黒色中国BLOG

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【中国・内モンゴル】金属精錬所の環境汚染に抗議の牧畜民を騒乱罪で拘束・勾留10日間…その背景を調べてみました

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RFA」というメディアを毎日見ていると、しょっちゅう内モンゴルの問題(大体は草原の開発にからむ牧畜民との摩擦)が出てくるのですけど、日本では一切紹介されませんね。チベットやウイグルだと何かと取り上げられるし、中国の主要地域での環境汚染もそれなりにクローズアップされるのですが、内モンゴルの問題はほぼスルーされているみたいで、なんだか可哀想なので、こちらではなるべく取り上げたいと思います。

内蒙古牧民请愿抗议金属冶炼厂污染 6人遭行拘10天

▲内蒙古の牧畜民が金属精錬所の汚染に抗議し、6名が拘束、勾留10日間…という内容です。

「内蒙古の金属精錬所」…と聞いて、小資本でやってる小規模のものじゃないかな…と勝手に想像していたのですが

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▲写真はRFAの記事より。ハンパなく大規模の金属精錬所みたいです。

内蒙古牧民请愿抗议金属冶炼厂污染 6人遭行拘10天

▲もう一度こちらの記事に戻って、内容を確認すると…

  • 場所は内モンゴル自治区シリンゴル盟西ウジムチン旗興安銅亜鉛製錬所
  • 製錬所の排気で環境汚染があり、健康被害が出ているため、3月19日、百名近い牧畜民の代表が地方政府に抗議の請願をしたところ、当局はその内の6名を「秩序を騒乱した罪」で拘束。行政勾留10日間の処分とした。
  • 精錬所では8つの大きな井戸を掘り、地下水を汲み上げ続けているため、水位が低下して草原の土地には亀裂が入っている。

但し、今回の報道の少し前にも、この地域の問題は取り上げられていました。

▲全く同じ精錬所の環境汚染問題で、3月8日に2日間連続で約百名の牧畜民が地方政府に請願を行っており、この時に地方政府は10日間後に回答する…と約束していたそうです。つまり10日後(3月18日)になっても、回答がなかったので、3月19日に再度請願に訪れたら牧畜民が逮捕されてしまった…という事情かと思います。

「莫日根維権事件」とは?

記事の中にも書かれていますけれど、シリンゴル盟西ウジムチン旗は、2011年に中華人民共和国建国以来、最大のモンゴル人の抗議活動「莫日根維権事件」が発生した場所になります。

▲詳しくはこちらを御覧ください。

2011年の頃は、中国のネット規制はまだ緩かったので、丁度私はその抗議活動の動画をみつけて、YOUTUBEにアップしておりました。

興安銅亜鉛製錬所とは?

興安銅亜鉛製錬所は内蒙古鉱業(集団)有限責任公司の傘下にある国有企業で、銅、亜鉛、硫酸などの非鉄金属の生産と貿易が一体となった業務内容となっており、9万ムーの面積を有する…とのこと。ムー(畝)は中国の面積の単位ですけど、15ムーで1ヘクタールですから、計算すると6千ヘクタール。東京ドームに換算すると約1283個分になります。

▲こちらがその内蒙古鉱業(集団)有限責任公司の役員一覧になりますが、ほとんどの役員が党職を兼任していますね。環境汚染が出ているのは間違いないようなので、とりあえず生産を止めてしまえばいいんじゃないかと思うのですが、政治権力者が企業経営者を兼任しているのだから、生産を止めるよりも、抗議者を拘束してしまう方が簡単なのでしょう。しばらくこの件は、動向を継続的に見ておこうと思います。