黒色中国BLOG

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【中国宗教弾圧】「家庭教会」とは何か?

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▲新疆でキリスト教徒が逮捕された…というニュース。

新疆ウイグル自治区といえば、ウイグル人が多くて、イスラム教の印象が強い地域ですが、上掲のニュースで出て来る霍城も和田も、新疆の国境に接する地域で、20以上の民族を抱えていますから、宗教も多様なのでしょう。

ニュースを要訳すると、

霍城の方は、家庭教会の女性信者が集会に参加しただけで「集団騒乱社会秩序罪」で逮捕され、和田の方は、公安が「検査」を行ったところ、キリスト教信者の夫婦の家の壁に十字架がかけられているのを見つけ、それから夫婦を逮捕し、家族を逮捕し、大家を逮捕したそうです。たぶん、家の壁にかけられた十字架を「家庭教会」の物的証拠と見なされたものと思われます。

ただ、上掲のリンク先の写真をよく見ると、非常に気になるのですね。

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▲こちらは霍城とも和田とも関係なく、北京の家庭教会の写真なのですが、壁には大きな十字架が…あれ?これはよく見ると…

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▲これって紙をテープで貼り付けただけですね。

先程の和田のキリスト教徒弾圧では、公安が信者を逮捕する理由が壁の十字架でした。たぶん、写真の家庭教会では、当局の弾圧をさけるために、十字架を壁にかけず、集会がある時だけ紙を貼って十字架に見立てているのでしょう。集会以外の時は十字架を外してどこかに隠しておいても、公安の捜索で発見されるかも知れないので、このような対応になっているものと思われます。

「家庭教会」と「地下教会」の違い

中国のキリスト教弾圧について読んでいると、「家庭教会」という言葉と、「地下教会」という言葉の2つが出てきます。この機会に、この2つの言葉の違いを明確にしておきたいと思います。

百度百科によると…

百度百科(中国のウィキペディアみたいなの)によると、「家庭教会」は次のような定義になります。

  • いわゆる「家庭教会」とは中国大陸部で政府の認可を受けていない、キリスト教徒によって自発的に組織されている教会である。
  • 「家庭教会」と「家庭」に関係はない。その初期に教会がなく、信者の家で集会を行ったところから、「家庭教会」と呼ぶようになった。
  • 「家庭教会」は宗教上の宗派ではなく、統一された1つの組織でもなく、政治上の概念でも無い。
  • 家庭教会(housechurch)は中国語、英語において既に広く認知されている言葉である。国内外の学術界、宗教界、新聞メディアの「家庭教会」に対する理解は基本的に一致している。広く中国大陸を範囲とし、中国キリスト教三自教会(中国政府の承認を得たキリスト教教会)とは無関係のキリスト教教会は、皆「家庭教会」とみなされる。

百度百科には「地下教会」の解説はありませんでしたが、百度知道(ヤフー知恵袋みたいなの)に解説がありました。

百度知道によると…

  • 地下教会とは政府の干渉から離脱した教会である。
  • プロテスタントの地下教会を「家庭教会」と呼ぶ。
  • カソリックの地下教会は、バチカンと関係のある教会である。
  • 中国国内で、政府はカソリック教会とバチカンの教皇との如何なるコンタクトも禁じている。そのため、カソリック系の地下教会は、こっそりとバチカンとの親密な関係を保つようになる。

簡単に言うと、中国ではプロテスタントでもカソリックでも中国政府管理の教会組織に属していれば、許された範囲内での宗教活動はOKなのですが、カソリックへの規制の方がキツめで、政府管理下の教会組織の傘下になるだけではなく、その他のカソリック教会やバチカンの教皇との接触も禁じられている。

プロテスタントの地下教会は、単に政府管理下にない状態で、どこかの家に集まって勝手に信仰をやってる=家庭教会…だけど、

カソリックの地下教会は、政府の管理下に入らずに勝手にどこかで集まっているだけじゃなくて、バチカンとの繋がりを持っている…プロテスタントの家庭教会よりも、カソリックのそれは更に「違法性」が強い…そういう違いがあるようです。

劉燕子さんによると…

▲劉燕子さんが家庭教会について書いてくれていますが、その中に次のような記述があります。

中国共産党政権は「統一戦線」の名の下にプロテスタント系教会を「中国基督教三自愛国運動委員会(三自会)」に組織化し、それ以外の教会は登録されていないとして全て非合法化し、またカトリック教会は「中国天主教愛国会」という「社会団体」とされ、国家の厳しい管理下に置かれた(バチカンとの国交は今でも正常化されていない)。
 このような統制下で、あからさまな弾圧ができず黙認されている教会は「家庭教会」、厳しく迫害されているのは「地下教会」と一般的に呼ばれている。

 この解説から理解できるのは、中国政府の宗教管理の視点から見て…

  • 家庭教会=グレーゾーンの教会
  • 地下教会=ぜんぜんアウトの教会

 …ということではないでしょうか。

家庭教会…「緩和」と「弾圧」の経緯

なぜ、家庭教会の「グレーゾーン扱い」が生じたのか。政府管理下にない教会なら、中国の場合、すぐに「違法教会」として解散させられるものではないのか…と疑問が湧いてきましたが、劉燕子さんのコラムを読み進めると、『4.「家庭教会」の公開化、合法化を求めて』に、次のような解説がありました。

2004年12月に「宗教事務条例」が公布され、当局の統制に緩和が見られたので、一部の「家庭教会」に「登記」を行う動きが現れ、2005年から2007年にかけて「家庭教会」が急増した。また「三自会」は「家庭教会」との関係を調整するとして、見方や対応を変え、謂わば共存関係となった。
 2007年から2009年、「家庭教会」はビルや企業用テナントを借りて会堂とした。これにより私的な空間からの公開がさらに進んだ。
 2009年以降、私有財産の所有が緩和されて、テナントなどの「借家」から、会堂を建設し所有するという段階に至った。
 さらに、活動や組織を見ると、多くは長老制を採用し、レイマン(平信徒)主体で運営し、民主的な自治を実践する場となり、「公民」の権利意識も高まった。
 ただし、このような進展にも関わらず、北京のエヴァンジェリカルな守望教会や上海の萬幇教会などは、今もなお会堂を購入しても、そこに入れず、野外礼拝を強いられている。

中国では改革開放の関係で、前世紀末には宗教への統制を緩和し、文革で破壊された宗教施設を修復する動きがあったのですが(宗教に寛容なポーズを打ち出さないと、西洋諸国からの支持・支援、投資を受けにくい)、たぶんそれらを受けて、2004年の統制緩和に至ったのではないでしょうか。

それから、本来は非公認の家庭教会の存在が、中国社会で可視化されてきたものの、最近…特に習近平政権になってからは、外国勢力との関係や、民主化との関連を恐れて、「緩和」から一転し、家庭教会を「弾圧」するようになった。

劉燕子さんの定義に則れば、今の中国では「家庭教会」も「地下教会」として厳しく迫害を受けるようになってきている…グレーゾーンが許されない状況になった…ということではないかと思います。