黒色中国BLOG

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【中国の洗脳機関?】『孔子学院』の真相を探る

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以前から、たびたび話題になっている「孔子学院」。「工作機関だから潰してしまえ!」という話はツイッターでもよく見かけますが、具体的にどういう「工作」をしているのかはよくわかりません。

そこで、海外での事例も含めて、孔子学院の何が問題になっているのかを考察してみようと思います。

孔子学院とは?(ウィキペディア日本語版を参考に)

まずウィキペディアで見てみると、

孔子学院 - Wikipedia

孔子学院(こうしがくいん)とは、中華人民共和国が海外の大学などの教育機関と提携し、中国語や中国文化の教育及び宣伝、中国との友好関係醸成を目的に設立した公的機関である。教育部が管轄する国家漢語国際推広領導小組弁公室が管轄し北京市に本部を設置し、国外の学院はその下部機構となる。孔子の名を冠しているが、あくまでも中国語語学教育機関であって、儒学教育機関ではない。

…とある。ちなみに、似たような組織として、ゲーテ・インスティトゥートブリティッシュ・カウンシルなどもそれぞれの政府の運営するものである。他に、「フランス学院」というのもあるそうだが、こちらの詳細は不明である。

しかし、ゲーテ・インスティトゥートやブリティッシュ・カウンシルが「工作機関」という話は聞いたことがない。

孔子学院はよほど特殊な「運営」がされているのだろうか?

現在の運営方式は中国と海外の教育機関の提携により設置されている。孔子学院は学位授与を目的とする一般大学と異なり、各界人士に対し中国語教育を行い中華文化の宣伝を行うことが目的とされている。そのため各国ごとに教育の特徴があり、現地の需要により教育活動を展開している

先のウィキペディアを読み進めると、このように書かれている。

もし、孔子学院が、100%中国の出資によって運営されて、学校施設も全て中国側の自前で用意したものなら、中国政府の完全なコントロールにあるだろう。でも、海外の教育機関と「提携」しているのでは、その「提携内容」によっては、中国政府の思いのまま…とは行かないのではないか。

そして、「各国ごとに教育の特徴があり、現地の需要により教育活動を展開している」という箇所も注目すべきだ。というのも、孔子学院が本当に「工作機関」であったとしても、中国政府が世界各国で仕掛ける「工作」は一律ではないはずなので、それぞれの「特色」が出てくるはずである。

孔子学院とは?(百度百科を参考に)

「百度百科」とは中国のウィキペディアみたいなものであると思っていただければ良い。さすがは中国のサイトだけあって、孔子学院についてかなり詳細な情報が掲載されている。いくつか抜粋すると

  • 世界で初めての孔子学院は2004年6月15日にウズベキスタンのタシュケントで設立された。(注:この点はウィキペディア日本語版との記載「孔子学院は2004年に設立され、同年11月大韓民国ソウル市に初めての海外学院が設置された」とは異なる)
  • 2014年12月7日までに、世界126の国と地域で475の孔子学院と851の孔子課堂が設立された。(注:「孔子学院」は大学に開設し、「孔子課堂」は小学校~高校に開設されるものだそうです⇒参考資料日本での取り組みをググってみると「神戸東洋医療学院」に孔子課堂が設置されています。本体の神戸東洋医療学院は鍼灸師養成施設であり、一般的な大学とは異なります。ここの孔子課堂は語学学校の類で、この事例で見る限り、「孔子課堂」は正規の大学以外で孔子学院のカリキュラムが行われる場合に使用される名称のようです)
  • 孔子学院は世界120の国と地域に475ヶ所あり、その内訳は、アジアでは32の国と地域に103ヶ所、アフリカでは29カ国に42ヶ所。欧州では39カ国に159ヶ所。アメリカ州では17カ国に154ヶ所、太平洋州には3カ国に17ヶ所がある
  • 孔子課堂は65カ国に851ヶ所設置されており(コモロ、ミャンマー、マリ、チェニジア、セーシェル、バヌアツには孔子課堂のみで孔子学院は存在しない)、アジアでは17カ国に79ヶ所、アフリカ州では13カ国に18ヶ所、欧州には25カ国に211ヶ所、アメリカ州では7カ国で478ヶ所、太平洋州では3カ国に65ヶ所設置されている。

ウィキペディア日本語版のデータは2010年時点のもの。4年後の2014年では、世界中に孔子学院が広まっているようである。特にこの4年は孔子課堂の普及に力を入れていたようで4年で倍以上に増えている。

ちなみに、百度百科を見ると、冒頭で孔子学院が批判を受けていること、閉鎖されていることに言及している。その事情を伝える単独の項目も設けられているが、米国の一部とスウェーデンの事例を取り上げているだけで、他国での反対や閉鎖を受けている事例は取り上げられていない。

孔子学院は何が問題なのか?

これまで日本で伝えられた事例から、世界各国の孔子学院がどのように問題視されてきたのかを見てみよう。

2010年2月26日、米華字紙・世界日報によると、米カリフォルニア州ハシエンダハイツ市内の中学校に中国文化や中国語を教える「孔子学院」が開設されることになったが、「共産主義思想に洗脳される」として地元住民の強い反対に遭っている。

▲という風に報じられていますが、「共産主義思想に洗脳される」という主張に具体的な証拠提示はないようです。

 

マティスの論評は、孔子学院に対する、批判論、擁護論の中では、直接的表現を避けつつも、擁護論に属するものと見ることが出来ます。インテリジェンスの収集など、ほかの組織を使えばよく、孔子学院など使う必要はない、と言いたいようです。実態は、そうであるかもしれないし、そうでないかもしれません。

(中略)

マティスは、孔子学院は、ゲーテ・インスティテュート、ブリティッシュ・カウンシル、アリアンス・フランセーズなどと異なり、「政治組織であるが、大学のなかでは非政治的活動を行う」とも述べていますが、いささか意味不明です。いずれにせよ、孔子学院には目に見えないヒモがついていると見るのが、常識的でしょう。

 ▲ようするに、岡崎研究所も「目に見えないヒモ」という言い方しかできないわけで、具体的にその「ヒモ」が何なのかは提示できず、「と見るのが、常識的」という頼りないオチになっています。

 

トロント教育委員会は「孔子学院の九月再開」を暫定的に中止させる動機を圧倒的多数で可決させた。

 決議案は付帯条件に「もし再開させるのであれば、教材の公開を義務付ける」とした。

 ▲つまり、教材が公開されていなかったわけで、これは確かに問題かと思います。

教育委員会が強く問題としているのは孔子思想を教える機関ではなく、まさに中国共産党政治局常務委員の劉雲山が指摘したように「孔子学院は中国の文化戦争の戦場であり、かならず中国が使用している教材を使用し、中国的社会主義を世界に拡大する目的がある」としていることだ。

 ▲この劉雲山の発言の出典がどこにあるのかは不明ですが、そういう発言があるのでしたら、外国からすると心配になるのは当然です。

こうした孔子学院批判の運動は世界各地の、むしろ在住中国人の反対によって行われているポイントに特色があり、せっかく外国へ移住しても子供たちが自由主義教育をうけず共産主義に洗脳されることを親は恐れるからだ。

 ▲この指摘は重要だと思います。というのも、孔子学院は世界120カ国に展開しているのにも関わらず、反対の声があがるのは主に欧米であり、特に華人系の移民が多い地域に集中するからです。スウェーデンの場合は、これに当てはまらないのですが。

 

同学院は語学研修機関という触れ込みなのに、中国共産党が司令する教科書や、政治プロパガンダが為されており、従前から学内外で批判の声が上がっていた。

 ストックホルム大学副総長は「政治的影響があることは明白な事実だ」と強い批判を展開した。

 孔子学院は中国政府が政治宣伝の一環として、外国の若者を大五列にするため、膨大な資金と講師の提供をしてきたが「これはトロイの木馬」であり、「中国共産党の宣伝工作をしつつ、将来的にスパイを養成する目的が含まれている」と世界的規模で批判されてきた。

 ▲まず「世界中で孔子学院が閉鎖へ」とタイトルにありますが、これは世界120カ国465ヶ所で孔子学院が運営されている中から考えると一部の現象であって、「世界中で」というのはちょっと行き過ぎの表現であると思われる。

中国共産党が司令する教科書」というのも考えもので、孔子学院は中国政府の教育部(文部省)の国家漢語国際推広領導小組弁公室の管轄下にある組織ですから、中国共産党が直接指令するようなものではないはず。あそこは一党独裁だから党と政府の区別はないよ…と言えば確かにそうなんですけど。

百度百科の『孔子学院』に関する解説で「業務内容」という箇所を見ると、孔子学院がどのような活動を行っているのかが書かれていますが、そこの「HSK(漢語水平考試)の実施」(组织实施汉语水平考试)というのが出てくる。これは中国政府公認の中国語検定試験ですから、HSKの教材は中国政府公認のものが出てくるに決っている。

上記「業務内容」を読むと「长城汉语」(長城漢語)というのが第一番に出てくる。これはまた百度百科で調べてみると 、

中国国家汉语国际推广领导小组规划、组织、研发、运营的重点项目,是基于网络多媒体技术开发的新型对外汉语教学模式。

(中国国家漢語国際推広領導小組が企画した、組織、研究開発、運営の重点プロジェクトであり、ネット・マルチメディアの技術開発に基づく、新しい対外漢語教学モデルである

 …とありまして、孔子学院で採用されている「長城漢語」という中国語教育方法そのものが、政府機関によって開発された外国人専用のものなのですね。そしてこれらはネットやマルチメディアを駆使したものになるので、これらのコンテンツも政府機関が用意したものを使うことになるのでしょう

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 HSKの内容に中共洗脳が含まれているとは聞いたこともなく、教材は日本でも一般に発売されているので、もしこれに政府プロパガンダや洗脳が混入しているのなら、既に問題になっていることでしょう。私はかなり前にこの手の問題集を見た覚えがありますけど、その時にプロパガンダや洗脳があるとは全く気づきませんでした。

孔子学院の日本での動き

孔子学院 - Wikipedia

日本では高度な中国語教育と国際人育成を目的に孔子学院の開設が求められるが、近年は中国側の認定基準が厳格化されたことで、新規の認可が困難となっている


2005年 - 立命館孔子学院 立命館大学と北京大学の提携により日本国内に初めて開設された
2006年 - 桜美林大学孔子学院 同済大学と提携
2006年 - 北陸大学孔子学院 北京語言大学と提携
2006年 - 愛知大学孔子学院 南海大学と提携
2007年 - 立命館孔子学院 東京学堂
2007年 - 立命館アジア太平洋大学孔子学院 浙江大学と提携
2007年 - 札幌大学孔子学院 広東外語外資大学と提携
2007年 - 大阪産業大学孔子学院 上海外国語大学と提携
2007年 - 岡山商科大学孔子学院 大連外国語大学と提携
2007年 - 神戸東洋医療学院孔子学堂 天津中医薬大学と提携
2007年 - 早稲田大学孔子学院 北京大学と提携し、世界初の「研究型」孔子学院として、4月開設、6月開講
2008年 - 立命館孔子学院 大阪学堂 同済大学と提携
2008年 - 工学院大学孔子学院 北京航空航天大学と提携し、工科大学としては日本初の開設
2008年 - 福山大学孔子学院 対外経済貿易大学及び上海師範大学と提携
2009年 - 関西外国語大学孔子学院 北京語言大学と提携し、日本の外国語大学で初めて開設
2012年 - 兵庫医科大学中医薬孔子学院 北京中医薬大学と提携

 ▲こちらのウィキペディア日本語版の情報で見ると、16箇所で開設されていることになる。ただし、冒頭の説明にもあるように、中国側はこれをゴリ押しでドンドン広げようとしているわけでもなく、逆に新規開設が難しいような方向に進んでいるようだ。

孔子学院は「文化スパイ機関」―大阪産業大学幹部が発言 2010/06/04(金) 17:48:59 [サーチナ]

▲こちらは大阪産業大学の事務局長が

「孔子学院は、中国政府による“ハード面”の侵略ではないが、中国の拡張主義の“ソフト・ランディング”だ」

「文化的なスパイ機関みたいなもので、われわれは協力すべきでない」

 …と発言して問題になったもので、その後、失言を認めて謝罪している。たぶん、具体的な証拠提示もなかったのではないか。

大阪産業大学孔子学院

▲大阪産業大学では現在も孔子学院が継続されている。

 

孔子学院 視察ルポ(日本民族による中国共産党監視委員会・石川慎之助) » 中監会

▲こちらは「日本民族による中国共産党監視委員会」という組織の人による孔子学院の考察。こちらの最後を見ると、

孔子学院体験講座を1日通してうけた全体的な印象は、一昔前に日本で流行となった英会話の駅前留学の支那版といったような印象。
前の項目で申した通り、わざわざ大学提携してまで受け入れる必要性があるのかから疑問である。 

 …とのこと。1日体験講座であまりディープな指導があるとも思えませんが、中国に批判的な立場の人の考察としては参考になるかと。

孔子学院を如何に疑うべきなのか

以上、ざっくりと眺めてみただけですが、孔子学院は世界規模で行われており、学院と課堂を合わせると世界各国の1326箇所で展開されているのにも関わらず、具体的なプロパガンダや洗脳の証拠提示はいまのところ1つもない…というのが現状のようです。そして、反対や閉鎖があったとしても、それはホンの一部のことでしかない。

孔子学院以外で行われる中国語教育においても、中国で編纂された教科書が使用されているのは普通のことで、HSKのテキストなども同じものを使用していますから、教材においてプロパガンダや洗脳が浸透していると主張するのならば、日本の大学や語学学校で中国語を学んでいるほとんどの人がその影響下にあると見ることもできそうです。

 そして、日本の大学や語学学校や、そこで中国語を教えている人たちも、何らかの形で中国の公的機関に連なることは珍しくもない。そういう「つながり」で嫌疑をかけるのならば、孔子学院だけを敵視するのも変な話で、いっそのこと中国語教育に関わる全ての人、中国語を学んだ全ての人を「中共工作員」として敵視する方が主張としてはスッキリするでしょう。ただし、これはあまりに荒唐無稽過ぎて、信じる人も少ないと思いますが。

孔子学院の『脅威』という視点で見るとすれば、中国政府が、ネットとマルチメディアも取り入れた外国人専用の中国語教育プログラムを作り上げた上で、それをHSKの資格取得とも連携させて、世界規模で展開していること。世界規模で語学学習を軸にしたソフトパワーの展開を実施しているわけで、これは、日本も見習うべきことではないでしょうか。

最後に1つ動画を紹介しておきます。

▲こちらの動画に出演しているのは、カナダの孔子学院の学員であるトーマスさん。たぶんカナダ人なのでしょう。何年勉強すればここまでのレベルになれるのか知りませんけど、ここまで中国語が上達できたのが全て孔子学院のお陰なのだとしたら、脅威としか言いようがありません。

▲ただし、このカナダ人による歌唱は後で問題になりました。トーマスさんが歌っていたのは、江青女史が指導して作らせた8つの文革模範劇の1つ。儒教を弾圧した文革を象徴するような歌をわざわざ選んで、「孔子」学院の学員が絶唱する…という奇妙な取り合わせです。

孔子学院を単体で取り上げて、鵜の目鷹の目で嫌疑をかけるのではなく、こういう中国の奇妙さにこそ、我々は注目すべきではないでしょうか。

【追記】

 ▲以前、ツイッターでこのような話もあった。「中国夢」といえば、習近平国家主席の発表した思想であり、「中華民族の偉大なる復興」がテーマとなっている。

中国の夢 - Wikipedia

たまたまカナダの孔子学院のスピーチコンテストに参加された人からの情報であったけれど、あくまでも伝聞情報であって、実態がどのようなものであったのかはわからない。先の文革模範劇の歌の件も含めて考えると、カナダの孔子学院はかなり政治性が濃厚なようだ。日本の孔子学院でも同様のことが行われているのかは不明である。

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