黒色中国BLOG

中国について学び・考え・行動するのが私のライフワークです

靖国神社の絵馬に見た国際性、そして普通の人々の願い

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▲終戦の日を数日後にひかえた8月のある日、靖国神社を参拝した。

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▲靖国神社が、テレビに出てくるのは、たいてい8月15日だったり、または何かが起こって騒がしくなっている時である。そうでなければこのように静かでのんびりしたものなのだ。参拝者が途切れることはないが、大挙して訪れるものでもない。神社は静寂であらねばならない。だから、これぐらいが丁度良いのである。

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▲お参りを済ませてから、拝殿の前で写真を撮っていると、そばにある参集殿の前に、「祈願絵馬かけ処」というのが見えた。靖国神社というのは、神社といっても、特殊な場所である。だから、普通の神社のように、絵馬があるとは今まで考えてもいなかった。それにしても、国を護るために亡くなられた英霊へ、一体どんなお願いごとをするものなのだろうか?ちょっと気になったのでのぞいてみることにした。

絵馬に込められた人々の願い

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▲驚いたのは、恋愛成就とか、合格祈願、就職祈願の絵馬が普通に多かったことだ。そういうお願いごとは、それ用の別の神社があると思うのだが、そういう私の考えの方が間違っているかもしれない。もしかして、多くの人々にとって、靖国神社は普通の神社なのではないか。それにしても、靖国神社に、「ハングル・中文」で食べていきたいという人がお願いごとにやってくるとは想像もつかなかった。

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▲たくさんの絵馬が吊るされている中で、1つだけ変わり種があった。昔の小判のような形をした大きな石である。


▲野付半島とはここのこと。北海道からヒゲのようにほっそりと飛び出した半島である。国後島が目の前にある。

野付半島

野付半島(のつけはんとう)は、北海道標津町~別海町にある細長い半島である。延長28kmにわたる砂嘴であり、規模としては日本最大である。

この人は横浜にお住まいとのことだが、わざわざあんな遠くまで行ってきて、この重い石を持って帰ってきたのだ。丸々とした石を目の前にしばし感動する。

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▲裏を返すと…「奪還北方領土」とあった。

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▲こういう時にタイはいいと思う。これがもし「中国」や「韓国」だと、それを靖国で祈願するのは何か別の意図があるように感じられてしまう。

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▲それから、気付いたのだが、どうも靖国神社の絵馬には外国語で書かれたものが多いのである。私は英語が苦手だけれど、どうやらこれはガイドの試験に合格云々…と書いているようだ。

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Long life for my grandparents」は、「私の祖父母が長寿でありますように」ということだろう。

Collea my money back from Mr.S」とは何か?「Collea」は人名のようだ。「コレア、私のお金をミスターエスから取り返して」…なのかな…そういうお願いごとは、靖国の英霊に叶えることができるのだろうか。

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No more victims from conflicts without honor her respect.
Streng then Juliana’s Spirit with courage and resistance and protect her heart from sadness and sorrow.
help me to make her dreams come true.Lead her back to her family and prize her bravery with happiiness.

名前からして、これはフィリピン人の方が英語で書かれたものではないかと思われる。私は英語が苦手なので訳さないが、どうもいろいろ訳ありなのか…靖国神社にはいろんな人が来るのだ。

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▲こちらも英語。「WWII」とか書いているから、戦争に関することなのか。

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▲これって何語なのだろうか?内容はわからないけど、シールがたくさん貼っていて、楽しそうな絵馬である。

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▲ベトナム語と思われる。

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▲タイ語らしい。

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▲絶対に無いんじゃないのか…と思っていたら…あった。中国語である。中国語は読めるので訳してみる。

家族みんなの健康と、好きな人が楽しく健康でありますように。

初めて日本にやってきました。

初めて夜のお祭りに参加しました。

とっても幸せです。

一切が平穏無事でありますように。

心が穏やかに清々しくなりました!

日付から考えて、この人物は7月16日のみたままつりの第三夜祭に来られて、この絵馬を書いたようである。

若干意訳している。最後の「心里平静舒服!」は直訳すれば「心が静かで気持ちいい!」である。これではまるで直訳ロックのようなので、前後関係を含めて考えると、「(靖国神社の夜祭りの荘厳な雰囲気のお陰で)、心が穏やかに清々しくなりました」ということを書いているのか。ちなみに、この人は香港人である。

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▲もう一枚あった。

仕事が上手くいってたくさん儲かりますように

身体健康、家庭幸福美満、

考試公○金○題名

丈夫身体健康

日本語と近い部分もあるのでそれはそのままにしておいた。

後半2行だが、「考試」は「テスト」の意味である。あとの「公○金○題名」の○が読めないし、意味がよくわからない。「公○」が「公联」だった場合、これは公務員の教育関連の話である。合格祈願だろうか。「丈夫」とは「主人」ということである。つまりこの絵馬を書いた人は、女性で既婚者なのだろう。たぶん、台湾人ではないかと思われる。

中国における靖国神社の印象や伝聞というのは、「墓地」だとか、「一般の国民は入れない」「右翼分子が集まる場所」というような、おかしなものが多い。

これは日本でも似たようなもので、靖国神社というのは、程度の差はあれど、ある種の人々から偏見を持たれている場所であり、偏見を持たないまでも、多くの人々から特殊な場所と思われているのではないか。

ただ、絵馬に書かれた色々な願いを見ていると、どこの神社でも見られるような普通のお願いごとがほとんどであり(実は某党を打倒云々とか、某外国を嫌う内容もあった。でもそれは極めて少なかった)、外国語で書かれたものも多くて、ながめていて目からウロコが落ちるような思いがした。私自身も、靖国神社に対して偏見を持っていたのであろう。ここは極めて普通の人々が訪れる、静かな祈りの場所なのではないか…と、改めて思い直したのであった。

帰化人が見た靖国神社のすべて―日本人になった中国人

帰化人が見た靖国神社のすべて―日本人になった中国人

  • 作者:石 平
  • 発売日: 2014/07/01
  • メディア: 単行本

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