黒色中国BLOG

中国について学び・考え・行動するのが私のライフワークです

【考察】中国海軍が南シナ海で調査中の米無人潜水機を奪う「根拠」とは?

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今朝からこの件で騒がしくなっております。ようするに、中国が泥棒した…ということなんですけど、今のところ中国側からの反論はなし。

でも、理屈をこねるのが上手い中国ですから、何か口実は作り出すと思います。そこで今わかる範囲で、なぜ中国海軍が米海軍のものを盗んだのか、考えてみようと思います。

中国の報道:米軍は海底地形をスキャンしていた?

美称中国海军在南海捕获美军无人水下潜航器_军事_环球网

▲現在、中国のニュースで見当たる関連のものはこれ。

中国では、こうした事件の時にすぐに自主的な報道せずに、「海外のメディアではこういうことを言ってるよ」というのをまず出してくるパターンがあります。

でも、こういうニュースの中で、迂遠に本音を漏らすことがあるので、一応目を通すと…ありました。

美国的无人潜航器使用历史不短,而上一次无人潜航器备受关注的情况还要追溯到2014年马航MH370事故的搜救上,美国使用了当时世界最先进的“蓝鳍21”无人潜航器。

これに続く文章は長いので、いつものようにいちいち要訳しませんけど、手短に言うと、米国は2014年のマレーシア航空370便墜落事故の時にブラックボックスを探すため、無人潜水機(Bluefin-21)を使ったけれど、この無人潜水機にはいろいろな計測用の機器が搭載されていて、海底地形をスキャンしたり、金属をさがしたりできるんだよね…ということを書いています。

今回、米海軍は海底地形のスキャンをしていたのだ!とは書いてないんですけど、「あれはそういうことできるんだよね」とかなりの字数をさいて、米側の報道の後に付け加えているのです。

ようするに、「海底地形をスキャンしてたんだろ」という話にしたい…中国人民にはそう思って欲しいのでしょう。

でも、なぜあの場所で米海軍が海底地形をスキャンしていたら、中国海軍が無人潜水機を盗んでもいいのか。次のような「口実」が考えられます。

「中国EEZ内での無許可の軍事活動、情報収集」

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中国はスカボロー礁を実効支配し、領有を主張しているので、その200海里(370.4km…地図上の赤の線)内は中国のEEZ(排他的経済水域)となります。

▲こちらによれば、

米当局者によると、現場は南シナ海の公海上で、フィリピン北部ルソン島のスービック湾の港町から約160キロ沖合の地点。

…とあります。

「港町」がどのあたりか不明なので、スービック湾の入り口あたりを中心に160kmの円周を緑色の線で地図上に書いてみましたけど、中国が200海里まるまるEEZを主張しなくても、今回の米無人潜水機は、中国の主張すると思われるEEZにかなり踏み込んでいるのがわかります。

中国のEEZ解釈

▲こちらの記事に古森さんが中国のEEZへの対応をまとめてくれていますけど、ちょっと引用すると

EEZとは1994年発効の国連海洋法条約で、沿岸から200カイリの範囲内で沿岸国の経済開発の主権を認めた水域である。ただし軍事的活動には沿岸国の主権は適用されず、各国とも軍艦などは相互のEEZ内で自由に活動させてきた。

 だが中国は大陸棚の末端までを自国のEEZだと宣言するだけでなく、他国の軍事活動への主権も主張し、自国のEEZ内の他国の軍艦の航行などに事前の承認を求めてきた。米国など各国はその要求を一方的だとして排し、中国EEZ内での軍事活動を続け、対立の原因ともなってきた。

今回、中国海軍がどのような判断に基いて、米無人潜水機を「回収」し、今後中国政府がどのような見解を出すのか、まだわかりませんけど、背景としてはこのような状況があるものと思われます。

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▲こちらでも中国のEEZ問題に触れています。