのではなくて、横幅長めに切り出してから、実際に貼り込む箇所に合わせて余分を切ることです。
▲余分を切って貼り付けてやりました。
作業完了!
▲完成すると、まるで新品みたい(^^)
▲この隙間の埋め込み部分も上手くできました。
モルトプレーンを新しく張替えてすぐに気づいたのは、カメラを構えた時の感触がシッカリしていること。以前はモルトプレーンが劣化して「痩せて」いたので、カメラをホールドして握った時に裏ブタがちょっと動いていたのですが、新品のモルトプレーンになると無駄な隙間がなくなって裏ブタの「ガタガタ感」がなくなりました。つまり、これで遮光性も高まっているはずです。
ついでにやっておきたいメンテナンス
裏ブタのロックの動きの改善(成功)
▲裏ブタの閉じる側(フィルムのパトローネがセットされる側)の閉じ口にはこんな金具があります。
▲裏ブタの「カギ」になった金具との組み合わせで、裏ブタを固定するためのフックなのですが
▲この巻き戻しクランクを引き上げたら、あのフックが持ち上がって、先程の裏ブタ側の「カギ」が外れて、裏ブタが開く…という仕掛けです。
その本体側のフックの「機構」が経年劣化か油切れかで、動きがぎこちないので、フィルム交換の際に気持ちよくないのです。
▲あのフックのそばの隙間に、スーパー5-56をちょっとだけ(ホントにチョット)注して、何度も巻き戻しクランクを引き上げてやったら、油が回って動きが改善しました。
作業後は、ティッシュペーパーなどで余分な油分を丁寧に取り除いて下さい。
アクセサリー・シューのスプリング(失敗)
▲アクセサリーシューにストロボやファインダーをつけてやることがあるのですが、現在我がLC-Aのアクセサリーシューのスプリングは弱くてシッカリと固定できません。
▲よく観察してみると、LC-Aのアクセサリーシューのスプリングって、ものすごく単純な構造ですね。そりゃ弱るわw
▲だから、爪楊枝を差し込んでみました。
▲両方に爪楊枝。
これで一晩おきましたけど、スプリングの強度はほぼ変わりませんでした…(´Д⊂グスン
外部ストロボを挿している時は注意して、外部ファインダーを挿している時はパーマセルテープを貼って脱落しないように対処するのが無難みたいです。
これらの作業を経て、LOMO LC-Aの動作は快調になり、すっかり愛着がわきました。とりあえず試し撮りに行ってこようと思います(^^)
▲我がブログでは再三登場するスーパー5-56。フッ素樹脂入りの5-56です。普通の5-56よりも割高になりますけど、こういうものは少量づつしか使いませんので長持ちします。