黒色中国BLOG

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なぜ台湾人は香港国安法第43条実施細則を恐れるのか?

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▲こちらの記事、大変多くの方々にご覧いただきました。ありがとうございましたm(_ _)m。

香港国家安全維持法の第43条は、次のようになっています。

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▲『香港国家安全維持法(全66条)、全訳しました 中国当局がなんでもできる体制ができた』より引用。

以下7項目続いてまして、ようするに、この法律における香港警察の役割を規定しているわけです。

https://sc.isd.gov.hk/TuniS/www.info.gov.hk/gia/general/202007/06/P2020070600748.htm

▲そして、第43条を具体的にどのように行うのかを決めた『実施細則』なるものが、7月6日に香港政府から発表されました。

7日から施行されておりますが、これが現在、台湾で問題になっているのですね。

一体なぜこれが台湾で問題になってしまうのか。第43条と実施細則が、どうやって台湾に影響を与えるのか…というのを調べていると、どうもこれは日本人も無関係のことではないのが見えてきたので、とりあえず第5項にしぼって、こちらに現在わかっている状況を説明してみようと思います。

【目次】

実施細則第5項には何が書かれているのか?

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▲こちらが問題の実施細則第5項。私は繁体字苦手なので、簡体字で引っ張ってきましたw

要訳すると…

  • 香港の警視総監が、国家安全に危害を与える犯罪の防止および捜査に必要であるとすれば、保安局局長の承認を経て、外国および台湾に対し、資料を要求することができる。
  • 要求は書面で通知され、指定の期限内に、指定の方式で、香港の警視総監に資料を提出する。
  • 「資料」の内容は、
    ・香港における活動、および個人資料
    ・資産、収入、収入源、支出

…となっています。

ただ、ここまで読んで、「あれ、変だな?」と思ったのは、「香港における活動と個人資料」(在香港的活动及个人资料)ですね。なんでこんな項目があるんだろう?

対象は香港人だけじゃない?

私は最初、この「実施細則」を読み始めた時に、あくまでも香港人の民主派を弾圧するのが前提で、外国政府に対し「そちらに逃げ込んでる香港人の情報を渡しなさい!」というものだと思いこんでいたのですね。

台湾は香港人「亡命者」の受け入れをしていますし、彼らが海外で香港の民主化活動をする際に、香港政府としてはその情報が欲しい…そういうものじゃないかと。

だったら、そもそもは香港から逃げている人たちだから、「香港における活動と個人資料」なんか、香港政府の方で持ってそうですよね。

ただ、振り返ってよく読むと、この実施細則には、香港警察が要求する資料の人物を「香港人」と限定するようなことは、どこにも書いてないのです。

台湾が恐れていること

▲BBCの記事で、国家安全維持法の実施細則に関する台湾の状況が報じられていますが、最後の方に

  • 「香港《国安法》的施行细则对台湾人民会形成境外白色恐怖」
  • 「台湾人担心,未来类似李明哲的事件恐怕还会再次发生,任何人只要曾经批判共产党,或曾支持香港反送中运动的台湾人,如果要前往香港都可能会面临风险。

…ということが書かれてまして、ようするに、香港の「実施細則」は台湾人に対して白色テロとなりうるものであり、李明哲事件の恐怖が繰り返されるのを恐れている…ということ。

「李明哲事件」とは、

▲こちらに説明されてますが、2017年に友人に会うために広東省を訪れた中国民主化支持の台湾人が逮捕され、国家政権転覆煽動罪で懲役5年の判決を受け、今も服役中の事件です。

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▲李民哲さんの釈放を求める台湾民進党の記者会見(ソースはこちら

つまり、台湾において中共を批判したり、香港デモ支援の声を挙げた人はたくさんいたわけですが、香港警察が「国家安全に危険を及ぼす人物なので情報を提供しなさい!」と言い出して、従わなければ香港にいる台湾政府関係者が処罰される可能性がある。

それと、台湾人としては、2017年の李民哲事件があったので、今後は中国に行かずとも、香港へ行くだけで李民哲さんのように逮捕される可能性がある…のを恐れているわけです。

でも、これらは今後、日本人にも起こり得ることですよね。

「実施細則」は、これからもうちょっと細かく読み込もうと思います。

 ▲こちら、ジョシュア・ウォン(黄之鋒)さんの新刊。日本語での翻訳が出るみたいです。