▲17歳の中国の少年が、「素晴らしい生活」を求めてロシアに越境し、ロシアの国境警備隊に逮捕…というニュース。
GDP世界第2位の中国から、12位のロシアに密入国して、「素晴らしい生活」はあり得るのか?…気になりましたので、ちょっと調べてみることにしました。
まず、RFAの記事を要訳すると…
- ロシアの報道によれば、中ロ国境のロシア側の町「ザバイカリスク」の国境警備隊が、中国の少年を密入国の容疑で逮捕した。
- 1ヶ月前のある晩、ロシア国境警備隊は、中ロ国境に密入国者ありとの警報を得て出動。
- 数日の特別捜査により、3名の中国人、2名のタジキスタン人、4名のロシア人を逮捕。
- 逮捕された3名の中国人は、ザバイカリスクに居留する合法的なビザや許可を所持しておらず、その内の1名の少年は、少し前にロシアに密入国したばかりであること、並びに自分が密入国したルートを自白した。
- ロシアメディアによれば、少年は今年17歳で、密入国の動機を「素晴らしい生活を求めて」と述べている。しかし、ロシアメディアはこの中国の少年が中国国内の「素晴らしくない生活」についての発言があったのかは報道で触れていない。
- ロシアの司法機関は、ロシアでの生活に憧れる少年を刑事起訴するつもりであったが、少年は素直に罪を認め自白し、18歳未満であったため、中国への送還を決定した。現在、この少年は既に中国の国境警備隊に引き渡されている。
場所:ロシア連邦ザバイカリスク
まずは場所の確認をしておきます。
▲ザバイカリスクは、黒竜江省満州里市と国境線を挟んでお隣ですね。中ロの国際鉄道が通過するので有名なところで、シベリア鉄道につながるルートの1つです。
少年はたぶん黒竜江省出身と思うのですが、ここだと陸続きで、手早くロシア側の比較的大きな都市に行けるのが密入国のメリットじゃないかと思います。
GDP世界第2位の中国から、12位のロシアに「素晴らしい生活」を求めて密入国する理由
中国は近年、目覚ましい経済発展を遂げて、GDPは世界第2位。世界中に爆買い旅行で押しかける金持ちの国だったのでは…それがなぜGDP世界第12位のロシアに「素晴らしい生活」を求めて密入国する必要があるのか。
実のところ、中国の東北部…特に黒竜江省は、経済発展があまり進んでいない地域でして、とりわけ黒竜江省は石炭採掘が主な産業だったりしたので、中国経済が落ち込んだり、鉄鋼需要が減って石炭産業が冷え込むと、黒竜江省の景気はかなり悪化していたのではないでしょうか。
▲こちらの記事を読むと…
- 黒竜江省などの東北三省は成長率が低く、石炭産業などの苦境が原因と推察される。山西省も依然として苦境である。
…とあります。
▲こちらのデータで比較すると、
- 2011年の黒竜江省の一人あたりGDPは全中国で17位
- 2015年の黒竜江省の一人あたりGDPは全中国で21位
- 2011年の黒竜江省の一人あたりGDPは全国平均の91%
- 2015年の黒竜江省の一人あたりGDPは全国平均の80%
…ということがわかりました。
最近の黒竜江省のニュースを読んでいても、
【中国でデモやストライキが深刻化】『黒竜江省で炭鉱労働者数万人が「共産党はカネ返せ!」石炭・鉄鋼不況はますます』生産過剰の国有企業統廃合に向けて、習政権は石炭と鉄鋼業界だけで180万人のリストラを断行する方針 https://t.co/hP0NaBaqq4
— 黒色中国 (@bci_) 2016年4月1日
【中国 給料未払いに抗議デモ 地元政府対応に追われる】黒竜江省の双鴨山市では東北部最大の石炭企業「竜煤グループ」の関連会社の従業員らおよそ1000人が12日までの2日間抗議デモ https://t.co/fx8Jh5mxVo
— 黒色中国 (@bci_) 2016年3月14日
【中国全人代2016】『黒竜江省長「賃金未払いは全くない」発言、地元炭鉱で数千人が抗議「誰の懐に入った」』 2014年以降、賃金の未払いが続いており、同サイトによると労働者は現在、毎月800元前後の生活費しか受けとっていないというhttps://t.co/9uH4MTrZ0V
— 黒色中国 (@bci_) 2016年3月13日
▲こういう不景気を伝えるものばかり
【中国東北部でGDP偽装、いくつかの県の経済は香港を超えている?】
— 黒色中国 (@bci_) 2015年12月11日
东北多地GDP造假惊动巡视组 县域经济超香港https://t.co/Z1mGVcrBTf 黒竜江省のある投資では少なくとも20%の「水増し」があった…そうです。
▲オマケにこんなのまであります(笑)
【中国GDP低水準:製造不振で沈む地方 都市部も政策頼み】 豊富な天然資源と鉄鋼など有力な大手製造業を有し、中国の高成長のけん引役を担ってきた中国東北部。しかし、国内経済の減速が始まると、世界有数の生産設備は一転して「重荷」となった https://t.co/RBhHcAoXsy
— 黒色中国 (@bci_) 2016年9月29日
▲こちらは今年4月の記事。
データや報道で見ていても、これほど芳しくないわけですが、中国は格差が激しいですから、低層の人々はデータや報道以上に厳しい状況ではないでしょうか。
でも、ロシアに入り込んで、少年は何の仕事をするつもりだったのでしょうか?
ロシア極東部で違法入国の中国人がゴールドラッシュ?
▲【中国人がロシアの森で黄金を隠して逮捕】
中国の少年が「素晴らしい生活」を求めてロシアに密入国する理由を探していると、こんなニュースを見つけました。要訳すると…
- ロシア警察が中国人1名を逮捕。逮捕容疑は3.8kgの砂金(60万人民元相当…日本円で約911万円)の不法所持と輸送。
- この中国人は2015年8月20日に中国に戻る前に、アムール州の「十月沢亜村」(ロシア語名はわかりませんでした)付近の森の秘密の場所に砂金を隠した。
- 2016年4月6日、この中国人はロシアに戻ってきて、砂金を森からブラゴヴェシチェンスクまで持っていこうとしたが、砂金をクルマで輸送している途中で、ロシア安全局の捜査員に逮捕された。
- この中国人は如何にして大量の砂金を入手したのか?現地の情報によれば、多くの中国人がロシアで金の違法採取を行っているという。
- この他、ロシアメディアによれば、あるロシア人がアムールの森の中で、偶然に3.5kgの砂金と金塊を発見し、持ち去ったところを安全局の捜査員に見つかって逮捕されている。
たぶん…なのですが、現在、ロシアのアムール州のどこかでゴールドラッシュがあり、不景気の煽りを受けた黒竜江省の中国人が一攫千金を夢見て押し寄せている状況なのかと。
そうであれば、17歳の少年が「素晴らしい生活」に憧れてロシアに密入国する気持ちもわかります。しばらくはこの手の模倣犯が続くのではないでしょうか。