江蘇省宜興市内の野菜市場で行商する張建国さんは、「行商人虐め」を専門とするような悪名高い「城管」の一人を刺し殺して逮捕。警察に連れられて現場検証を行う時、彼は「俺が死刑にされても後を継ぐ人が絶えないぞ」と叫ぶと、見物する大衆からは熱烈な喝采拍手を博した。それはすなわち今の中国だ。
— 石平太郎 (@liyonyon) 2017年5月18日
先日、石平さんが紹介してくれた中国のニュースの、悪徳城管を刺殺した行商人のセリフ「俺が死刑にされても後を継ぐ人が絶えないぞ」が、まるで芝居の一幕を見るようで、中国人が拍手喝采したのもわかるような気がしたけれど、あのセリフは中国語では一体なんと言っているのか気になったので調べてみました。
砍头不要紧, 只要主义真
▲こちらに張建国さんの言葉が掲載されてました。
江苏宜兴菜场5月16日杀城管案的主角17日到事发地指认现场,他高呼:“砍头不要紧,只要主义真,杀了张建国,还有后来人!”周围群众一片叫好。
近几年,中国官民矛盾加剧,暴力革命越来越得到各界认可
「杀了张建国,还有后来人!」…直訳すれば「張建国を殺しても、後から来る者がいる」ですが、中国語でこれを叫ぶのはカッコイイですね。でも、この前の部分は何なのか。
「砍头不要紧,只要主义真」
直訳すれば「砍头」は「頭をぶった斬る」。
「不要紧」は「構わない」
「只要主义真」は「主義が真なら」ですね。
「主張が正しければ首を斬られても構わない」ですけど、ますます芝居がかっているというのか、カッコイイw。
ちょっと調べてみると、このセリフには元になっているものがあるのがわかりました。
夏明翰という詩人の言葉がオリジナルにあるようです。
▲夏明翰さん
残念ながら、彼の経歴は中国語しか見あたりませんでしたが、要約すると下記のようになります。
- 1900年湖北省生まれ
- 中国現代詩人、中共党員
- 学生の時に、北洋軍閥に反対する運動に参加
- 1920年に毛沢東と知り合う
- 1921年に中共入党
- 1927年に蒋介石の中共弾圧が強まり、地下活動に入る
- 1928年に武漢で逮捕され、処刑される前に「砍头不要紧,只要主义真。杀了夏明翰,还有后来人。」辞世の詩を残した。
夏明翰は毛沢東の初期の同志であり、反動政府によって殺された中共党員だったわけです。
▲張建国さん
張建国さんは、市場で働く行商人で、城管を殺めたわけですが、実は高い教養の持ち主だったのでしょうか。
「砍头不要紧,只要主义真」は文革の時にもよく使われた言葉だそうなので、もしかしたら張建国さんはその時にこの言葉を覚えたのかも知れません。
拍手喝采した人々が、彼の言葉のルーツをどこまで知っていたかはさておき、今の中国社会にある「空気感」が伝わってくるエピソードでした。
ちなみに、張建国さんは死刑を喜んで受け入れると表明し、処刑後の臓器提供も希望しているそうです。