私は普段、朝から麺を食べることは、あまりないけれど、中国で釣りに行くときに食べることがある。中国の麺料理は量もあるし、注文してから出てくるのも早い。
▲【紅焼牛肉麺】こちらは、河南系の麺屋さんだったと記憶している。濃厚なスープの中にトロトロモチモチした打ちたての幅広の麺。それに辛く煮た牛肉を乗せて香菜(シャンツァイ)を散らす。
▲【煎蛋麺】中国語で目玉焼きのことを「煎蛋」(ジェンダン)という。油をタップリいれて泳がすように、タマゴを「焼く」というより「揚げる」。そういう焼き方で両面を焼くとタマゴは全体的にフワッとした、表面と端っこがカリッとした食感に仕上がる。これをアツアツの汁麺の上に乗っけて、横に漬物の刻んだのを添える。
日本の高度に発展した「ラーメン」から見ると、煎蛋麺は非常にシンプルで、別の言い方をすれば「貧相」に見えるかも知れないが、これはこれで奥深いものがある。シンプルなものだからこそ、味をごまかせない。シンプルだからこそ、美味しくなければ食べる気になれない。
反日の中国人に作ってもらった鶏スープの麺
今年の春節の時、上海でひどい風邪を引いて数日寝込んでいた。毎日コンコンと眠り続けて、食事を取るのが大変だった。その時に、私の友人の彼女が作ってくれたのがこの麺である。
鶏を一羽まるごと、幾つかの野菜と一緒に大鍋に入れ、じっくり煮込んでスープを作る。そもそもこれは大晦日の夜のごちそうであった。
平打ちのシコシコした麺を、ゆっくりとコシのなくなる寸前まで茹であげる。それに先ほどの鶏のスープを温めて注ぎ、スープを作るのに使った鶏肉をほぐして麺にのせ、ネギを散らしたものである。スープは薄い塩味に鶏の油が少し浮いている。野菜を入れて丁寧に煮込んだので臭みはない。
この一杯は、風邪で疲れた私の身体を癒やしてくれた。麺は柔らかく煮込んでいるので胃の負担にならなかったし、スープを飲むと栄養と暖かさが身体の隅々まで染み渡るようであった。
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実のところ、この友人の彼女は、日本のことが好きじゃない。日本人のことも嫌いである。日本嫌いの中国人は珍しくもないので、私は彼女には何も言わない。
だけど、彼女は私と一緒にいると、ときおり反日家としての本音を漏らす。私が彼氏の古い友人なので、仕方なく顔を合わせている…私にとっても、彼女は古い友人の恋人なので仕方なく顔を合わせている…という関係である。
そういう事情なので、この鶏スープの麺は、美味しかったものの、とても複雑な味がした。
中国には、美味しいものがたくさんあるし、良い人だっているのである。彼女は反日でも、こうやって彼氏の友人のために美味しい麺を作ってくれるのだから、心優しい良い人なのだろう。
ただ、日本人が中国と関わり続ける上で、このような「複雑」な状況はずっとついてまわる。私は日本人であることを理由に、あの国では疎まれて、嫌味を言われ続けなくてはいけないのだ。
日本と中国は、いつまでこういう状況が続くのだろうか…美味しい鶏スープの麺を食べながらも、心だけは晴れないのであった。
追記:反日鶏スープ麺はどこで食べられるのか?
▲ツイッターで、この鶏スープ麺がどこで食べられるのか?という質問がありましたので、別記事でご紹介させていただきました。