この件は私も前から気になっていたのだけど、今朝池上高志さんのツイート見て、「そんな見方もあるのだなぁ…」と感心していたら、次は早々に茂木健一郎さんが反応していた。皆さん、この件が気になることだったようだ。
私の方からもちょっと一言書いておきたい。
門外漢にわかりにくい話をそのままする「落合陽一」型
私も今までの人生の中で、仕事とかの絡みもあって、かなり専門的な分野の人にお話を伺うことがあるのだけど、そういう人のありがたい話というのは、専門性の高いところに「旨味」があって、噛み砕いたり、別の言葉で説明したりすると、テマヒマがかかるだけじゃなく、話の本質が変わったり、話の濃度が薄くなってしまう。
こういうタイプの専門家には、門外漢の素人のために「手加減」してもらうのではなくて、本人の好きなようにアクセル全開でしゃべってもらって、話を聞く方ががんばってついていくしかない。話が意味不明で素人にわかりにくいことが返って良い…ということもあるのだ。
子供にもわかるように説明する「池上彰」型
池上彰さんは「話がわかりやすい」というので評判な人だけど、あの人はそもそも『週刊こどもニュース』という番組での経験で、子供にも分かるようにするのと同時に、子供の集中力に合わせた説明を心がけていたのが、今に至る基礎になっているらしい(以前、何かの番組で本人がそう言っていた)。
実は私も同様の経験があって、それは以前ツイートしたことがある。
昔、会社の上司に、企画書を難しく書くなと言われた。全然難しくないですよ…と返答すると
— 黒色中国 (@bci_) 2018年5月27日
「世の中には文字が読めても、文章読めないのが多いから、小学生に話すつもりで噛み砕いてやらないと、すぐ曲解するんだよ」と教えられた。たしかにツイッターではそういう人が多いwhttps://t.co/xgpVweWL2E
▲今日はこのツイートがたくさん、RTされたので少し余談しておく。
— 黒色中国 (@bci_) 2018年5月28日
私が上司にそういわれた頃の企画書は、自分の知る限りの難しい言葉を使って、難しい漢字をたくさん使って、「私はこんなに頭がいいんだ!」とひけらかしているような企画書であった。それは、全く読者の立場に立ってないものだった。
「まず、難しい漢字を使うのをヤメなさい。なるべく平仮名を使い、誰でも知ってる言葉を使いなさい。1枚のA4にまとまるように短くしなさい。小学生にもわかるように説明しなさい」…と上司は教えてくれた。自分を否定されているようで不満だった。「読む相手はみんな大卒の中年以上じゃないですか」…
— 黒色中国 (@bci_) 2018年5月28日
「大卒の頭がいいビジネスマンでも、朝から晩まで頭の能力を全開にしているわけじゃない。だから、誰がどんな時に読んでも無理なく頭に入るような、子供でもわかるカンタンな文章を書くんだ…」と、上司はゆっくりと子供を諭すようにして私に教えてくれた。とにかく言われた通りにしようと思ったけど…
— 黒色中国 (@bci_) 2018年5月28日
どんな風に書けばよいのか、全くわからなかったので、とにかく家にいる時はテレビの子供向け番組を見続けた。NHKの教育番組や、ポンキッキーズとか。子供向けのコンテンツがどのように作られているのかを分析し続けた。子供に理解させるとはどういうことなのかを、それらの子供向け番組から学び続けた
— 黒色中国 (@bci_) 2018年5月28日
私がずっと子供向け番組に夢中になっているのを親が見て呆れ、「いい歳してなぜそんなもの見てるんだ!」とバカにしたけど、たくさん見ている内に、子供向けテレビ番組は、飽きっぽい子供の集中力が切れないようにするための、たくさんの仕掛けがある…というのがわかってきた。何かがつかめてきた。
— 黒色中国 (@bci_) 2018年5月28日
それから、私の企画書は大きく変わり、上司が認めてくれるようになり、社内で企画書と言えば私が任されるようになった。「企画書修行」の経験は現在のツイッターでも活かされている。あの修行がなければ、黒色中国は随分違ったものになってただろう。あの上司が、黒色中国の「生みの親」でもあるわけだ
— 黒色中国 (@bci_) 2018年5月28日
冒頭の茂木健一郎さんのブログでも書かれているが、「日本のテレビを始めとするメディアのレベル設定は低すぎて」、その結果「池上彰」型が地上波テレビの主流になっている。
日本のテレビは「お茶の間」なる実態が不明の視聴者を対象にしており、子供からお年寄りまでが一緒にテレビを見て楽しめる番組を作らなくてはいけないという宿命を背負っている。門外漢がわからない専門家の話を垂れ流してはいけないのだ。
私は池上彰さんの話を聞いているのはキライじゃないけど、テレビ独特の「薄さ」に付き合っていると時間の無駄なので(なぜあんなに芸人だのタレントが出てきて無駄話をするのだ)、テレビをほぼ見ない。知りたいことを映像で見たければネットの動画の方を見る。
そういう動画には得てして落合陽一さんが出演していたりする。彼の話を理解するためにはやたらと検索して自分で調べたり、本を読んだりして、勉強しなくちゃいけない。それで100%落合陽一さんの話がわかるのかと言えばそうでもない。
結局、人の話なんか他人には完全にわからないもので、100%わかっているのは本人だけだろう。重要なのは他人の話を「糧」にして、自分が知識を増やせるのか、自分を向上できるかだ。
日本の地上波テレビを始めとする大衆向けメディアが「池上彰」的なもので占められている反動で、『WEEKLY OCHIAI』のような「落合陽一」的なものが出てくるのだろうと思われる。
▲それにしても、カスタマーレビューが247もつく本ってスゴイですね。 著者が話題の有名人ということもあるだろうけど、今の日本で「門外漢の素人のために話をわかりやすくしてくれない人の話」の需要って結構大きいみたいです。