ツイッターで表題の件が話題になっておりまして、こういう話は数年置きに繰り返されるので、私はちょっと飽きているのですが、今年はいつもより大きめの騒ぎみたいですので、こちらでも解説しておきます。
【目次】
「145メートル」は「危険水位」ではない
▲中国でも話題になってるようで、昨日付けでこんな環球時報の記事があがっています。
『「三峡ダムの洪水防止制限水位を2メートル近く越えた」は何を意味するのか』というタイトル。
洪水防止制限水位(防洪限制水位)が何故か日本では「危険水位」と訳されて、それを2メートル越えた!ヤバい!決壊するぞ!と大騒ぎをしている人がいる?のでしょうか。
まずはそれが誤訳だというのを認識しないとイケません。
水位175メートルでも平気w
細かい説明をする前に1つお見せしたいものが
▲三峡ダムで175メートルの貯水に成功した…という2017年10月12日の記事。
別にとんでもない洪水があって、それにシッカリ耐えたぞ!という話ではなくて、
▲2010年以来、8年連続で175メートルの貯水に成功しているのでありました。
▲「今回の175メートル実験性貯水は9月10日に始まり、貯水開始時の水位は155メートルだった…」と書いてます。つまり開始時で、ツイッターで「危険水位」と騒がれている145メートルを10メートルも越えているw
上掲のサイトを見ると、水位175メートル到達の証拠写真も出てますので、そちらをご参照ください。
「洪水防止制限水位」とは何か?
情報を整理して要訳すると、
- 三峡ダムの堰堤の高さは185メートル
- 175メートルまでは貯水可能
- 増水期でなければ、給水、発電、灌漑などに利用するため、水をたくさん貯めている。
- 増水期には洪水に備え、水位を下げる。その際の制限水位が145メートル。
- つまり、それを2メートル越えて147メートルというのは、想定内のことで、危険でもなんでもない。
- ちなみに2017年の175メートル貯水試験の際は、9月10日に水位155メートルから貯水を開始して、175メートルになったのが10月20日。水位を20メートル上げるのに40日間かかっています。
他に、三峡ダムが歪んでいるという説が見られますが、ツイッター検索で調べたら諸説出てくるので、こちらで回答は繰り返しません。ただ、本当に歪んでいたとしても147メートルの水位に耐えるのなら、充分な強度があるのではないでしょうか。我々としては、まず自分の認識の歪みを気にした方が良いでしょう。
【追記】三峡ダムの大きさについて(8月23日)
こちらのブログ記事は大変多くの方々に読まれておりまして、三峡ダムについて報道される度に、アクセスが殺到します。
ただ、そうした中にはそもそも三峡ダムがどんなダムなのか知らない…特に、大きさについて何の理解もない人が少なくないようなので、大きさについて触れたツイートを参考まで加えておきます。
【閲覧推奨】『三峡ダムの偉容とその存在意義』(国立環境研究所)
— 黒色中国 (@bci_) 2020年7月19日
■ダム湖の総貯水容量は393億m3(黒部ダム湖の約200個分)
■湖水面積は約1084km2(琵琶湖の約1.7倍)
■湖長は663km(ほぼ東京~姫路間)https://t.co/Ss33F4Lh6r
▲この大きさを頭に入れておけば、どんなに激しい大雨だったとしても、それが数日ではすぐ満杯になって水が溢れたり、ダムが突如決壊するようなことは起こらないのが理解できるかと思います。