昨日の昼過ぎから、深センの土砂崩れに関するニュースツイートを続けているが、倒壊した建物の写真を見て、中国は瓦礫を南シナ海の人工島の埋め立てに使うのか…という人がいるのには驚いた。
荒唐無稽な妄想であるが、確かに南シナ海で環礁を埋め立てる時に、どのようにして土砂を調達しているのかは、私も疑問だったので、今年の5月に調べておいた。それをこちらにまとめておこうと思う。
▲こちらは今年5月に米軍の偵察機に同乗したCNNの取材班が撮影した映像からおこした画像である。何やら奇妙な形の船が、水を吹いている?ような様子である。何をしているのだろうか?
▲こちらは人工衛星から撮影された南シナ海で中国が埋め立てている人工島の付近で撮影された船の画像。「suction hopper dredger collecting sediment for landfill」とある。「suction hopper dredger」が「landfill」(埋め立て)するための「sediment」(沈殿している土砂)を「collecting」(集めている)…ということなのだが、「suction hopper dredger」とは「ホッパ付き浚渫船」のことである。
「ホッパ付き浚渫船」とは?
▲こちらは「ホッパ付き浚渫船」の解説ビデオ。
- ストローみたいな管を海底につけて土砂を吸う。
- それを船内に貯めこむ。
- 船の舳先から土砂を噴出させる。
- もしくは船底を開いて土砂を海中に下ろす。
これを繰り返して人工島を埋め立てているわけだ。
グラブ浚渫船
▲CNNの映像を見ると、クレーンのようなものを備え付けた船が見える。こちらはどうやら「グラブ浚渫船」というものらしい。
出典:コトバンク
▲「グラブバケット」というものを海底に落として、土砂を掴むことができる。ワイヤーロープで吊ったパワーショベルみたいなものである。
私は海洋土木の専門家ではないので、あまり知ったかぶりをするのも気が引けるが、一応知っている限りのことを書いておくと、中国が別の場所から土砂を運んで環礁を埋め立てるのではなく、このような浚渫船を使うのは、輸送コストの問題もあるけれど、そもそも環礁の付近は水深が浅いため、掘って深くしてやらないと大型の船が着岸できない…という事情があるようだ。
私は釣り師なので、日本の川にもよく出かけるけれど、日本の川でもこのような浚渫船が活躍しているところを見かけることがある。川に土砂がたまってしまうと水害の原因になるし、船舶の航行に支障が出るからだ。
ただ、南シナ海の環礁付近で浚渫をやると周囲の環境を破壊するのは間違いない。先日のBBCヘイズ記者のレポートでも
ヘイズ記者は、中国がこの人工島を建設するために、海底から土砂を数百万トンさらいあげた…と言っています。中国の手により、この海域で甚大な自然環境破壊が行われたわけです。 https://t.co/IrIceXujI7 pic.twitter.com/Gi71mEly3p
— 黒色中国 (@bci_) 2015, 12月 15
海底から土砂を数百万トンさらいあげた…と言っていた。南シナ海の件は、安全保障上の問題ばかりが取り上げられるが、環境保護の観点からも、中国の埋め立てはヤメさせるべきだろう。
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